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その6






 大気圏上層部を抜け、リアルは盾代わりにしていたアキレウス(の残骸)を破棄した。

 なんか豚のような悲鳴が遠くに響いていたような気がするがもちろん気にしない。彼女はそのまま減速せずに降下を続ける。

 目指すは首都。制圧し大統領の身柄を押さえることで一気に決着を付けるというのが作戦の概要であったが、リマー軍はそう簡単にいくなどと誰一人思っていない。必ず何らかの仕掛けを施し待ち構えていると見ていた。

 通常であれば迎撃機が上がってくるころだろう。だがその様子はなく、空は異様なまでに静かであった。


「なるほど、首都まで来いとのお誘いですのね」


 誘い込みであることを分かっていながら、リアルはそれに乗る。背後ではダーメファルカンから艦載機が発とうとしていた。


「ただ罠を張っているだけではなさそうだな。本艦は上空にて警戒とオペレートを行う。索敵を怠るな。僚艦とのリンクを維持せよ」

「アイマム!」


 眦を鋭くしたミズホは地上にて橋頭堡を構築するのを早々に断念し、敵の出方を窺う。場合によっては即時撤退も考慮に入れているが、そうはなるまいという予感があった。

 そんな中、ルルディが気づく。


「艦長、首都周辺への電力供給が低下しているようです。ですが首都より高い熱源反応が。今データを回します」


 ドローンなどを先行させて情報収集した、モニターにCG化された首都周辺の概略図が映し出された。割り出された熱量や電力供給の様子が示されているが、確かに首都に伸びる送電線は反応が薄いにもかかわらず、首都の中央あたりは高い熱量を発しているようだ。

 ミズホはふうむと考える。


「……ここからだと軍事施設の様子は窺えんか。熱源反応は、()()()()()()()()()?」

「はい。恐らくは首都全体を十分まかなえる動力源が、地下に」

「ならば『メインディッシュ』はそこだ。首相官邸を主軸に全域警戒。どこから何が飛び出してくるか分からんぞ」


 制帽の位置を直すミズホ。アルコーリク連邦攻略戦最終局面。本番はこれかららしい。 ずん、と重々しい音を立てて、リアルのブリッツシュラークは大統領官邸の真ん前に降り立つ。その背後にはフランローゼ隊が勢揃いし周囲を警戒している。

 続いて蒼の部隊とその母艦が、上空にはマクシミリアンのガルーダが、巡航形態で旋回していた。そして程なくして後続も降りてくるだろう。

 首都は静まりかえっていた。まるで人っ子一人いないかのように……いや、実際人影は全く見当たらない。避難させたのだろうか。そんな殊勝な人間などいないはずだが。


「準備は万端、というわけね。どのようなお出迎えをしてくださるのかしら?」


 油断せず、だがわくわくと出方を窺うリアル。

 その視線の先、大統領官邸の地下では、司令室のような場所で大統領がモニターを見ている。


「少数精鋭というわけか。もう少し数がいた方が見せ場となるのだが……まあ、頃合いか」


 にぃ、と獣のように笑む。


「【パンデモニウム】、起動せよ」


 大統領の命により、アイドリング状態であったジェネレーターが出力を上げる。タービン音が響き、大地が鳴動を始めた。


「地下の熱量増大。首相官邸を中心に地震のような震動が発生しています」

「来るか」


 ミズホの眦が引き締まる。

 ばきり、首相官邸を中心とした地面に亀裂が走った。半径数キロにわたって広がったそれは、隆起を始め崩れ行く。

 空中に退避したリアルは、笑みを浮かべたまま目を細めた。


「まあ、派手なメインディッシュですこと」


 地下から姿を現す物。瓦礫を粉砕しながらゆっくりと地上へ這い出るそれは、建造物の集合体――都市のようにも見えた。

 全体的な形状は……『お盆』である。盆の上に建造物をみっちりと詰めた箱庭。遠目からはそのように見えるだろう。直径数キロはあるその巨体が動くのは、もう冗談にしか見えない光景であったが。

 移動する都市、いや。


「要塞、()のつもりなのかしら」


 面白いおもちゃを見る目でリアルは呟く。地上で運用する移動要塞としては破格の大きさであるが、コンティネント級や湾曲レーザー要塞などと比べれば大分コンパクトなものだ。

 しかし最終決戦で出してくる代物だ。おもしろ……ろくなものではないという確信があった。


「一当てしてみりゃ分かるさね」


 空中で旋回していたマクシミリアンが機体を変形させ、長大な砲を構える。そして間髪入れずぶっ放した。

 太陽のコロナにも匹敵する熱線が、蠢く要塞に注がれる。しかし。


「……まあ普通に防ぐわな」


 展開していたバリアに弾かれた。数層に張られた強力なバリアだが、それ自体は予想の範疇だ。特に驚くほどのものではなかった。


「だがこの程度ではあるまい」


 確信を込めてノットノウが呟く。彼らは牽制と確認を兼ねた攻撃を行っているが、実弾、エネルギー系、光学兵器。いずれも通用せず、また全方位に隙がない。しかし。


「攻撃を行うのであればば、その部分はバリアを解除せねばならないはず。そこに隙が出来る……のは分かっているはずだが」


 眉間に皺を寄せミズホが言う。彼女の言うとおりで、どんな強力なバリアでも攻撃時には一部なりとも解除する必要がある。ここに集った面子ならそこをつく事も可能だろう。

 当然ながら敵もそれが分かってやっている。


「では度肝を抜こうか。【空間破砕砲(エアブラスター)】を使え」


 大統領が命じた。要塞の設備、斜めに傾いで四方八方を向いた建造物のような構造体――『砲身』が鳴動を始める。


「っ! 回避!」

「フランローゼ1より各機! 全力で退避なさい!」


 ミズホとリアルがほぼ同時に指示を飛ばす。直感で何か攻撃があると悟ったのだ。

 そして、()()()()()()()

