53:肝心のカーネリアンの声が……
追っ手をまいたカーネリアンは先を急ぎ、無言で飛び続けた。
かなりの時間が空白の時間となった。つまり、沈黙の時間。
だが、やがてバーミリオンが目覚めた。
でも口に布でも噛まされているのか、声が聞きづらい。
ただ、バーミリオンの「うう」とか「うぐ」とかそう言った声から、会話をしていると感じるのだが……。肝心のカーネリアンの声が聞こえない。
ベリルはカーネリアンが警戒していると、すぐ気づいた。
ヴァンパイアの聴力が優れていることは、ヴァンパイアであれば周知の事実。
そしてカーネリアンは、クレメンスとその三騎士に追われた。今もその聴力を生かし、クレメンス達が自分を探し続けている。そう、カーネリアンが考えてもおかしくない。
つまり、声で居場所がバレないように、カーネリアンは魔法薬で声を変えたに違いなかった。
クレメンスを警戒している――そこから考えられることは、二つ。
声を聞かれる場所にはいない。でもクレメンスが夜を徹しあちこち捜索を続け、声をきっかけに見つけられてしまう可能性を恐れている。
もしくは。
声が聞こえてしまう場所に、カーネリアンとバーミリオンはいる。だから声で居場所がバレることを恐れている可能性だ。
もし後者であるなら。
カーネリアンは俺達がどこの宿にいるか、つかんでいるとも言える。
つまり、俺達のいるこの宿から近い場所に、カーネリアンとバーミリオンがいる可能性が高い、ということだ。
グレースタウンに行くと見せかけた点を加味すると、俺達の泊まる宿の近くに二人がいる。これが正解に思えた。
……クレメンスは罠かもしれないと判断し、グレースタウンへ追っていくことを止めた。それは正解のはず。
俺はチラリとクレメンスを見る。
今日のクレメンスは、白いシャツにフロスティブルーのジレとズボン、そしてブルーアシード色のジュストコールを着ていた。いつ見ても洗練されている。さらにイケメンな上に、緊急時に適切な指示をだせる冷静さ。
もし、俺がベリルに召喚されていなかったら……。
間違いなくベリルはクレメンスと……。
いや、クレメンスには想い人がいる。
一体どんな女性が、クレメンスのハートを射止めたのだろう……。
「一言でいい。ちゃんとした言葉を、バーミリオンが発してくれたら、居場所が特定できる。そう思った時だった」
ベリルの話は続いている。
クレメンスから視線を外し、ベリルを見た。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『ベリルの中で焦りが生まれた』
『カーネリアンをさらった魔女⁉』
です。
次回、ついにカーネリアンの居場所が明らかに!
それでは明日のご来訪もお待ちしています‼






