20:楽しいランチタイム
宿に向かった時と同じメンバーで、馬車に乗り込む。
ただ、先頭の馬車はゼテクたち『ザイド』のメンバーだ。
「ベリル、追跡はどうでしたか?」
馬車が動き出すと、クレメンスがベリルに尋ねた。
「この国は、ブラッド国より広かった。すべての範囲で追跡したわけではないが、兄上の声は検知できなかった」
「そうでしたか。でもベリル、テルギア魔法国は確かに国土は広いですが、開けた街はこことあともう一か所しかありません。残るは標高の高い山々が、ただ広がっているだけです。街から離れると途端に鬱蒼とした森が広がり、逆にその森で暮らす方が目立つ。ですからカーネリアンを連れ去った魔女は、今私たちがいるホワイトタウンかグレースタウンのいずれかにいるはずですよ」
「そうだな。グレースタウンまではカバーできていたから、それで検知できていないとなると、魔法で声を変えられている可能性があるな。でもまあ、追跡ですぐ見つかるとは思っていなかった。これから地元の魔法使いがよく利用するレストランへ行くつもりだ。そこで何か情報を拾えないかと思っている」
「なるほど。それで三騎士の皆さんが変装していたのですね。魔女に顔が割れているから」
クレメンスの言葉に、ベリルは頷く。
ほどなくして馬車は、歴史がありそうな大きな建物の前で止まった。
馬車から降りると、ゼテクは俺達を三つのグループに分けた。
それはこんな感じだ。
ゼテク、バーミリオン、ジャマール、俺
ヴァイオレット、キャノス、リマ、レイラ
クレメンス、ベリル、クレメンスの三騎士
さらにこの3組の関係性についても、ゼテクは手短に説明し、店の中へ向かった。
店に入ると、受付の魔法使いにゼテクは気さくに話しかける。魔法使いあるある的な冗談で和むと、受付の魔法使いは俺達を席へ案内してくれた。
通路を歩くと、すでに席についている客の魔法使いが、俺達をチラチラと見ている。
圧倒的に見られているのは、ゼテクだ。その次に視線を向けられているのは、バーミリオン。ゼテクのすぐ後ろに続いたので、ゼテクとの関係が気になったのかもしれない。
ジャマールはその体躯の良さが目を引くかと思ったが、そんなことはなかった。
俺への視線は……正直ない気がする。
後に続くメンバーに、どのように視線が注がれたかは、分からない。でもきっとベリルはその美しさで、注目を集めているだろうと、俺は勝手に思っていた。
席に着くと、すぐにフロアスタッフがやってきて、本日のおススメメニューの説明を始める。
すると。
テーブルの上に置かれていたボトルの水が、誰も触れていないのにグラスに注がれていく。
フロアスタッフの説明にあわせ、テーブルに置かれていたメニューが勝手に開きはじめた。そしてスタッフの紹介する料理が、3D映像のように、メニューの上に浮かび上がる。美味しそうな香りも漂ってきたと思ったら、ポンと消えた。そして次のメニューの説明が始まると、また料理が同じように浮かび上がった。
すごい!
魔法ってホント、便利だし、面白い。
おかげで料理のイメージがバッチリつかめ、何を注文するか、すぐに決めることができた。
選んだメニューは「炎の魔法使いの気まぐれパスタ」と「ドラゴンの卵サラダ」。
パスタはおススメで紹介されていたアラビアータで、かなり辛いらしい。でもとても美味しそうな香りがしたし、辛いものは得意なので頼むことにした。
サラダは間違いなく、食べたことのない未知の生物の卵で作られている。だが、興味を掻き立てられるネーミングに、注文することにした。
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