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ホラー作品

侵入してきたもの


通勤に利用している地下鉄の駅に続く地下道の前の広場で、学生達が地球温暖化反対デモを行っている。


確かに以前より海面が上昇しているらしいし、家を出る前に見ていたテレビが何処かの国の海岸沿いの町が水没した事を伝えていた。


だから地球温暖化反対デモには共感できるのだが、自分の今の生活水準を下げるのが嫌で実行していない。


改札口を通り長い階段を下り丁度ホームの前に滑り込んで来た電車に乗る。


駅を2ツ3ツと過ぎもう少しで降車する駅。


突然、電車内の灯りが消え電車が急ブレーキを掛けた。


真っ暗な電車の外からバシャ! バシャ! バシャ! と言う音が聞こえる。


電車が止まり懐中電灯を持った車掌が運転士のいる前の方へ駆けていく。


スマホを取りだし窓の外を照らすと、信じられない事に電車の周りに水が広がっていた。


車掌と運転士が連れだって乗客の前に立ち、車掌が説明を始める。


「運行司令室からの連絡では、海面上昇により発電所が水没し電気の供給がストップ。


それと共に海水が路線内に侵入したため運行再開の目処が立たないとの事です。


お客様方にはたいへん申し訳御座いませんが、先程停車した駅まで歩いて引き返す事になります」


後方の車両の扉が開けられ、最初に線路に下りた車掌に続き乗客が次々と降車する。


線路に次々と下りる乗客の列の最後尾付近にいた私の目に、車両の脇を車掌を先頭に駅に向けて歩む人たちの方へ進む、映画ジョーズでお馴染みのサメの背鰭が映った。


そして惨劇が始まる。


駅に向けて歩む人たちの列の中から悲鳴が上がり、スマホの明かりに照らされて、水の中に引きずり込まれる人の姿やその周囲の水が真っ赤に染まるのが映った。


車両の直ぐ下で電車から下りる人たちに手を貸していた運転士が、「早く引き上げてくれー!」と叫んだ。


彼に手を貸し引き上げたら下半身が無くなっていた。


手を貸していた人たちが運転士の上半身だけになった身体を放り出し、扉を閉める。


列の後方にいたお陰で線路に下りずにすんだ人たちが座席に力無く座り込む。


「線路に下りるなー!」


座席に座り込んでいる人たちの耳に車掌室から響く無線の音が届く。


車掌室に一番近かった私が無線に答える。


「遅いよ」


「貴方は何方ですか?


車掌か運転士に代わってください」


「2人ともサメの腹の中だ」


「え、……………………そ、それでは聞いてください。


海水が線路内に入った際、獰猛なサメの群れが多数線路内に侵入しました。


ですから救助隊が到着するまで辛抱してください」


「分かった」


分かったと返事を返したが、先程より上昇した水面を見ながら、救助隊が来るのが先か? 水面がドンドン上昇して電車の天井まで届き溺れるのが先か? それとも窓を割って車両内にサメが侵入し喰い殺されるのが先か? と言う思いが私の頭を過って行く。




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