62:深い愛。すべてを捨てる覚悟
「ねえ、バーミリオン、悲しまないでほしいの。確かに女性であるとバレてしまったことは……あなたにとって失態だったかもしれませんわ。でもそれをカーネリアンは、誰かに話したわけではない。少なくともカーネリアンがいた間、あなたの正体は、バレていなかったのですから」
それは確かにアンの言う通りだ。でもカーネリアンが魔女にさらわれたことで、結局バーミリオンが女性であることも、バレてしまった。
カーネリアンは、レッド家の屋敷から魔女にさらわれた。
屋敷に誰が手引きしたのかと、徹底的な捜索がなされた。そして運悪くバーミリオンの持ち物に、女性しか持たないようなものがあったことから、実は女だった、ということがバレてしまう。
「今は女性の姿をしている……ということは、もうレッド家であなたの正体はバレてしまった……。今は騎士をやめ、一人の女性として旅をしているのでしょう? 愛する人を探して、旅をしていると、あなたの騎士から聞きましたわ」
ボクの騎士……?
一瞬、バーミリオンはなんのことか分からなかった。
あ、そうか。
ゼテクの設定で、ボクの騎士は拓海だ。
自分は『白い花祭り』に参加するため、騎士を連れ、ゼテクにこの国へ連れて来てもらっている――そういう設定だったことを思い出す。
「ねえ、バーミリオン、あなたは愛する人を……カーネリアンを探して、旅をしていたの?」
アンがバーミリオンを見つめた。
カーネリアンを探す旅に出た……というのは事実だが、カーネリアンがボクの愛する人……?
カーネリアンのことを恋愛対象として考えたことなど、バーミリオンは一度もない。
彼は忠誠を誓った守るべき相手であり、大切な主だからだ。
でも……。
聞かなかったことにしようとしていたアンの言葉が、頭の中でよみがえる。
「レッド家の長男なのに、あなたを好きになってしまったことを……」
信じられなかった。
そんな対象として、自分がカーネリアンから見られていたことに。
いつまでたっても婚約者を作らないカーネリアンを、バーミリオンが不思議に感じていたのは事実だ。
休みの日も学友と出かけたりせず、騎士を連れ、森に行ったり、街へ繰り出していたのは、ボクと過ごすためだったというのか……?
まるでバーミリオンの心を見透かしたように、アンが口を開く。
「カーネリアンはレッド家の長男だから、縁談話は山と持ち込まれていたわ。でもそのすべてを断っていた。バーミリオン、あなたのことがずっと気になっていたからよ。
あなたが女性であると分かってからは、さらに苦しい気持ちを抱え、カーネリアンは日々を過ごすことになったわ。
あなたは純血種の一族だから、カーネリアンと結ばれることもできるわよね。でもあなたと結婚したいと言えば、あなたが女性であるとバレてしまう。だから婚約者を作らず、沈黙を守ってきたの。
休みの日も学友とではなく、三騎士たちと過ごしていたのも、バーミリオン、あなたと一緒にいたかったからなのよ」
自分のせいで、カーネリアンがそんなに苦しい想いをしていたなんて……。
バーミリオンは驚き、そして申し訳なく感じていた。
それでも婚約者を作らなかった原因が自分にあったなんて、今でも信じられない。
「バーミリオン、よく聞いて頂戴ね。カーネリアンはこんな形であなたをさらうことになったけど、これはものすごい覚悟の上での行動だったのよ。すべてを捨てる覚悟で、あなたをあの場所から連れ去ったの。それほどカーネリアンの愛は深いのよ。よく思い出してみて。カーネリアンと過ごした日々の中で、彼の愛を感じることはなかったかを」
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次回更新タイトルは
『カーネリアンの優しさ』
『狂おしいほどのジレンマ』
です。
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