74:まさか婚約者がいる……?
魔法使いは密談好きだ。
防音魔法を使うこともできたが、そもそも密室で会話したいらしく、街のあちこちに個室になっている喫茶室があった。個室な上に防音魔法が使われているから、会話した内容が漏れることはない。その喫茶室の個室で、カーネリアンは知りたかった情報を、俺から得ることに成功した。
カーネリアンが俺から聞き出した情報。それは……。
そもそもとして俺が何者であるのか。現在のバーミリオンの状況。キャノスがなぜあの場にいたのか。5つの有力ヴァンパイアのクラウド家の次男のクレメンスもあの場にいたことなどだ。
カーネリアンは、俺から話を聞くまで、クレメンスがあの場にいたことに気づいていなかった。なぜなら、キャノスに気づき、その後はバーミリオンに目を奪われていたからだ。だからクレメンスがいることを知ることができたのは、大きな収穫だった。ヴァンパイアは聴覚が優れている。クレメンス達に声を聞きとられないよう注意する必要があると、気づくことができた。
その一方で、バーミリオンがもう騎士ではないと知った時、カーネリアンは天にも昇る気持ちだった。
バーミリオンは、見習いから三騎士にまで昇りつめている。カーネリアンがいなくなった後も、精鋭な騎士の一人として、レッド家に留まっていると思っていた。ただ、騎士を続けていたら、この国にバーミリオンを迎えるのは、かなり困難だ。それこそさらうしかないのでは、と思っていた。
だが騎士を止め、レンジ家の令嬢として生活しているなら……。
そう思うのと同時に、ある不安がよぎる。
騎士をやめ、家に戻ったバーミリオンを待つことと言えば……それは結婚だ。
年齢的にも、すぐに縁談話が持ち上がっても、おかしくない。
てっきり騎士を続けていると思ったので、バーミリオンに婚約者がいる……そんな想像をすることがなかった。騎士をしている=男であるバーミリオンに、婚約者ができるわけがない。でも騎士をやめているなら話は別だ。
不安な気持ちで、カーネリアンは俺に尋ねていた。
「……当然、婚約者もいらっしゃるのでしょうね」
もし、ここで「はい」と答えられていたら、強引な手に出ることも考えていた。
つまりベリルのように『誕生の証』を捧げるか、既成事実を作ってしまうか……などだ。
この辺りの発想は、カーネリアンとベリルが兄と妹であると実感してしまう。
だが俺は、バーミリオンに婚約者はいないと答えた。
実際、バーミリオンに婚約者はいなかったわけで。
さらにこの国に来た理由は『白い花祭り』を見たいから、だった。
何か素敵な出会いを求めたのでは、と俺は言ったが、カーネリアンは別の可能性を考えていた。
バーミリオンはもう騎士ではない。自由の身だ。
もしや自分を探しに来てくれたのではないか……。
カーネリアンは甘い期待を持って、俺に尋ねる。
「……素敵な出会い……。人探しではなくてですか?」
それに対して俺は……。
「そ、そうですね。どうなのでしょうか。人探しなのかもしれませんね」
相手を探すという点では、素敵な出会いも人探しも似たような(?)ものだろう――そう考えて答えたのだが、これはカーネリアンを大いに勇気づけた。
バーミリオンは自分のことを助けに来てくれた、と解釈した。
でもこれは一概に間違いではない。
確かに俺たちはカーネリアンを探しに来ていて、バーミリオンもそのためにこの国に来ていたのだから。
ただ、個人的に探しに来ていたのか、ベリルの三騎士として探しに来ていたのかの違いであり……。
ともかく知りたいことを聞けたカーネリアンは、仮面舞踏会の話を切り出そうと、一旦喉を潤した。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『なぜさらう必要があったのか』他1話です。
1点お知らせです。
初の悪役令嬢ものを本日11時に公開します。
『悪役令嬢完璧回避プランのはずが色々設定が違ってきています』
https://ncode.syosetu.com/n6044ia/
開店祝い(?)で、のぞきに来ていただけると
心から嬉しく思います。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