 そうとしか表現できない現象が起きたのだ。要塞の四方、10㎞ほどの距離にわたって光景がゆがみ、市街が粉砕された。それを確認した者たちは眉を顰める。


「空間振動波? いや、だったらあんな広範囲には影響を及ぼさない。集約しても精々が数百メートル。であれば何だ?」


 ガルーダMarkⅢに備えられた高性能な索敵機器を用いて情報を分析したマクシミリアンはそのように見る。空間振動波そのものは攻撃に転用できないこともないが、その影響範囲は限られた物だ。今のような広範囲の破壊力は生じない。


「だが空間に影響を及ぼす物であることは間違いない。新技術なのか? だとすれば無駄で贅沢な使い方だ」


 僚機と揚陸艦とのリンクによって情報を共有しているノットノウもそう判断していた。空間を制御する技術は、現代の人類文明にとって根幹と言っても良い物だ。当然それは研究されまくり、未だに発展を続けている。アルコーリクが新たな技術を開発し、それを兵器に転用したというのは十分に考えられる話だった。

 その本質を看破したのは。


「艦長、分析出ました。あれは()()()()です」


 真剣な表情で告げるのはルルディ。その言葉にミズホは片方の眉を上げる。


「空間圧縮航法のか? しかしあれほどの破壊力が生じるとは……」


 そこまで言ってミズホは感付いた。


()()か」


 空間圧縮により生じた空間の歪みに何らかの物質が巻き込まれた場合、質量が軽ければ弾き飛ばされ、大きければ亜光速で宇宙船本体にぶつかることとなる。星系内で空間圧縮航法を使わないのはそう言った危険性があるからだがそれは置いて、空間圧縮を生じさせるだけでも、確かに建造物などはある程度破壊されるだろう。しかしそれだけではあのような大規模破壊は生じまい。

 だがここは大気圏内。すなわち大気という『気体が満ちている』。空間圧縮がかかれば当然大気は一瞬にて凄まじい勢いで吹き飛ばされ、そして吹き飛ばされた後は一時的に真空状態が生じる。そこで空間圧縮を解除すれば、大気は当然ものすごい勢いで戻ってくるだろう。

 それは台風などとは比べものにならない、空間全体を覆う津波のごとき破壊力を生む。加えてこれは『バリアを解除しなくとも使用することができる』。絶大な防御力を維持しながら壮絶な破壊力を発生させる盾と矛を持つ、それがアルコーリクの最終兵器、パンデモニウムという移動要塞であった。


「だがで、それだけではないのだよ」


 大統領が言うと同時に、レーダーに感。ダーメファルカンと同様に上空で旋回している揚陸艦で、蒼の軍勢の司令官は唸った。


「各地の軍事基地や海上の艦艇から、巡航ミサイルと弾道弾だと? こうするために()()()()()()()()()()()()()()


 首都に攻め込んできた敵に対し、要塞で対応しつつ外部からの飽和攻撃で打撃を与える。そのような策だ。それを実行するためには民衆の存在が邪魔であった。だから首都から退避させたのだ。要塞自体は強力なシールドによりダメージを抑えられるが、その周辺に展開している敵軍はどうか。加えてそこに空間破砕砲の攻撃を加えられたならば。

 大統領はほくそ笑む。


「さあ、地獄を始めようか」











 次回予告



リアル:盛 り 上 が っ て 参 り ま し た わ

ルルディ:いや喜ぶとこじゃないと思うんですけれど

狐さん:今更だねえ。ま、僕は高みの見物してるんだけど

ルルディ:この野郎一人で安全圏にいやがって畜生

リアル:ではご観覧に皆様にも満足できるパーティーにしなければなりませんわね

ルルディ:こっちはこっちでそういうやる気出さないでいただけませんかね!?

狐さん:楽しみにさせて貰うよ。ってなところで次回の予告行ってみよう


 炎に満ちるアルコーリク連邦首都。

 地獄の中、偽りの支配者は高笑い、戦士たちは死地を駆ける。

 舞い踊る焔の薔薇。それは煉獄の最中でも変わることなく咲き誇る。

 この戦いの行く末は、いかに。

 次回、最終回『ラストダンスは華やかに』

 焔の薔薇は戦場に華吹く。


狐さん:ところで、最終回くらい出番あるよね?

ルルディ:知るかっ!

リアル:顔出しくらいはできるのではなくて?











おれに! 俺に銃を撃たせろ!

まさか太田さんとシンクロするとは思わなかったわ。最近サバゲ行ってない緋松です。


ハイそう言うわけで13話でございました。普通に超兵器が蹴散らされた後にやっと本命、最終兵器が出て参りました。王道を踏襲してみましたがいかがだったでしょうか。

そして予告通り次回が最終回です。これは覆りません。

……が、そのなんぼまで続くかまでは言っていない……ましてやエピローグがないなどとは……っ!

冗談です。冗談にしたいです。ともかく目標は今年中に完結ですね。達成できるように努力はしてみます。


それでは今回はこの辺で。

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