82:悶々とし始めたところで名前を呼ばれ……
「拓海」
悶々とし始めたところで名前を呼ばれ、ギクッとしながらベリルを見る。
「この一週間、よく我慢していたな」
ベッドに座ったベリルは、細い指を伸ばし、俺の髪に指を絡める。
「兄上はああ見えて、シスコンなんだ。私と拓海が夜、同室で寝ていると分かってから、聞き耳を立てていた、兄上が。正直、参っていた」
「……そうだったのか⁉」
思わず起き上がろうした俺を、ベリルは制した。
力を抜き、ベッドに体を戻す。
「ああ。キャノスに頼んで部屋に防音魔法をかけてもらおうとも思ったが、そんなことをすればさらに怪しまれる。拓海と同室で寝るのは、婚儀を挙げてからにしろ、なんて言われかねなかった」
「でも、カーネリアンこそ、バーミリオンと同じ部屋だったよな? 『白い花祭り』目当ての観光客で、どこの宿も部屋が埋まっているからって言って。結局、バーミリオンと二人、同じ部屋で。祭りが終わって以降も、観光客がぐっと減ったのにも関わらず、相変わらず同室のままだったし……」
「ふふ。そうむくれるな、拓海」
「だってさ……」
ベリルの指が、頬に触れる。
「この船の部屋は、キャノスに頼んで、ブラッド国を出航した時から、防音魔法をかけておいた。魔法は解除していない。だから今も防音魔法は効いている」
そう言った瞬間、ベリルのワイン色の美しい髪が、顔に落ちてきた。
「キャノスのやり方を見て、学習した。魔力だけを送り込むことができることを」
アンの正体を暴くため、ベリルに指示されたキャノスは……。
バーミリオンの首筋に吸血はせず、牙を立て、魔力だけを送り込んだ。さらにキャノスの左手は、あの時、ゆっくりとバーミリオンの左胸を……。
バーミリオンの表情を思い出し、俺の心臓が早鐘を打ち始める。
「拓海、とても気持ち良くしてやろう」
ベリルが耳元で甘く囁く。
「ゆっくり時間をかけ、魔力だけを注ぎ、じわじわとお前の気持ちを高めていこう」
言葉の魔術にため息をつく。
これから自分の身に起こることを想像しただけで、全身が熱くなり、切ない痺れが走り抜ける。
ベリルは俺の着ていた寝間着のボタンをはずした。
ボタンを全てはずしたが、脱がせることはなく、へそのあたりから上に向かい、ゆっくりキスを落としていく。
こんな風にキスをされるのは慣れていないし、そもそもベリルとイチャイチャするなんて、一週間ぶりだった。
「べ、ベリル!」
堪らずベリルを抱きしめ懇願する。
「先に魔力を流してくれ。じゃないと俺……」
目を伏せ、頬を赤くした俺を見ると、ベリルは微笑を浮かべた。そしてすぐに首筋に牙を立てる。
「……!」
短く叫び、ベリルを抱きしめる腕に力を込めた。
意識の制御をしていなかったので、魔力は一気に全身を巡り、快感が駆け抜ける。
吸血されていないので、いつものような激痛はなく、牙が刺さるチクッとした痛みしか感じなかった。
……気持ちいい。
ベリルは牙を抜かず、魔力をじわじわと注ぎ込んだ。
魔力が注がれる度に快感が高まり、ベリルを抱きしめていられなくなった。
一度牙を抜いたベリルは、首筋に優しくキスをする。
「……ベリル」
信じられないような甘えた声を出していて、ベリルはすぐ、首筋に牙を立てた。
さっきより多い魔力を何度か注がれ、快感がぐっと強まる。
ベリルが耳たぶにキスをして頬にキスをしても、もう感知できない。
「拓海、もう落ちそうだな」
声が遠くから聞こえている。
「一週間、我慢していたから仕方ない。一度、落ちろ。今晩はあと二回、気持ち良くする」
ベリルが頭を撫でながら牙を立て、一気に魔力を送りこむ。
快感の波が頂点に達し、俺は短く叫び、意識が飛んだ。
でも数秒も経たないうちに、首筋に牙が刺さるチクッとした痛みを感じた。さらに快感が全身を巡るのを認識し、ハッキリ目が覚めた。
宣言通り、ベリルは俺の意識だけを一晩で三回、快楽の海に沈めた。
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