1:プロローグ
テルギア魔法国より帰国してからの一週間は、怒涛の勢いで過ぎていった。
帰国したその日は、カーネリアンが戻ってきたということで、それはもうレッド家は狂乱状態。ロードクロサイト夫妻の喜びようは計り知れず、俺は初めて夫妻と夕食を共にした。
そう、この日の夕食は大広間で盛大に行われた。
テルギア魔法国から帰国した全員が、ロードクロサイト夫妻から食事に招待された。クレメンスとその三騎士はもちろん、ゼテク達『ザイド』のメンバーも呼ばれている。
翌日、客間で一泊したクレメンス達はクラウド家に戻り、ゼテク達もブラッド国に用意された自分達の邸宅(本拠地)に帰っていった。だがカーネリアンとベリルは、その日からロードクロサイトの執務室に、缶詰め状態だ。
テルギア魔法国での一件を報告しつつ、現在進行形の執務に取り組み、そして新たに発生した様々な事案に対処することになった。
新たに発生した様々な事案。
それは……。
まずはカーネリアンについてだ。
魔女にさらわれたカーネリアンがレッド家に戻ったこと、そして次期当主は彼になることを、国内外に知らせる必要がある。同時にバーミリオンの実家であるレンジ家と打ち合わせ、カーネリアンとの婚約話が進められた。さらにカーネリアンの捜索を行っていた三騎士に、帰国命令が出される。バーミリオンのための三騎士の選出も開始した。
もちろんこれらの話し合いがされる前に、カーネリアンは自身が魔女を手引きしたことなどをロードクロサイトに報告することになり……。その時はみっちり一時間半、お叱りを受けたらしい。
続いてはベリルについてだ。
カーネリアンの帰還と共に、ベリルは次期当主の座から解放された。だが代わりにベリルは「当主補佐」という、ロードクロサイトが新たに設けた役職に就任した。もちろんこれも、国内外に正式に発表されることになっている。
ベリルは俺から見ても当主に相応しい器だ。それはロードクロサイトも十分過ぎるほど理解している。だから長男であるカーネリアンが戻ったとはいえ、ベリルのその類まれな能力を手放すつもりはなかった。ゆえに当主補佐という新しい役割を設け、ベリルをレッド家に留まらせることにしたのだ。
ただし、ベリルが当主補佐という役職を、駆け引きなしで受けたわけではない。ベリルがその当主補佐に就くために、ロードクロサイトに提示した条件は……。
クレメンスとの婚約解消、代わりに俺を婚約者として正式に認めることだ。正式に、というのはレッド家として公式に発表するということ。
ロードクロサイトは当然ベリルがこの条件を出すと分かっていたようで、すんなり受け入れたという。
レッド家の純血は、カーネリアンとバーミリオンにより保たれる。ベリルの能力をレッド家にいかせるなら、結婚相手については目をつむる。
そう決めたようだ。
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Episode3、いよいよスタートです。
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