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その1

 今回推奨BGM、ゲームガンパレードマーチOP、【ラストダンス・オンステージ】






 報道で伝えられる決戦の様子を、狐面の男は優雅にワインを傾けつつ観覧している。


「本星に突入したか。報道ではそこの映像までは出ないね。……インパチェンスからの中継はできるかい?」

「少々お待ちを。……しかしまあ色々と手を変え品を変え出してくる物ですな」


 サングラスの従者は、ホログラムディスプレイを操作しつつ答える。最前線であるアルコーリク本星の戦闘は、報道では流されることはないだろう。伝を頼って映像を回して貰うしかなかった。


「非人道的な手段を躊躇いなく行使する。独裁政権でなおかつ後先考えてないからこそ取れる手段さ。あるいは彼らの技術目当てで手を貸していた者もいるかもね」

「技術的なブレイクスルー、と言うほどの物ではありませんが、この先流布した物がどれほどの影響を与えるものか。戦乱の世に一石を投じることとなりますかな? ……おっと、映像がつながったようです」


 従者が告げると同時に、モニターの映像が切り替わる。それはアルコーリク首都上空で激戦真っ最中のガルーダMarkⅢからのものだった。

 狐面の男はワイングラスを揺らしながら、うっすらと笑みを浮かべた。


「見せて貰おうか。地獄の釜の底で繰り広げられる、ラストダンスを」











「面白すぎるだろくそったれ!」


 戦況を後方に伝える操作をしつつ、マクシミリアンは牙をむき出すような表情で吠える。最早怒っているのか楽しんでいるのか、本人にも分かるまい。

 彼は現在雨霰のように打ち込まれる巡航ミサイルを片っ端から撃ち落としていた。音速を超えるそれらは、後先考えていないから大盤振る舞いと言わんばかりに容赦のない数が殺到していた。


「アイ! ミサイル撃ち込んでる基地や艦の位置を割り出せ! 上に送って後続に叩かせる!」

「了解相棒! しかしこの量、相当数の拠点から打ち込まれています」

「それこそ惑星(ほし)の裏からも撃ち込んできてるんだろうよ……っとぉ!」


 両肩バインダーの粒子砲。そして対消滅熱線砲を振り回し、閃光で空を薙ぐ。数多のミサイルが迎撃されるが、さらに降り注いでくる。きりがない。

 その上で空間破砕砲だ。この砲自体は直撃しても弾き飛ばされるだけですむが、それに伴う大気の変動が問題だった。

 比喩無しで空間が破砕される勢いの気流が生じる。巻き込まれればDAと言えどひとたまりもない。そうでなくとも台風を超えるような乱気流が常に生じ、行動が制限される。光学兵器やエネルギー兵器は、いや実弾火器ですら真っ直ぐに飛びさえしないのだ。ただでさえ強力なバリアを展開しているパンデモニウムに、ダメージを入れることは相当に難しい。


「まったく、これで湾曲レーザー砲台なんか用意されてて見ろ、完全に詰み……」


 マクシミリアンがそうぼやいた途端、空間を閃光が薙いだ。

 地平の彼方より、明らかに曲がって飛来して瓦礫を融解させたそれを見てしばしの沈黙。そうしてからマクシミリアンは叫んだ。


「ホントに用意してんじゃねえか!!」 


 どうやら本星のどこかにある基地に、湾曲レーザー砲台を作っていたらしい。撃ち込まれた数からして2つか3つのようだが。


「見てくれほどの威力はない。……しかし厄介なことには変わりがないか」


 地表すれすれを高速で飛び回りながら、ノットノウが状況を分析していた。

 惑星軌道上に用意されていた要塞砲より低出力で、しかも大気を焼いて光を放っているところから、かなり減退していると見た。

 だが直撃すればDAのバリアだと長時間耐えられない。無視できる物でもなかった。よく考えた物である。


「あの要塞、建造物のように見えるのは、()()()()()()()()()()。通常火器などを一切備えていないのは、基本的に火力を外部に頼っているからか」


 要塞と言うよりは、変則的な宇宙船だろう。バリアと推進力を兼ねた歪空間発生機能。そして空間圧縮機能。現在の宇宙船が備える基本的な機能を、武器として応用しているだけ。空間圧縮機能――空間破砕砲などと大仰に名付けられた代物なんぞ、宇宙に出てしまえばただのワープ装置である。それをこのように使うとは予想もしなかった。

 大気圏内のみと言う限定的な使い方である。しかし戦争狂(ウォーモンガー)であるリマーでさえこのような使い方は思いつかないだろう。あるいはこの先の戦術にも多大な影響を与えるかも知れない。


