13:ブノワとあんなことやこんなことを
ベリルはブノワと婚約していた……。
まさか、ブノワと手をつないだり、腕を組んだり、額にキスをしたり、こんな風にベッドで甘い時間を……そんなこと、していないよな!?
「どうした、拓海? なぜ、そんな顔をしている?」
ベリルが体を起こし、両手をベッドにつくと、俺の顔をのぞきこんだ。
ワイン色の綺麗な髪が、さらさらと俺の体やベッドに落ちてくる。
「……いや、その、ブノワと婚約していたのだろう。そうしたらブノワともこんな風に過ごしていたのかなって」
思わすベリルから視線を逸らし、不貞腐れたように答えてしまう。
すると。
「拓海」
優しく名前を呼ばれ、額にキスをされる。
そのままベリルは耳元に顔を寄せた。
ベリーのような甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
「ブノワは私と手をつなぎ、腕を組み、肩を抱き寄せ、抱きしめ、キスをしたり、いろいろしたがったが、私は一切それを許していない。それにこんな風にベッドで過ごすのは、拓海、お前だけだ」
「ベリル……」
腕を伸ばすと、ベリルがふわっとを抱きしめてくれる。
ヤバイ。
思いっきりベリルの胸が……。
ぽわんと頬が緩み、全身から力が抜けそうになったところで、ベリルが俺から離れた。
「婚約に関する手続きが進められ、正式な発表が終わると、ブノワは私と二人きりで会うことを提案した」
ベリルが昔語りを再開した。
◇
二人きりで会う。
つまり、デートの誘いだ。
いきなりブルーノ家の、ブノワの自室に招かれたが、ベリルはそれを却下した。代わりにレッド家に招いた。結婚すればブノワは家を出て、レッド家の広大な敷地に用意された邸宅で暮らすことになる。だからこれから暮らすことになるレッド家を案内したいからと言って、レッド家に招いたのだ。
レッド家の邸宅は広い。
レッド家主催で夜会を開催することもあるが、解放されるのは、限られたエリアのみ。でも婚約者となったブノワは、レッド家の邸宅を自由に見て回れる。
ブノワもそれが分かったので、ベリルの提案を受け入れ、嬉々としてレッド家にやってきた。
ベリルと二人きりになるチャンスへの期待からだろうか。
ブノワはレッド家に三騎士全員を連れてきていたが、二人の騎士はそのまま応接室に待機させた。そしてベリルが邸宅の案内を始めると、ブノワは第一騎士のサンドロだけを連れ、ベリルと並んで歩き出した。
一方のベリルは、三騎士全員を引き連れていた。
それどころかこの日、ベリルはブノワを案内するコースにぬかりなく騎士を配備していた。こんな場所にも、あんな場所にもと、ブノワが驚愕するような場所にも、警備の騎士はいる。
昼食は「今日のために、特別にここにセッティングしました」とブノワに紹介した、綺麗な花を見ながら食事できるテラス席。が、テラス席の真後ろの建物の一階は、普段ベリルが食事をするダイニングルームだった。
つまり。
ベリルとブノワが昼食をとる姿は、同じく昼食を楽しむロードクロサイト夫妻から、丸見えなのだ。
でもブノワは最初、そのことに気づいていなかった。なぜなら一階のダイニングルームには、背を向ける形で座っていたからだ。だから料理が運ばれてくるまでの間、ブノワはベリルに触れようと手を伸ばした。
その瞬間。
とんでもない殺気を、ブノワは感じることになる。
あと少しでベリルの太股に触れそうだったのに、ブノワはそれ以上手を動かすことができない。
「お待たせいたしました。前菜をお持ちいたしました」
その声で、ようやくブノワは体を動かせるようになった。
そして恐る恐る殺気を感じた後ろを振り返り、一階の窓からこちらを見ているロードクロサイトに気づいた。
昼食中のブノワは、とても品行方正にふるまった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『あの手この手で迫る』
『ささやかな願い』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






