14:夢のような時間
あの日の夜。
俺は快楽で意識が飛び、気づくと部屋にベリルの姿はなかった。ただ俺はちゃんとベッドに横たえられており、掛布団もきちんとかけられていた。
なんだか安堵し、再び眠りに落ちた。
翌朝、朝食の席で顔をあわせたベリルは……まるで昨晩の出来事などなかったかのように普通だった。そして密かに今晩もベリルがやってくるかと期待したが、それはなかった。
その翌日、再びスピネルが検査のための採血をし、俺の生活習慣や運動の頻度などさらに細部に渡るヒアリングを行った。そのヒアリングをしている時にスピネルが教えてくれたのだが、俺の血には、使った分の魔力を回復させる力もあるのだという。
つまり、血と魔力を失った時、俺の血でその両方を回復できたが、血は失わず、ただ魔力を使った場合でも、使った分の魔力を俺の血を吸うことで回復できるというのだ。どうやら俺の血液には魔力自体も含まれているらしい。
「これはね、大きな意味があるわ。ヴァンパイアと言っても戦闘になると魔力を使った戦いになるから。魔力が回復できることは戦局に大きな影響を与える。拓海がいればベリル様は負け知らずになるわね」
スピネルの言葉に俺はとても嬉しくなっていた。
俺がいればベリルは最強になれる。
つまり、俺はベリルにとって必要不可欠な存在となる。
元といた世界に未練を感じない理由、それは俺が誰かに必要とされていると実感したことがなかったからだ。
でもこの異世界で俺は誰かの役に立てる、必要とされる存在になれる、そう感じていた。
◇
この日の晩御飯の席で、ベリルは重要な発表を行った。
それはベリルとブノワの決闘が三日後に行われるというものだった。
ブノワとの一件に決着がつけば、二人の婚約関係も解消され、ベリルも前へ進むことができる。
さらにその翌日のことだった。
目覚めるとベリルが部屋にいて、俺が起きたことを確認するといきなり血を吸われた。
朝から美しいベリルの姿を眺めながら、快感に身を委ねることができるとは、思ってもみなかった。
ベリルは決闘に備え、訓練を開始しており、魔力の回復のために俺の血を吸っているのだと、アレンが教えてくれた。
さらにこの日、俺はスピネルが行ういくつかの実験に付き合った。
実験……それはスピネルによる俺への吸血行為だった。
正直、これは……最高だった。
吸血される際、激痛を感じる。だがそれはすぐに快感に上書きされる。
そして実験の過程で何度か連続で吸血行為を行われると……。
俺はついに意識を保てなくなり……意識が昇天した。
つまり体の方は無反応だが、意識だけはイッていたのだ。
ヴァンパイアにとっては真剣な実験だったが、俺は快楽に溺れることができる夢のような時間を過ごすことになった。






