44:深まる謎
「あの……」
オスカーが遠慮がちに俺に声をかける。
「何か気づきました?」
「カーネリアン様が、バーミリオンにキスをした、とのこと。恐らくそれは魔力発生装置である魔法薬を、口に含ませたのではないかと。その後、呪文を耳元で唱えた。おそらく眠り系の魔法薬だったのでは」
「なるほど」
リマ、レイラ、俺、三人が同時に声をあげていた。
さすが『ザイド』のメンバー。
リマもレイラも魔法発生装置がなんであるかと聞くこともなく、納得している。
「えっと、話を戻すと……バーミリオンはオスカーの言う通り、魔法薬で眠らされたのだと思う。でもその時は魔法薬のことも知らなかったし、相手がカーネリアンだとも分からなかった。俺に見えていたことは、キスをされたバーミリオンが、逃げ出そうとしていたことだけだ。だから俺はキャノスが縮小魔法をかけてくれていた剣を、『ツヴィーク』を鞘から抜いた」
「そこから後はあたし達も見ていた。だから駆け付けたわけだから」
リマがそう言うとレイラも同意する。
「そうか……。となると、疑問をまとめよう」
リマとレイラが頷く。
宿に用意されていたメモ用紙に、次のように書き記す。
○カーネリアンとバーミリオンの関係は?
カーネリアンは……
バーミリオンが自分を探していたと思っている。
バーミリオンが自分を愛していたから
見つけられたと思っている。
でもバーミリオンは逃げようとした。好きではない?
○カーネリアンはバーミリオンが女性だと知っていた?
驚いたそぶりを見せなかったことから
知っていた可能性は高い。
○カーネリアンがバーミリオンにキスした理由は?
魔法薬を飲まし、眠らせるため。
眠らせた理由は、バーミリオンをさらうため。
○なぜバーミリオンをさらったのか?
自分を好きであるバーミリオンと
話をしたかったから?
○あの場で出会ったのは偶然なのか?
不明
○どこに連れ去ったのか?
方角としてはグレースタウン。
でも罠かもしれない。
○カーネリアンは自由の身なのか?
あの仮面舞踏会には
自身のことを連れ去った魔女と一緒に参加?
それとも自分一人で参加した?
追跡時に魔女や他の魔法使いの目撃はなし。
疑問を並べたものの、その答えは分からないことばかりだ。
正直、カーネリアン、バーミリオン、それぞれに聞かないと分からないことばかりのように思える。
その時だった。
ドアがノックされた。
オスカーが素早くドアに向かう。
「クレメンス様、ベリル様、ゼテク様ほか、皆さまお戻りになりました」
廊下で警護についていたバルドが告げた。
・☆。ハッピーニューイヤー。☆・
今年も異世界供物、ゆるりとお楽しみください!






