12:真夜中の訪問者
食事を終えると隣の部屋へ移動した。
そこには暖炉とソファがあり、皆、食後のワインを楽しみ、静かに会話を楽しんでいた。
スピネルは相当優秀なようで、俺にヒアリングしたことはすでにレポートにまとめ、ベリルに共有していた。さらにベリルもまたそのレポートに目を通し、三人の騎士やアレンとカレンに、必要と思われる情報の共有を済ませていた。
だから俺は自分がどこからどうやってここに来たのかと説明する必要もなかったし、俺がいた世界がどんなところだったと話さずに済んだ。
代わりに繰り広げられた会話は、ブルーノ家との今後の対応についてだった。
「やはりブルーノ家とは決闘になるだろうと父上が言っていた」
ベリルの言葉にその場にいた俺以外の全員が「なるほど」という感じで頷いた。
俺だけが「えっ」と声を発していた。
「そんな、ブノワとベリルが直接戦うなんて、ありなのか⁉ もしベリルに何かあったら困るじゃないか!」
ベリルは黙って俺を見つめ、ヴァイオレットはため息をつき、キャノスとバーミリオンは苦笑し、スピネルはニヤニヤしていた。
「お前のいた世界では決闘というのは当事者同士が行うものなのか?」
ベリルが静かに口を開いた。
「そうだよ。事前にルールを決めて当事者同士で行うものだ」
俺が答えるとベリルは「なるほど」と頷いた。
「拓海、お前の世界ではそうなのだろうが、ここでは違う。ここ、ブラッド国の決闘は当事者同士が決闘を行うが、実際に戦うのは召喚した魔獣や霊獣だ。だからベリル様が怪我を負うことも、命を落とすこともない」
ヴァイオレットが説明してくれた。
「じゃあ、負けたらどうなるんだ……?」
「負けるとその地位は剥奪、幽閉され、魔力を封印される」
ベリルが答えた。
「魔力を封じることなんてできるのか……?」
「ヴァンパイアではできない。だが魔法使いならできる」
ベリルが答えると、ヴァイオレットが補足した。
「この国は死者が暮らすデスヘルドルと国境が接している。そこにサイレントヴィレッジという村があり、幽閉施設がある。ここで施設長をしているのが、スティラという女の魔法使いだ。
彼女は『死』について研究をしていたが、魔法使いが暮らすテルギア魔法国は、デスヘルドルと国境を接していなかった。そこで研究のためにかの地を訪れ、ここでの滞在を許してくれれば、幽閉施設の運営を行い、罪を犯したヴァンパイアの魔力を封じようとスティラは申し出た。当時のレッド家当主がそれを受け入れ、スティラは施設長となり、現在に至っている」
「なるほど」
俺が頷くと、会話の終わりを待っていたアレンが皆に声をかけた。
「そろそろ皆さま、お休みになってください」
素直に全員がソファから立ち上がり、お開きとなった。
◇
カレンに先導され部屋に戻り、用意された寝間着に着替えた。
その際、俺が元々着ていた服を、できれば今後も着たいという希望をカレンに伝えた。
「ベリルお嬢様に確認しますね」
カレンはそう言うと、俺が着ていたシャツやタイツなどを抱え、部屋を出て行った。
俺はベッドに潜りこんだ。
二度も死にかけたが、最終的に居場所が見つかり、今はこうやってフカフカのベッドで眠れる。しかも俺の血ってなんか特殊らしいし、多分、もう血を吸い尽くされて死ぬなんてこともないはず……。ものすごくつているかもしれない。
そう思った時だった。
何か物音がした。
……?
明かりはさっき部屋を出る時にカレンが消していったので、部屋の中は暗かった。
窓は分厚いカーテンで覆われ、月の光も届いていない。
……!
突然、口を手で覆われた。
俺は驚き、口を押さえる手を両手で掴んだ。
「私だ、声を出すな」
ベリルだった。
声を出そうとするのを止め、掴んでいたベリルの手を離した。
するとベリルは俺の口から手をゆっくりはずした。
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次回更新タイトルは『男女の秘め事への好奇心』他2話です。
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