66:ベリルが掴んだ手を、自身の胸へと誘う
気づくと、テラスにおかれたテーブルに突っ伏していたが、差し込む日差しで目が覚めた。
霜の巨人の彫刻は消え、その代わり青空と太陽が明るく輝き、そして不思議な景色が広がっていた。
水でできたドラゴンが空を舞っている。
動く度に水滴が飛び散り、太陽の日差しを受けキラキラと輝いていた。
その度に地上では歓声が起きている。
クレメンス達が作り出した、水のドラゴンだった。
「拓海、目覚めたか?」
手すりからドラゴンを眺めていたベリルが、俺の方を振り返った。
「太陽の日差しで目覚めたよ」
ゆっくり椅子から立ち上がる。
服はちゃんと着ている。
ベリルが着せてくれていた。
「もし暗い部屋だったら、朝までぐっすりだったな」
ベリルが微笑む。輝くような笑顔。
「そうかもしれない。……ベリルはもう、十分回復できた?」
「拓海のおかげで元気いっぱいだ」
その言葉に一安心し、自然と俺も笑顔になる。
と同時に。
あの時。
ペールブルーのドレスに包まれた、豊かなベリルのバストに、誘われたことを思い出す。確かに顔はそこに沈んだのに、その感触を感知することができなかった。せっかくのチャンスだったのに、快楽の海に沈んでしまった……。
もっと鍛錬しなければ。
吸血と同時に魔力が引き起こす快感をコントロールし、触感からの刺激を検知できるようにする。そうすれば快感を覚えながらも、あの胸の感触も検知できるはず。
「拓海、何を考えている?」
「! い、いや、その」
真剣な顔をしながら、でも頭の中では……。
ベリルの胸のことや快感のコントロールなど、エロいことを考えていた。
バレてはいないと思うが、ベリルは鋭い。
だから「何を考えている」と尋ねられ、思いっきり動揺してしまう。
「連続の吸血だったのに、さっきはよく手を動かせたな」
何を考えていたのか、察知したのかしていないのか、ともかく突然ベリルは手を掴んだ。
そして。
あの時みたいに、ケープを左手で払った。
視線は迷わず向かってしまう。
ペールブルーのドレスに包まれた、綺麗な曲線を描くバストに。
「八回の吸血でも手を動かせたなら……。ここに手を触れながら、落ちることも……できるようになるかもしれないな?」
ベリルが掴んだ手を、自身の胸へと誘う。
「……‼」
ツンと上向きの形のいいバストに、手が触れそうになったまさにその瞬間。
「思春期の男子を甘くみない方がいい――拓海は確か、そう言っていたな」
……‼
言った、言っていたよ、俺……。
「触れてしまえば、頭の中でいろいろ妄想したことを全部してしまう自信がある――とも拓海は言っていたな」
言っていた。実際、今だって触れてしまえば……。
でも、でも。
あと数ミリで触れられそうなのに……!
この時の俺は、どんな表情をしていたのだろう。
ともかくベリルは俺の顔を見ると、満足そうな表情を浮かべた。
「そろそろ謎解きの再開だ」
俺の手は、ベリルの手で強制的にバストから遠ざけられてしまう。
ヴァンパイアの力は……怪力だ。
だが。
遠ざけた手をそのままつなぐと、ベリルは優しく額にキスをした。
例え胸に触れることができなくても。
こうやってベリルにキスをされれば……。
惚れた弱み。
心臓を高鳴らせ、幸福な気持ちで満たされてしまう。
「行くぞ、拓海」
ベリルは俺の手をひいて、部屋に戻った。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『バーミリオンの気持ち』
『彼女は人質だ』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






