17:箱入り娘のはずなのに
「拓海、ベッドに横たわらせてくれ」
「う、うん、分かった」
俺は慌ててベリルの体を支えると、ゆっくりベッドへ横たえた。
「訓練、そんなに大変なのか?」
ベッドに座り、ベリルを見た。
「そうだな。決闘まで3日間しかなかったからな」
「……でもベリルの方がブノワより強いんだろう?」
「まあ、そうなんだが……。奴は私の血をかなり吸い、そして魔力も沢山持っていかれた。以前のブノワより確実に強くなっているだろうし、私の魔力を得たことで、召喚できる魔獣、霊獣の種類が変わっただろうからな。その対策もしなければならなかった」
「つまりベリルは以前の自分を敵と想定して、自分がこれまで召喚した魔獣、霊獣のさらに上をいく魔獣、霊獣を召喚しようとしていた、ということなのか?」
「その通りだ」
ベリルはそう言うと俺の腰をぐいっと引っ張った。
「悪いが、拓海、私の上にまたがってくれ」
「え⁉」
「一度横になったら動くのが億劫になった。この姿勢で吸血したい」
ベリル、一応お嬢様なのに……。
父親は必死にベリルの周囲から男を排除しているのに。
しかも箱入り娘のはずなのに。
この前は俺が恍惚とする顔を見たいとか言い出すし。
いいのかよ……。
「拓海!」
催促され、俺は仕方なく……いやかなり心臓を高鳴らせながら、ベリルにまたがり、両手をベッドについた。
「そのまま首を下げてくれ」
またがったまではいいが、その後の姿勢は結構苦しい。
ぐいっとさらに肩を引っ張られ、俺は仕方なく両肘をベッドについた。
む、胸が、ベリルの胸が俺の体に触れて――。
首に激痛を感じ、快感が全身を貫いた。
当然、そうなると体から力が抜けた。
俺は全体重をベリルに預ける形になった。
胸は……触れるなんてレベルではなかった。
完全に密着している……と思うのだが、快感が全身を巡っている状態では、その胸の感触を感知できなかった。
ベリルは自身の体が俺に完全密着していることに気づいているだろうに、吸血行為を優先していた。
5回吸血を行うと、ベリルはいとも簡単に俺の体を持ち上げ、ベッドから起き上がった。うつ伏せの俺を仰向けにし、きちんとベッドに寝かせた。
やはりヴァンパイアは……怪力だった。
だが、そんな様子を俺はただただ眺め、快感に身を任せた。
◇
ベリルは吸血を終えると、いつもとっと部屋を出て行ってしまうのが常だった。だが今回、ベッドに座ったベリルは俺の様子を眺め続けた。
恍惚としている俺の表情を観察しているのか……。
そんなことを思っているうちに、快楽の波は落ち着いてきた。
すると。
「拓海、お昼に行こう」
そう言ってベッドを降りた。






