5:異性に対する関心が旺盛
誓ったのであるが……。
思春期の俺がいろいろと我慢しているのに、思春期はとっくに終わっているはずのベリルが、異性に対する関心が旺盛なのだ。
スピネルが研究目的で俺に何かするならまだしも、箱入り娘のベリルが「魔力の注入だけで一晩で何回気持ち良くなれるか試してみたい」だの「十回目の吸血でも手を動かせるか試してみよう」だの、冗談なのか本気なのか、判別がつかないことを言って俺を慌てさせる。
ただ、どうも慌てふためく俺を見て、楽しんでいるようなのだが……。
そんな悪戯好きのベリルを許してしまうのも……惚れた弱みゆえだった。
◇
「これが全部、ベリルの新しい三騎士の候補者なのか?」
ベリルがノートパソコンに表示している、沢山の騎士の経歴書を目にし、思わず驚愕してしまう。
カーネリアンの婚約者になったバーミリオンは、ベリルの三騎士の一人だった。そのバーミリオンが抜けることで、三騎士に空きができてしまう。今は暫定的に、レッド家の騎士団の中の、精鋭と言われる騎士が、交代で空きを埋めている。だが早急に、新たな第三騎士を選ぶ必要があった。
そこでまずロードクロサイトが、レッド家の精鋭部隊の中から、女性の騎士をピックアップした。同時にゼテクに命じ、『ザイド』の中で腕が立つ女性のメンバーを、ピックアップさせた。さらにレッド家以外の純血ヴァンパイアの女性騎士の応募も、受け付けていた。
その結果、300名近い女性騎士が、新たな第三騎士の候補者として名を連ねた。
俺の部屋にきたベリルは、パウダーピンクの清楚なネグリジェに、ラズベリー色のガウンを羽織り、ノートパソコンを手に持っていた。そして俺が入浴している間、窓際に置かれたテーブルに陣取り、その候補者の履歴書に目を通していたのだ。
そう。
テルギア魔法国から帰国し、怒涛の一週間が終わり、晴れて俺がベリルの正式な婚約者になると……。ベリルは自由に俺の部屋に来ることができるようになった。以前のように夜更けにちょっと話にくる……なんてことはせず、堂々と好きな時間に、俺の部屋にくることができた。
だから。
ベリルは自室で入浴を終えると、本来は自分の部屋でするはずの執務を、俺の部屋でするようになった。ベリルが執務をしている間に、俺は入浴し、それが終わると……。
ベッドでおしゃべりをしたり、ベリルが吸血したり、魔力の注入をしたり、そんな夢のような時間を、レッド家の邸宅で過ごすことができた。
「レッド家の騎士については把握できている。後は『ザイド』のメンバーと、外部からの応募を確認すれば済む」
そこでベリルは画面から目を離し、椅子の背もたれに体を預け、苦笑する。
「ブノワの元三騎士だった二人の女性騎士が、応募してきていた」
「そうなのか!?」
決闘の場で見かけた、二人の女性騎士の姿が脳裏に浮かぶ。
二人は実に肉感的な騎士だった。甲冑もわざわざその部分を強調したかのようなデザインで、観客に色目を使っているように見え、嫌悪感しか覚えていない。
「まあ、ブノワの指示であんな甲冑を着せられ、恐らく望まぬ奉仕活動もさせられていたのだろう。……可哀そうと言えば、可哀そうな騎士だ。だからと言ってレッド家に迎え入れるつもりはないが」
……!
そうだったのか。
あんな甲冑を着ていたし、てっきりあの二人の女性騎士は、ブノワと合意の上でそういう関係を結んでいると思ったが……。
ブノワは青い髪に碧い瞳の美しい青年に見えた。
だがその実はベリルから魔力を奪い、レッド家を陥れようとし、さらには自身の三騎士にも屈辱を与えるような、下衆な鬼畜野郎だったのか。
そんな奴とベリルが婚儀を挙げずに済んで、本当に良かった。
ブノワとベリルを婚約させたことは、完全にロードクロサイトの失敗だ。スピネルはブノワの家が、ブルーノ家が、政治的な動きに長けていたと言っていたが……。
例えそうだとしても、ブノワを選ぶなんて……。
「どうした、拓海?」
ベリルが横に立つ俺を見上げた。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『拓海のその表情、初々しいな』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
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