48:とてもドキドキしたぞ
廊下に出て雪を踏みしめ、エレベーターの前まで行った。
ベリルは起きているだろうか。
それだけを思い、6階のボタンを押す。
エレベーターを降りると、6階の廊下では……。
この時間でも、はらり、はらりと桜が舞い落ちている。
ベリルの部屋の扉の前まで行き、ドアにおでこを当てた。
一度だけ、名前を呼び、軽くノックしよう。
それで反応がなければ、諦めて部屋に戻ろう。
「ベリル……」
そう小さく呼んでノックしようとしたら……。
静かに扉が開く。
‼
目の前に、ガウンを着たベリルが現れた。
「……!」
ベリルは腕を掴むと、迷うことなく部屋に引き込んだ。
間髪をいれず、俺のことをぎゅっと抱きしめる。
全身に柔らかく温かいベリルを感じ、胸が高鳴った。
今度こそはと、俺も力強くベリルを抱きしめる。
しっとりしたワイン色の髪から、甘いベリーのような香りがした。
「まだ起きていたのか?」
ベリルは胸に顔を寄せたまま、静かに答える。
「髪を乾かしていたら、拓海の声が聞こえた。私の名を呼んでいただろう?」
……!
「追跡、していたのか?」
驚いてベリルの顔をのぞきこむ。
「ああ。兄上がホールから消えた瞬間から。ついさっきまで追っていた」
「!」
「兄上とバーミリオンの声を追っていた。バーミリオンは眠りから覚めたようで、ハッキリ声が聞こえた。兄上の声も。居場所はつかめた。今夜はもう遅いから動かないだろう。明日の朝、皆に話すつもりだ」
「二人の声を追って……俺の声が聞こえたのは偶然?」
「そうだな。無意識で拓海の声を拾っていた」
ルビー色の瞳が、照れることなく俺をまっすぐに見ている。
「ベリル……」
再びその体を強く抱きしめた。
全身が熱くなり、ベリルを欲しいという気持ちが高まる。
でも、今は、そんな場合じゃない。
「そんなに長時間、追跡をしていたなら、もうクタクダだろう? 俺はてっきり、カーネリアンの思いがけない行動、バーミリオンの安否、そしてホールで長時間拘束され、心身共に疲れていたのかと思っていた。でも、違うよな?」
ベリルは肯定の代わりに静かに頷く。
「どうして、俺を呼ばなかった、ベリル?」
「……拓海も疲れているだろうと思ってな。一晩眠って元気になった拓海を、明日の朝一で呼び出そうと思っていた」
自分のことより俺のことを考えて……。
気持ちが行動に現れる。
ベリルの体を持ち上げ、いわゆるお姫様抱っこをしていた。
こんなことするのは初めてだ。
船旅の間も鍛えておいてよかった……。
ちゃんと抱き上げることができた。
というか、ベリル、しっかり胸もあるのに、全然軽いじゃないか。
「拓海⁉」
ベリルが驚いている。
そのままベッドまでベリルを運び、静かにおろした。
「ベリル、俺の血を吸って。そしてゆっくり休もう」
着ていた寝間着のボタンを外していく。
「拓海……」
名前を小さく呼ぶと、ベリルは寝間着を脱ぐのを手伝った。
上半身裸になった俺のそばにきたベリルは、静かに耳元へ口を寄せる。
「まさか拓海に抱きかかえられるとは。とてもドキドキしたぞ」
今のベリルの囁きに、鼓動が激しくなっていた。
ベリルは耳にキスをして、そのまま首筋にもキスをする。
「拓海、我慢せず、すぐ落ちていいからな」
その言葉が終わった瞬間。
牙が刺さる痛み。
同時に血流にのって魔力が流れ混み、快感が一気に全身を駆け巡る。
痛みは快感に上書きされ、ただただ全身が気持ちよくなっていた。
相当魔力を消費していたのだろう。
いつものように物理的な刺激を与えることなく、ただひたすら吸血を繰り返している。
もう意識が落ちそうなその寸前、ベリルが着ていたバスローブを脱いだ。
白いサテン生地のロングキャミソールを、ベリルは着ていた。
下着はつけていないのか、バストの先端の膨らみがハッキリ分かる。
それを見た瞬間、わずかばかりに残っていた意識は、完全に快感に飲み込まれた。
俺は恍惚とした表情を浮かべ、頭の中が真っ白になり、そのまま目を閉じる。
快楽の海に、意識は完全に沈んだ。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『拓海は私の体を見たいのか?』
です。
皆さん、初夢は何を見たでしょうか……?
それでは明日のご来訪もお待ちしています‼






