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シュトゥルム・プリンツェスィン ~婚約破棄からの宇宙戦争!? 嵐を呼ぶ暴れん坊王女様~  作者: 緋松 節
第十三話・THE・Carnival

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その4






 主星を目指す突入艦隊。要塞砲が沈黙し迎撃の戦力は多くが釘付けにされている。しかしそれは無防備を意味するものではない。

 当然ながら、本星の周辺にも防衛委戦力が展開されている。


「強行突破なさいますか?」

「いや蹴散らす。降下中に邪魔でもされたらかなわん」


 至極当たり前のように防衛戦力の殲滅が決定される。後続の艦隊に頼る手もあるが、それが来る前に背後から撃たれるのは鬱陶しい。

 しかし突入艦隊の主力は強襲揚陸艦が多数を占める。戦艦を中心に編成された艦隊相手では分が悪い……のが普通だ。

 リマー軍の強襲揚陸艦、ダーメファルカンの同型であるファルカン級。これは動力ユニットを艦体外、左右後方に振り分けて配置した、外観からだと胴体の横にエンジンを配した双発式の戦闘機のような構造となっている。

 これにより胴体のキャパシティを増やしているのだが、これは搭載量(ペイロード)を確保しつつ火力も充実させるという設計思想による物だ。つまり強襲揚陸艦でありながら戦艦並みの火力を持つ代物である。

 戦艦と殴り合える強襲揚陸艦。まあその反面大型艦用のドックが必要であったり色々と欠点はあるのだが、それを補って余るほどの性能だった。で、そんな代物がリマー軍の主力強襲揚陸艦である。

 後はいうまでも無い。


「ばかな、戦艦以上の射程だと!?」

「こっちは数倍はいるんだぞ! 撃ち負けるはずが……」


 先手を取ったのは突入艦隊というかリマー軍。アルコーリク防衛艦隊の射程に入る前に火力を叩き込んできた。実のところファルカン級でも射程外ではあるのだが、そこから当ててくる技量の砲手が当たり前でいる軍だ。実際の射程は倍くらいはあると言って過言ではない。

 艦隊戦では先手を取られた。だが流石に最終防衛戦に展開されている艦隊である。リマー軍ほどではないかも知れないが練度は高い。早々に崩れるようなタマではなかった。

 それが予想できていたから、次の手が打たれる。


「DAを出せ! ……どうせあの方が先陣を切る。へまを打たせるな、そしてへまを打つな」


 艦隊司令の指示が飛び、各艦のハッチが開く。どうせ素直に降下はできないだろうと予想されていたので、すでにDAの出撃準備は整えられていた。


「出せるのは一個小隊。数で言えば不利どころではないが、逆に言えば食い放題だ。スコアを稼いでこい」

「了解。らちを明ける」


 仮面の指揮官に応え、ノットノウは手早くチェックと準備を済ませる。


「オールスタンバイ。アイハブコントロール」

「イエッサー、グッドラック」


 機体のロックが外され、化鳥の名を持つ機体が解き放たれた。慣性だけで艦から離脱。そこから一気に加速。

 彼に付いてくるのは一個小隊。数としては心許ないが、エストック隊の選りすぐりだ。戦力は同数のリマー軍トップエースに匹敵する。

 それに続いて発艦するのは。


「場合によっては先に行ってくれ。こっちは単独で大気圏突入する」

「あいよ。狩りを楽しんできな」


 インパチェンス・カンパニーが所有する強襲揚陸艦。そこから発つのはマクシミリアンのガルーダMarkⅢだ。

 彼は小隊も組まず単機である。しかしインパチェンス・カンパニーにはガルーダの性能について行ける機体はなく、またマクシミリアン自身も単独で行動する方が得手だ。自然と遊撃的な任務に回されることが多かった。

 ガルーダMarkⅢは本来砲撃による支援を目的とした機体だ。防衛戦を突破して惑星に強襲降下する揚陸艦の援護など、うってつけの仕事である。

 もっともマクシミリアン自身は援護で終わらせるつもりなど無い。頃合いを見て本星に降下し暴れる気満々である。


「精々派手に楽しませて稼がせてもらおうか!」


 艦から離れ機体を変形させる。そして砲撃を叩き込みやすい位置を探しスラスターを吹かした。

 当然、この女も出てくる。


「ここでの戦闘時間はそれほどありませんわね。美味しい『前菜』は頂けるかしら?」


 後部ハッチが開き、紅き機体のカメラアイが力強く発光する。


「フランローゼ1、出ますわよ」


 滑り降りるように発艦。虚空でとんぼを切り、最大加速で戦場へと飛び込む。シャラら3人の機体が追随し、放たれた矢のように斬り込んでいく。

 出てきたDAはごく少数。しかしそのどれもがトップエース級の腕を持つ強者だ。この2年間で鍛え上げられ、そこらの戦力など歯牙にもかけない。

 ()()()()()()()()()()()()