「それもこれも、ここを生き延びねば知ることはできんな!」


 爆発と荒れ狂う気流の中、ノットノウは猛攻を何とか回避し、反撃を試みる。当然ながらバリアに阻まれ、全ての攻撃が通らない。しかしそれは攻撃を当てることが目的ではなかった。


「バリアの強度はどこも同じか。どこか一カ所に負荷をかければとも考えたが……()()()()()()()()()()()


 固定された拠点であれば集中攻撃も容易いが、遅くとも常に移動し続ける物体であれば難易度は上がる。しかもこの現状だ、どこか一カ所に集中して攻撃するのは難しい。簡単には墜とせないと確認。

 攻略法を探るための攻撃。しかし現状を打開するための情報は未だ引き出せていない。


「外部からの飽和攻撃が尽きるまで、粘るという手もありだが……」


 いずれ後続が本星上の基地を全て制圧するであろう。そうすれば外部からの飽和攻撃はなくなり、パンデモニウムの攻略難易度は格段に下がる。だがそれは――


「いささか、()()()()()()


 折角初撃を馳走しておいて様子見で終わる、というのは面白みに欠けると、ノットノウはそのように思ってしまうのだ。やはり自分はどうしようもない人間だと、仮面の下で自嘲の笑みを浮かべる。


「では少々無茶でもやるか。……エストック1より各機。敵要塞にアプローチを試みる。援護を頼むぞ」


 僚機に無茶振りをし、ノットノウは機体を操る。回避と牽制を目的とした機動から、積極的な攻めに転じた。

 僚機からの火線が奔る中、ノットノウのステュムパリデスは嵐のような状況をかいくぐりパンデモニウムへと迫る。

 しかし、それよりも速く要塞へと突っ込んでいく存在があった。


「私より先を征くか! 流石と言わざるを得んな!」


 賞賛と嫉妬に似た軽い敵愾心。そんな物を込めた声が上がる。先を征くのはもちろん、この女。


「直接一当てすれば、どうかしらね」


 リアルは軽く笑みを浮かべ、雷撃のごとき軌道を取りパンデモニウムに迫る。ノットノウと同様にタイミングを窺っていたようだ。ただ毛ほどの差でリアルの判断が速かった。

 カノーネシューヴェルトの出力を最大に。超振動を発する刃がぶうんと羽音のような音を強める。

 そのまま突貫。巨艦の装甲をバリアごと貫く刺突の一撃は。


「バリアが厚い? いえ、これは!」


 大剣の一撃は押しとどめられ、ビリビリと大気が震える。そしてブリッツシュラークはその場から弾き飛ばされた。


()()()()()()()()()()()()()()()()! 贅沢な使い方ですこと!」


 これでもかと備えられた空間制御機構をフル活用した運用法だ。分厚く展開された空間湾曲場のバリアで敵機の突撃を受け止め、空間振動波で弾き飛ばす。どうやらリアルのような輩を相手にすることも想定していたようだ。


「となれば、攻略には一工夫必要になりますわね。……と、後続が降りてきたようね」


 戦術ホログラムは、友軍の艦隊が降下してきた事を示していた。これでしばらくすれば首都に対する敵の飽和攻撃は沈黙するだろう。それまでに攻略しておきたいところだが。


「少々難しいかも知れませんわね。……フランローゼ1よりローズマム、聞こえまして?」

「こちらローズマム。なんすか姫様」


 通信を受けたローズマムことルルディは、相変わらずだいぶ砕けたというかやさぐれた感じの受け答えだ。彼女はリアルに対する不満を隠そうともしないが、リアルはむしろそれが良いと、咎めるどころかそのキャラでいけと推してきた。結果リアルに対してはやさぐれメイドとして接している。ルルディ本人もこれでいいのかと思わないでもないが、雇い主が良いというのだからと開き直っている。周囲の視線が厳しいのはもう諦めた。


「少々無茶を頼みたいのだけれど、よろしくて?」

「姫様から無茶という言葉が出てくる時点で嫌な予感しかしないんですが!?」

「あら、『無理』ではなくてよ。できると思っているから頼んでいるのですから」 


 リアルの言葉にルルディは深くため息。リアルがルルディを弄っているのは確かだが、同時にその能力に関しては高く買っており、信用しているのも事実であった。その彼女が言うのだから確かに()()()()()なのだろう。


「それで、どんな無茶なんすか」


 何もかもを諦めてルルディが問う。爆煙と暴風をかいくぐりながら、リアルはにぃ、と笑んだ。


「フェアレと連絡を取りたいの。それと大容量のデータがやり取りできるリンクの確立をお願い」












最終決戦本番突入。ここからどう攻略するやら

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― 新着の感想 ―
[一言] この戦いに決着付けても次の戦争まで数年もかからなさそう。 その割に、悲壮感が欠片もない世界なのはなんというか……。
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