18:シャツのボタンを突然はずし……
いよいよ決闘の日を迎えた。
ベリルは前日、午後の訓練はせず休息に当てていた。
だから夜も朝も吸血をしに来なかった。
その結果、朝食の席でベリルに会ったのだが……。
その姿に驚いた。
ベリルはこれから決闘とは思えない、美しいドレスに身を包んでいた。
ワイン色の髪は左右に少し髪を残し、残りは綺麗に結い上げられていた。パールの飾りが結い上げられた髪を飾り、まるで人魚姫のようだった。
化粧もバッチリ施されており、二重の瞳はよりくっきりとし、頬は血色良く、チェリーレッド色の唇はみずみずしく輝いていた。
雪のように白い肌を包み込むのは、ルビーレッド色のドレス。大きく開いた胸元、くびれたウエストライン、美しく広がるドレスの裾には金糸の刺繍が施されている。
首元の黒いチョーカーには、大ぶりの淡いピンク色の真珠が飾られていた。
俺はその神々しいまでの美しさに見とれ、朝食を終えるのにいつも以上に時間がかかってしまった。この美しさを前に同じ男性であるキャノスが冷静でいられることが信じられなかった。
朝食を終えると、すぐに決闘場所へ向かうことになった。
それぞれが馬車に乗り、出発となった。
先頭はレッド家の騎士たちで、その後ろにロードクロサイト夫妻が乗った馬車、ベリルとスピネルが乗った馬車、ベリルの乗った馬車の左に馬に乗ったヴァイオレットとバーミリオン、右にキャノス。俺は三番目の馬車に一人で乗っていた。俺の馬車の後ろにも何台か馬車は続き、しんがりはやはりレッド家の騎士たちだった。
会場について驚いた。
決闘なんてどこかの開けた場所で、空き地とか草原でやるものかと思った。
でも今、俺が目の当たりにしているのは、観客席もあり、まるでコロセッオ(円形闘技場)みたいだった。
「拓海」
唐突に名前を呼ばれ、振り返ると、そこには姫君という言葉が相応しい、輝くような美しさのベリルがいた。
「ベリル!」
「時間がない、こっちへ」
手を掴まれ、観客席の下の空間へ連れ込まれた。
そしてベリルは俺のシャツのボタンを突然はずし始めた。
「え、えーと⁉」
焦る俺を気にすることなく、そのまま肩が出るぐらいまでシャツを下げた。
心臓が飛び跳ねるぐらい驚いた。
ベリルはそのまま俺を抱き寄せると、首に腕を伸ばし、ぐいっと引き寄せた。
激痛と快感に襲われ、一気に力が抜けた。
これは……魔力の強化のための一噛みだ。
ベリルは俺をその場に座らせ「アレン、カレン」と召使いの名を呼んだ。
二人はすぐに現れ、俺の体を支えた。
「拓海のことを頼む」
「かしこまりました。ベリルお嬢様」
双子が声を揃えて返事をすると、ベリルはすぐにこの場を立ち去った。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは『顔を見るだけで何を考えているか分かっちゃう』他2話です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






