5:回想~深まる恋心~
この頃から俺は騎士の訓練に参加するようになり、その一方でボクシングを騎士達の間に広めていくことになった。すると、ベリルを助けた功績も認められ、俺はレッド家の、ベリル専属の『特別騎士見習い』という肩書きを手に入れた。
ベリルに仕える立派な騎士になるべく訓練に励んでいたある日、魔術が効かない体質と勘違いした暗殺組織『ザイド』が、俺を誘拐しようとした。
魔術が効かない体質は、魔法使いの暗殺に役立った。なにせ魔術が効かないのだから、魔法使いが魔法で隠れても見つけ出せるし、攻撃されても問題なし。だから暗殺組織は魔術が効かない体質を見つけると、仲間に引き入れていたのだ。
俺がさらわれそうになったまさにその時、助けてくれたのはベリルだった。
この時ベリルは、俺のことを誰にも渡したくないと思い、助け出してくれていた。
そんな感じでベリルは俺のことを好きになってくれていたが、俺はと言うと……。
ベリルの気持ちにまったく気が付かずにいた。
ちょっと話をしたいからと、ベリルが俺の部屋に毎晩訪れるようになっても、その気持ちに気が付かずにいた。その一方で、三騎士はもちろん、ベリルの執事で医師のスピネル、召使いのライカンスロープの双子・アレンとカレンは、ベリルの俺への気持ちに既に気づいていた。つまり、俺だけが気づいていなかったのだ……。
そんな折、ニューイヤーを祝う2週間の休暇、ホリデーシーズンに、ベリルの新しい婚約者選びが行われることになった。
ベリルは美しく、魔力も強く、レッド家の令嬢である。
婚約者に名乗りをあげたヴァンパイアは多数いたが、ベリルの父親であるレッド家現当主のロードクロサイトにより、その数は6名に絞り込まれた。
そもそもであるが、俺がいる国は、ヴァンパイア一族が暮らすブラッド国だ。
ブラッド国には5つの有力ヴァンパイアの家があり、その筆頭がレッド家、以下がブルーノ家(腹黒元婚約者の実家)、ジョンブリアン家、ピスタチオ家、クラウド家だった。
ベリルの父親であるロードクロサイトは、実質ブラッド国での最高権力者だ。
そのロードクロサイトが選んだ6人の婚約者候補は……。
5つの有力ヴァンパイアである、ピスタチオ家、クラウド家、ソルト家(ブルーノ家はベリル殺害未遂で5つの有力ヴァンパイアから外され、ソルト家が新たに加わった)から4名。純血種の一族であるクロノス家とカラレス家からそれぞれ1名ずつとなっていた。
5つの有力ヴァンパイアに名を連ねるジョンブリアン家は、ベリルの母親の実家なので候補からは外されている。
この6人と別荘で、ホリデーシーズンをベリルが過ごす。これには大きな意味がある。それは、元婚約者のような腹黒ヴァンパイアではないかを見抜く、という目的だ。
そのため、別荘滞在中に行われるパーティー、グループデート、一対一のデートでは、ハプニングが仕掛けられる。
咄嗟の出来事への対応から、候補者の本性を見抜くわけだ。
俺は、ベリルの騎士として護衛につき、そしてハプニングの仕掛け人として、一緒に別荘へ同行することになった。






