表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夜の行進

作者: No.9



夜の行進は止まらない

行列は深い青色

山を越し街を越し

どんどん世界は夜になる

月明かりは銀幕

月明かりはドレス

月明かりはマント

月は脚光を浴びて主役を務めている


  ◆


 夜空を海に、星をうろこに、雲が魚になってのんびり泳いでいる。大地では、夜風に草木や花が踊って、歌っている。

 夜空の隙間からは、藍と墨染のシルクに、銀の刺繍をあしらえたかのような夜の海が、幾重にもたなびき、穏やかにはためく。

 あなた達──オレたちでもアタシたちでも──夢を持つ全ての生き物たちの、その夢に、橋のかかる特別な夜。

 だから色んな形で言葉は見つかるだろう。私達が世界に語りかける限り、世界もまた語りかけてくれるだろう。

 夜の真ん中を月は堂々と進み、月明かりの衣装で世界を淡く彩っている。

 

  ◆


 僕もまた素晴らしい夜の大舞台にいた。まるで夜空の向こう側のような、藍墨あいずみ色の大舞台の端っこに。

 ここなら一人で、僕は家族や友達を好きなだけ想うことができる。悲しみを悲しむんじゃなくて、悲しいから悲しむことができる。

 明かりを灯せば本だって、優しい布団の中で良いところまで読めるんだ。


  ◆


夜の行進 海の向こうまで飛び越えて 

時計の針もうんと傾いて

夜はますます深まる


ねぼすけな星たちも目を覚まし

時はいよいよ真夜中


高らかな 月明かりの音頭が鳴って

物語は佳境を迎える


  ◆


 月が輝き、夜が一層美しく深まる。

 そんな中、あるものは本を読みふけり、あるものは誰かと過ごし、あるものは働く。当然、眠るものもあった。

 名前もつかない役を過ごし、華形を務めない彼らもまた、この夜の大行列の仲間だ。

 夢を持つ生き物の、その夢の全てに橋がかかる夜。月に続いても続かなくても、夢は彼らの中にこそあるものだ。

 そうして大切なひとときを全うすればこそ、誰かと過ごしたくなる。


  ◆


 寂しくない夜が僕は一番好きだ。何かに集中したり、誰かと過ごしたりして時間をいっぱい楽しむんだ。頑張って働くのも、たくさん眠って休むのもいい。

「こんなに素敵な事ってあるだろうか、ずっと夜に居られたらいいのになあ」

 朝も昼も素敵な事はいっぱいあるけれど、僕はついそう思ってしまう。夜をこうやって、大切に過ごしたいんだ。


  ◆


夜の行進は遠ざかる

これからは朝の気配

紫色、赤色、橙色

反対側の空が色づいて

朝日のまつげが伸びてくる

だけど夜はまだもう少し続く


  ◆


 さあさあ、特別な夢の時間はそろそろおしまいだ。だからあとは目が覚めるまでうんとゆっくりお休み。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