3:惚れた弱み
ベリルは予定があると分かっているのに、俺の吸血を始めることが度々あった。
吸血と同時に送り込まれる、魔力によって引き起こされる快感。
この快感を、俺はかなりコントロールできるようになっていた。
快感のコントロールができている間は、直接体へ与えられた刺激も感知できている。
以前は吸血されれば、快感でいっぱいいっぱいだった。その状態でいくら体に触れられても、見たらドキッとするようなものを見ても、それを感知することができなかった。
でも騎士の訓練を経る中で、精神力も鍛えられた。その結果、意識による快感のコントロールは、より精度が上がっていた。
ベリルはその成長と俺の恍惚とした表情を楽しむために、吸血を行うのだが……。
とにかく吸血か、直接体へ与えた刺激か、視覚的な刺激か、そのいずれかで俺が落ちる……体ではなく意識だけが昇天するまで、解放してくれなかった。
その結果、予定にはギリギリセーフで間に合うのだが……。
俺が意識を飛ばしている間のフォローは、キャノスとベリルがしている、ということが度々あったのだ。
キャノスには、本当に魔法を無駄遣いさせているよな……。
その一方で、ベリルはと言うと……。
美しいドレスに身を包み、髪を艶やかにまとめ、綺麗に化粧をして、完璧な姿で予定されている場所に到着している。あたふたした俺に対し、ベリルは優雅な笑みを浮かべる余裕さえある。
まったく理不尽な展開なのだが、惚れた弱みだ。
いくらベリルにこんなことをされても、許してしまう自分がいた。
それにベリルは……俺を心から愛してくれている。
誇り高い純血ヴァンパイアの一族・レッド家の長女であり、現在次期当主とされているベリル。
綺麗な二重の瞳はルビー色、通った鼻筋に、チェリーレッド色の唇。
髪はワイン色で、肌は雪のように白く、豊かなバストにくびれたウエストの美少女。
……実年齢は200歳(俺のいた世界でいう20歳)を超えている。だがヴァンパイアの成長は、本人の意志で止めることができたので、とにかく若く見えた。
一方の俺はと言うと、身長は176センチで、体重は64キロ。元々ボクシングをやっていて、最近は騎士として訓練を積んでいたので、体型はまあなんとか見られる状態だ。でも、髪は少しクセがあるダークブラウンで、目は奥二重、鼻の高さは普通、顔立ちも一般的。外国人のように彫が深い顔立ちとか、女子が喜ぶサラサラの前髪があるわけではなかった。
そんな俺とベリルが普通に生活していて出会うわけはなく。
捕食者と捕食される者……すなわち被食者という、弱肉強食の立場で出会うこととなった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『回想~出会い・恋が芽生えた瞬間~』
『回想~深まる恋心~』
『回想~本当に好きな相手~』です。
Episode1の名シーン、名台詞を楽しみたい方
復習したい方、ダイジェストで一気読みしたい方は必読です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






