71:裕福で女好きする魔法使い
カーネリアンはテルギア魔法国に渡るにあたり、純血魔法使いのボネ家の末っ子という身分を手に入れていた。女性の魔法使いの身分を手に入れていたのは、ロードクロサイトの捜索の目から逃れるためだ。
この身分のため、カーネリアンは変装し、アンという名前で生活することになる。
レッド家の長男という立場だったので、かなりのお金をカーネリアンは所有していた。
だが、表立ってこのお金を動かすことはできない。そのお金を動かせば、ロードクロサイトにすぐ気づかれてしまう。だから自身で子供の頃から貯めていた隠し資金と、婚約者を決定すると宣言された10月から少しずつ動かしたお金を使い、テルギア魔法国で動いていたのだが……。
魔術は使えても魔法は使えないので、魔法発生装置に頼ることも多かった。
しかし、この魔法発生装置は思いのほか高額。
魔法使いなら魔法なんていくらでも使えるし、魔法発生装置は不要だ。
魔法発生装置を必要とするのは魔法を使えない者、つまり魔法使い以外の種族。
ならばと国は魔法発生装置に高額の税金をかけていた。それでもこの国に住む魔法使い以外の種族、この国に観光で訪れた魔法使い以外の種族は、喜んでこの魔法発生装置を購入し、国はその税金で潤っていた。
支出が重なり、このままではバーミリオンを迎えるどころではなくなってしまう。
そこでカーネリアンは、メルクリオのような、裕福で女好きする魔法使いから、必要な物を巻き上げることにした。
その方法は、食事をし、お酒を飲み、酩酊状態になったところを吸血し、その代わり、宝石や魔法発生装置を都合してもらうというもの。
つまり、裕福な魔法使いの愛人になる……ということだ。
魔法使いは……アンと当然体の関係を持っていると思っていた。
酒を飲んで酩酊状態。その上で吸血され、魔力を送り込まれ、快感の極みに達している。
体の関係を持っている――そう思って当然だった。
だからアンと愛人関係になった魔法使いは、ねだられるままに物品を渡していた。
金を要求しなかったのは、あくまで愛人であり、娼婦ではない、というカーネリアンなりの美学だったようだが……。
レッド家次期当主と言われたカーネリアンが、そんなことをしていたなんて……。
この話を聞いた全員が、墓場までもっていかなければならないとんでもない秘密を聞くことになってしまった。
別にカーネリアンを擁護するわけではない。
でも魔法使いはとんでもない快楽を経験できている。
だからこの件は目をつぶろうと、その快楽がどんなものであるか知っている俺は思ってしまう。
それに魔法使い以外の種族に冷たい国で、身分や性別を偽り、生きていくことは……想像しているより大変なことなのだと思う。
転機が訪れたのは、カーネリアン……アンを愛人とする魔法使いは身分が高かったので、物品以外でも、アンの生活が楽になる支援をしてくれるようになってからだ。
例えばそれは、ヴィゼンティーニ家の養女に入ること。
なんの後ろ盾もないカーネリアンからしたら、それは大きな意味があった。
ボネ家の末っ子という身分を持っていたが、アンは、カーネリアンは、一人暮らしをしていたし、家賃などの生活費がかかった。でもメルクリオの紹介でヴィゼンティーニ家の養女になったことで、グレースタウンの大邸宅に自分の部屋が用意された。生活費の心配もなくなり、それどころか毎月決まった金額の小遣いまでもらえた。
ロードクロサイトの捜索は続いていると、風の噂で聞くことはある。でも捜索の手は、自分の近くまで伸びてはいない。このままお金を貯め、新たな身分を手に入れ、バーミリオンを迎える。そして結婚し、子供ができたら、ロードクロサイトに会いに行く。
そんな計画を立てていた。
ただ、十分なお金を用意するには、あと一年はかかると思っていた。
あのレストランでまさかバーミリオンと再会するとは、考えてもみなかった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『運命的な再会』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
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