76:俺に嫉妬した理由
「なぜ拓海に嫉妬したのです、兄上?」
「僕は……アンは会場につくと、すぐにメルクリオのVIP用の個室を訪れ、吸血を行った。メルクリオが気絶した後、その場ですぐに着替えた。事前にメルクリオの個室に、着替えも隠していたから。そしてバーミリオンを探すため、フロアに向かった。声で彼女の居場所を探るつもりだった。愛する人の声だ。すぐに見つけられた」
カーネリアンはチラリとバーミリオンを見る。
そのチラリに込められた熱は、俺にでも分かった。
そしてそのチラリを向けられたバーミリオンは、頬を赤らめ、瞳を潤ませ、視線を落とす。
この光景を見るのは何度目だろうか。
カーネリアンは、バーミリオンの話になる度に、ああやってチラリと熱い視線を投げていた。
その度にバーミリオンは、今のように恥ずかしそうにしている。
主と騎士という関係だった時、カーネリアンはこんな風に熱い視線を、バーミリオンに向けることはできなかったはずだ。その反動が、今、出ているということなのか。
「……それで、バーミリオンを見つけたことと、拓海がどう関係してくるのですか?」
「拓海は、バーミリオンとダンスを踊っていた。その様子は、見ている僕が嫉妬するに値するものだった。ダンスを終えると、二人は少し休憩をとっていた。二人は楽しそうに会話し、料理を口にし、飲み物を飲んでいた。そして再びダンスをして……。
令嬢と騎士が、特に三騎士と令嬢が、恋に落ちることは多い。僕も何度もそんな話を聞いたことがある。だから5つの有力ヴァンパイアの令嬢の三騎士は、万が一のことを考え、純血種が選ばれることが多い。
そもそも令嬢と三騎士の距離は近い。一旦恋心に火がつくと、止まらなくなる。あっという間に一線を踏み越え、なし崩し的に結婚に至ることも多い。拓海がバーミリオンの三騎士なのか、それを僕は確認しそびれていた。だがわざわざテルギア魔法国に連れてきている。当然、三騎士の一人だろうと思った。
僕は拓海に、バーミリオンに婚約者はいないか確認したが、好きな人がいるかどうかは確認していない。バーミリオンは拓海のことを好きなのではないか、そう思い、嫉妬心が芽生えた。気づけば僕は、拓海からバーミリオンをさらう、という選択をしていた」
カーネリアンの話を聞いたベリルは、深海のような暗い瞳で俺を見ている。
「ち、違う! 断じて違います! カーネリアン、俺の身と心はベリルのものです! ベリル以外の女性に気持ちが動くことは断じてありません!」
俺はシャツのボタンをはずし、『誕生の証』を見せた。
「何⁉ ベリル、お前、結婚していたのか⁉」
驚愕の表情を、カーネリアンが浮かべる。
「兄上、説明が遅れて申し訳ないのですが、拓海は私の特別騎士見習いであり、私の身と心を捧げる相手です。でもそれはまだ少し先のこと。今はまだ、その時に向け、準備をしている最中です。そしてバーミリオンは今、私の三騎士の一人。さらに言えばそこにいる三人はレッド家が配下に収めた『ザイド』のメンバー。そこの老婆はヴァイオレットです。最後にクレメンスは現状、私の婚約者ですが、婚約は解消することになっています」
「……!?」
突然持たされた様々な情報に、カーネリアンは目を丸くしている。
あらゆる可能性とその対処法を考えているカーネリアンでも、想定していなかったことばかりだったのだろう。
もはや何がなんだが訳が分からないという顔をしていた。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『キスに次ぐ熱い抱擁』
『男女の秘め事に効果的とされるアレ』
です。
1点お知らせです。
本日夜20時より新連載がまたまたスタート。
※R15作品
『悪役令嬢ポジションで転生してしまったようです』
https://ncode.syosetu.com/n6337ia/
こちらもぜひ開店祝い(?)で足を運んでいただけると
大変嬉しく思います!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう~






