59:初めての口づけ
目覚めたバーミリオンは、まずキャノスの顔を見て驚き、そしてすぐ俺達に気づき、嬉し涙をこぼした。
カーネリアンの居場所は分からないとバーミリオンが答えると、ベリルは「そうか。では昨晩何があったか教えて欲しい」と応じた。
「カーネリアンを探さなくていいのか」と、クレメンスとゼテクがベリルに尋ねる。
するとベリルは「バーミリオンの話を聞いてからでも遅くない」とだけ答え、バーミリオンに昨晩何があったか、話すよう促した。
バーミリオンは静かに、昨晩の出来事を語りだした。
◇
仮面舞踏会の会場となったホールの二階で。
「……君の方こそ、愛の力で僕を見つけてくれたのでは?」
この声を聞いた時。
バーミリオンは心臓が飛び出すのではと思うほど、驚いていた。
耳に心地よく響くその懐かしい声。
それはかつて自分が生涯仕えると誓ったのに、姿を消してしまった主のものだった。
まさか、という気持ちで声の方を見て、もう息を飲むしかない。
見慣れたワイン色の髪。
ゴールドにシルバーの縞模様のアイマスクからのぞく、赤黒い瞳。
その瞳は、ロードクロサイトにそっくりだ。
白のタキシードを優雅に着こなしたこの長身の男性は……。
カーネリアンで間違いない。
カーネリアンを見つけた!という気持ちと同時に、バーミリオンは動揺する。
こんなドレス姿、カーネリアンに見せたことがない。
その一方で、こうも考える。
騎士としてカーネリアンに仕えていた時、髪は今よりも短く、前髪もオールバックにしていた。
だから。
ボクが誰であるか気づかれていないはず。
ベリル様もボクとバレないようにするため、思いっきり女性らしくしたのだから。
そう考え、動揺を沈めた。
だが、目があったカーネリアンは……。
懐かしむような瞳で自分を見ている。
バレている……?
次の瞬間。
バーミリオンの体は、カーネリアンの腕の中に抱き寄せられていた。
そんなことをされると思っていなかった。
でもバーミリオンは、騎士。
すぐにそこから逃れようと腕を動かす。
しかし思いがけない強さで手首を掴まれ、あっという間に唇を奪われてしまう。
抱き寄せられただけでも予想外。
キスをされるなんて想定外どころではない。
いくら訓練をしていたバーミリオンでも、咄嗟に反応することはできなかった。
しかもこれはバーミリオンにとって、初めての口づけ。
柔らかく潤いのあるカーネリアンの唇が押し当てられ、さらに強引に舌が割って入ってくる。驚き、でも心臓は信じられないぐらい高鳴っている。
舌が侵入すると同時に、口内に甘い味と香りが広がり、バーミリオンは酔ってしまいそうだった。
キスと言うのは味がするものなのか……?
初めての口づけに陶酔しそうになるが、残された理性がバーミリオンに呼びかける。
忠誠を誓った主と、お前は何をしているのか? と。
我に返ったバーミリオンは、今度こそ、その胸の中から逃れようとする。
するとカーネリアンは、バーミリオンの耳元で信じられない言葉を囁く。
「僕の愛する人よ、静かにお眠り」
何かを考える余裕も、それ以上動くこともできない。
一瞬で意識を失った。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『ずっとあなたとキスしたかった』
です。
次回、さらわれたバーミリオンに起きた出来事が明らかに!
それでは明日のご来訪もお待ちしています‼






