41:まるでか弱き姫君
「三騎士の皆さんは、この後どうされるのですか?」
「クレメンス様から、自分が宿に戻るまで、拓海様、リマ様、レイラ様をお守りするように、と命じられていますので」
「リマとレイラは『ザイド』のメンバーで、リマは魔術が効かない体質なのに?」
「我々は騎士です。我々からしたら、お二人とも素敵なレディですよ」
そうか。それがブラッド国の騎士道精神。
「……でも俺も見習いだけど、騎士なんだよな」
オスカーが苦笑した。
「拓海様はもう少しご自分の価値を、正しく理解された方が良いかと。拓海様は既に、ベリル様の『誕生の証』をお持ちですよね? 拓海様に万一があれば、それはベリル様にとっての一大事になります。拓海様の身に『誕生の証』があったからこそ、あの暗殺組織の『ザイド』が、レッド家の手中に収まったとお聞きしています。そのことをお忘れではないですよね?」
そうだった。
とても重要なことなのに、忘れていた。
『誕生の証』。
今も俺の首にあるシルバーの鎖状のペンダント。
これはベリルにしか外せないし、これがある限り、ベリルには俺の居場所が分かる。さらにこれを身に着けた俺は、ベリルにとって絶対の存在。
『誕生の証』を身に着けた俺に万一があれば、ベリルは自身の名誉をかけ、傷つけた相手を追いかけ、そして……。
「……見習い騎士で頼りない俺のこと、ぜひ守ってください」
「安心してください。我々三人でお守りしますから」
オスカーが片膝を地面につき、目の前でひざまずく。
三騎士の中の第一騎士というだけあって、オスカーは王道の騎士だ。
仕草の一つ一つが騎士らしく、洗練されている。
後ろに束ねられた髪は綺麗なヒヤシンスブルー。瞳の色は青。鼻も口の形も整っており、気品のある顔立ちをしていた。筋肉は結構ついているが、身長があるのでバランスがとれている。
ひざまずいたまま、オスカーは朗らかな笑顔を見せた。
繰り返し思ってしまう。
一応見習いとはいえ、騎士なんだが……。
まるで騎士に守られる、か弱き姫君になったみたいだ。
そこに第二騎士のバルドに抱きかかえられたリマ、第三騎士のウーゴに抱きかかえられたレイラが現れた。
二人ともゆっくり地面に降ろされたのだが……。
リマの顔は真っ赤で、潤んだ瞳でバルドのことを見つめている。
レイラはしきりに御礼をウーゴに言っているが、リマに負けないぐらい顔が赤い。
バルドもウーゴも、クレメンスの三騎士と分かる、美貌の持ち主だ。
バルドは長めのスポーツ刈りで、髪の色はネイビーブルー。瞳の色は青。均整のとれた体格で、日によく焼けた浅黒い肌をしている。まさにスポーツマンという感じだ。
ウーゴは髪が長く、その色は明るいブルー。瞳は空色で眼鏡をかけている。知的な雰囲気だが、いわゆる細マッチョで、ボクシングの練習でも鋭い動きをみせている。つまり勉強も運動もできるというタイプだ。
しかも二人とも騎士道精神に従い、レディを敬う。
いくら暗殺組織の『ザイド』のメンバーと言え、リマもレイラも女子だ。
おそらくここに戻って来るまでの間、お姫様のように扱われたことだろう。
赤くなって当然だった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『あの体で男子は無理では⁉』
『キスの経験』
です。
2022年も今日を含め、あと2日。
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