17:拓海、ベッドに来て
キャノスに言われるまま、ベリルがいる6階へ向かう。
エレベーターの扉が開くと……。
天井から桜の花びらがはらり、はらりと舞い落ちている。
6階は「春のフロア」か。
廊下は、桜の花びらの絨毯だ。
花びらを踏みしめながら進み、ベリルの部屋の扉をノックする。
「拓海、入っていいぞ」
ベリルの大声が聞こえ、ゆっくり扉を開けた。
俺の部屋とは違い、扉を開けると、そこは多角形の形をしたホールになっている。
壁には黄色のミモザの花が描かれており、風の動きにあわせたかのように、ゆらゆらと揺れていた。
ホールを抜け、部屋にはいると、広々とした室内には縦長の窓がいくつもあり、明るい日差しが降り注いでいる。港で見えていた白亜の塔も見えていた。そして壁には色とりどりのチューリップ。ひらひらと沢山の蝶も舞っている。
「……拓海、いいタイミングだ」
ベリルは左奥のベッドに仰向けになり、その長い黒髪は床に届きそうだった。
「服を脱いで、拓海」
「!」
今朝、吸血したのに?
この部屋で、魔力を使うようなことをしていたのだろうか?
歩きながらネクタイを外し、手早くシャツのボタンをはずす。そして窓のそばのカウチに服を置き、ベリルを見ると。
「拓海、ベッドに来て」
ダークブラウンの瞳を細め、ベリルが両腕を伸ばし、俺を誘う。
なんか……。
いつもと違う姿のベリルに、必要以上にドキドキしてしまう。
しかも「ベッドに来て」なんて甘やかに囁かれると……。
これからするのは吸血なのだと分かっていても、頬は自然と上気してくる。
ゆっくりベッドに乗ると、寝たままでも吸血できるように、首をベリルの口元へ近づけた。
この体勢は苦しいが、ベリルのバストが体に触れるから、なんとか頑張れる。
……!
ああ、この感触……。
触れたバストがもたらす、ふわっとした心躍るこの心地良さ。
「拓海」
ベリルの温かい息を感じると同時に、激痛と快感が、首から全身へと広がっていく。
激痛を紛らわすため、意識を緩め、快感を隅々まで行き渡らせる。
痛みは瞬時に消え、気持ちのよさだけが体に残った。
ベリルの弾力のあるバストに、俺の胸板が密着していたのは、一瞬のこと。
今は既にベッドに仰向けにされている。
「なあ、ベリル、何に魔力を使ったの?」
快感を抑えて尋ねる。
「兄上の声を追跡した」
……!
「今朝、吸血していたから、いつもより少ない魔力で追跡できたが、テルギア魔法国は……広いな」
ベリルは上半身を起こすと、慈しむように首筋を撫でた。
細い指に触れられただけで、心臓が反応し、意識のコントロールが危うくなる。
ぐっと意識を引き締め、ベリルに質問する。
「ということは、すべてをカバーできなかったのか?」
「そうだな……」
ベリルは鎖骨の辺りに、唇を近づけていた。
キスを落とされるのかと思ったが、何もしない。
ただ温かい息が、肌に触れているだけなのだが……。
キスへの期待が昂り、快感を抑え込む力が、思わず緩みそうになる。
「……カーネリアンの声も検知できなかった?」
「うん」
「!」
二度目の吸血で、一気に強い快感が流れ込んできた。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『真剣な話、時々甘美な刺激』
『驚いたのは俺だけではない』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






