45:拘束時に起きていたこと
ロビーに行くと、そこに疲れた様子のベリルの姿が見えた。
他のメンバーもそこにいると分かっていた。
だが一目散にベリルの元に駆け付ける。
本当はその場で抱きしめたかった。
でもそれを我慢し、ベリルに尋ねる。
「ベリル、大丈夫だったか? 何もされなかったか?」
「ああ、大丈夫だ。クレメンスとゼテクのおかげで、穏便に済んだ」
ベリルはロビーに置かれていたソファに腰を下ろした。
俺も慌てて隣に腰を下ろす。
ベリルによると、あの場にいたヴァンパイアの数は、そう多くはなかった。
何せこの国で暮らす住人と知り合いでないと、入場できない仮面舞踏会だったからだ。
元々この国に住んでいるヴァンパイア。
白い花祭りを目的に、この国に住む知人を訪ねやってきたヴァンパイア。
偶然現地で知り合ったこの国の住人に連れて来てもらったヴァンパイア。
その数は50名ほどだ。
50名のヴァンパイアに対し、尋問が行われた。
尋問を行ったのは、仮面舞踏会の警備責任者の魔法使いの部下達だ。
「さっき騒動を起こしたヴァンパイアと知り合いではないか」「接点はないか」「見覚えはないか」「どこかで見かけたことはないか」などいくつかの質問をされた。
尋問で「問題なし」となったヴァンパイアは、「舞踏会へ一緒にきていた魔法使いを引受人とし、帰っていい」となった。
元々この国に住んでいるヴァンパイアは、自身の住所と名前を告げることで、身元の確認がとれる。だから引受人となる魔法使いがいなくとも、解放された。
この国に住む知人を訪ねてやってきたヴァンパイアは、その場に知人が待っている者も多かった。その一方で、混乱で外へと押し出され、やむなく白い塔から離れた者もいる。だがそれも連絡をとり、身元が保証され、迎えの馬車がくるということで解放された。
足止めを食らうことになったのは、偶然現地で知り合ったこの国の住人に、仮面舞踏会へ連れて来てもらったヴァンパイア達だ。つまり、ベリル達。
会場にアンの姿はなく、さらにベリル達は、カーネリアンがいた2階に居合わせていた。そのことから警備責任者の魔法使いは、ベリル達が逃げたヴァンパイアと何か関係があるのではないかと疑った。
……実際、関係は大ありなのだが。
このまま署に連行となりかけた時。
ゼテク、クレメンス、ジャマールが駆け付けた。
ホールに集結していた警察関係者には、ゼテクの知り合いの魔法使いも多い。さらにクレメンスは、自分がクラウド家のヴァンパイアであることを告げた。
ブラッド国の5つの有力ヴァンパイアの中でも、クラウド家がその名を連ねている時代は長い。警備責任者の魔法使いも、クラウド家の名は当然知っている。ここで無理矢理拘束すれば、外交問題になりかねないことを理解した。
しかも大臣を三期も務めたあのゼテクも一緒だ。
引受人となるアンの姿はなかったが、滞在先のホテルの名を聞かれた後、無事解放されたという。
それでも、この国に暮らすヴァンパイア、知人とやってきていたヴァンパイアに比べれば、解放されるまでにかかった時間は相当だ。
「疲れた頭で考えても、答えは出ぬ。今晩はゆっくり休み、明朝話そう。バーミリオンはさらわれたが、元々はカーネリアンの三騎士。手にかけるなどという非道は、暗殺者でもなければやらぬこと。それに命を奪うのであれば、その場で毒でも飲ませればよかった。わざわざさらったのなら、命をとるなどせんであろう。だから安心するとよい」
ゼテクの言葉で、ロビーのソファに腰をおろしていた全員が立ち上がり、部屋に戻った。






