77:キスに次ぐ熱い抱擁
「ベリル様、ボクが発言してもよいでしょうか?」
ベリルが頷くと、バーミリオンは真っ直ぐにカーネリアンを見る。
「カーネリアン様、ボクがこの国に来たのは、確かにあなたを探すためです。でもそれは個人的な感情からではなく、ベリル様の三騎士の一人として役目を果たすためです。
なぜならベリル様と拓海が結ばれるためには、カーネリアン様が必要だったからです。拓海は純血種でもなく、ヴァンパイアでもなく、ただの人間。レッド家の次期当主という立場では、ベリル様は拓海と結ばれることができません。
でもカーネリアン様、あなたがレッド家に戻れば、ベリル様は次期当主という立場から解放され、二人は結ばれます。だからあなたをレッド家に取り戻すため、ボクはこの国に来たのです。ボクの願いはベリル様の幸せです。拓海とベリル様が結ばれることを心から願っています」
そう言うと、バーミリオンは立ち上がり、カーネリアンのそばに行った。そしてその場で片膝を床につき、ひざまずく。さらにすうっと背筋を伸ばし、カーネリアンを見上げた。
その姿は、ドレスを着ていても騎士に見える。
「カーネリアン様、ボクが拓海を好きなどということは絶対にありえません。それにあなたの気持ちを先ほどから聞かせていただいて、ボクもようやく自分の気持ちを自覚しました。ボクは一人の女性として、カーネリアン様……あなたに心惹かれています」
そう言うとバーミリオンはカーネリアンの手を取り、その甲に静かにキスをした。
するとカーネリアンはバーミリオンの両腕をとり、立ち上がらせる。
「バーミリオン、今の言葉は本当か?」
カーネリアンは真剣な眼差しで、バーミリオンを見ている。
バーミリオンは顔を真っ赤にしながらも、その視線を受け止め、答えた。
「……はい」
そう答えた瞬間、カーネリアンはバーミリオンにキスをしていた。
そのキスはとても情熱的なもので、見ている俺まで全身が熱くなり、汗をかかずにはいられない。
「兄上」
ベリルの強めの一声で、カーネリアンはバーミリオンの口から、ようやく自身の唇を離した。
バーミリオンの瞳はトロンとしており、カーネリアンが支えていないと立っていられないような状態だ。
カーネリアンはバーミリオンをギュッと抱きしめる。
「バーミリオン、僕の愛する人。もう離さない。誰にも渡さない」
キスの次は熱い抱擁となり、俺の心臓はその姿にもドキドキすることになる。
「兄上」
再びベリルが声をかけた。
「僕はバーミリオンを連れてブラッド国へ帰る。父上にすべてを話し、バーミリオンとの結婚を認めさせる」
ようやくカーネリアンは、バーミリオンから体を離した。
「ぐずぐずしている暇はない。僕がブラッド国へ帰れるよう、協力してくれ」
カーネリアンがベリルを見る。
ベリルは驚きながらも、力強く頷いた。
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