「みぃ~つぅ~けぇ~たぁあ”!!!」


 ぬたりと、粘着質な笑みが浮かぶ。

 アルコーリク本星防衛艦隊。そこから百を超える影が飛び出してきた。

 ごてごてとした太ましいそれは、DAのようだがその大きさが尋常なものではない。頭頂高で50メートル近く。通常のDA規格の倍以上であった。

 その巨体を大出力のスラスター群で強引に振り回している。速度も機動性も通常のDAと互角以上の物であるようだ。

 その先陣を切る1機。コクピット内ではパイロットが狂ったような笑い声を上げていた。


「ぐははははははは! リア・リストォ! ここであったが百年目今こそ汚名を挽回し揺るぎなき勝利を刻んでくれるわああああ!!」


 唾液を飛ばしながらものすごい顔芸を見せる男。もうお分かりですね。カーネ・カーマッセさんです。

 何をどうした物かクレンで敗北した後、アルコーリクに流れ着いていたようだ。リアルに一蹴されていたから分かりにくいがこいつもそこそこの技量はある。その腕一本で成り上がったのだからまあ、執念はすごかったのだろう。

 そして彼の駆っている機体だ。どう考えてもその巨体では、まともに戦えそうにないと思える。DAが20メートル前後で収まっているのは、できるだけ無駄を省き機能をコンパクト化させた結果である。本来はもっと小さく纏めたいと関係者は誰もが思っているし、皆その努力を欠かしていない。

 つまり巨体化するのは開発傾向に逆らった行為だ。メリットはある。搭載量が増える。防御力が向上する。など全く無意味というわけではない。しかし被弾率が上がる、索敵にて発見されやすくなるなどデメリットの方が多い。

 特に機動性の著しい低下だ。質量、重さの増加というのは慣性制御の技術が発展したこの世界でも機動力に影響を及ぼす。まあ単純に重いのは鈍いと、そう言うことだ。つまり何の対策もなければでかい機体など良い的である。

()()()()()()()()()

 どん、とスラスター群が吠える。空間の歪みをパルス状に発振し推進力を得る空間振動推進器は、様々な形状がある。基本板状だがそれを組み合わせてスリット状にしたり、旧式のスラスターモーターのごとくすり鉢のような形状になった物もあった。

 この機体のメインスラスター群は、すり鉢状の物を基に、そこから嘴のように伸び内側に振動推進器のスリットを備えた二本のスタビライザーで挟んだような構造をしている。

 基となるスラスターから生じた空間振動波を、さらにスタビライザーの推進器で『弾き飛ばす』ように衝撃を加えることによって常識外の加速力を得る、通称【ビークスラスター】。

 小型化が難しいため通常のDAでは搭載しにくい代物だが、この巨大DAであれば十二分なペイロードがあった。それは通常のDAと同等以上の機動力を与える。


「さらにぃ!」


 カーネの機体が四肢を振り回す。その速度は巨体にかかわらず……いや、明らかに通常のDAよりも遙かに早い。

 四肢の関節に使用されている特殊モーター。これは90度しか動かず構造も複雑で小型化が難しいと欠点だらけであったが、普通のモーターに比べ回転速度とトルクが桁違いに高いという代物だ。これを採用することにより超高速で四肢を稼働させることが可能となった。

 カーネの背中。首筋から脊髄に沿って装着されたコードが鳴動する。超光速通信を応用した伝達制御システム。肉体の大幅な改造が必要であり、通常のDAには収まらない機構だが、反応速度、機体の挙動が著しく向上する物だ。

 つまりこれがどういうことかというと。


「こういう、ことだァ!」


 巨体が加速し、カーネの時間がゆっくりと流れ始めた。亜光速機動、だが機体の挙動は衰えない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 亜光速戦闘対応DA【アキレウス】。亜光速戦闘を滞りなく行うための機能を無理矢理詰め込んだために巨大化したその機体は、その機能を十二分に発揮する。


(これで、終わらせるウゥ!!) 


 言語を発することができない高速演算の中、カーネは心で吠える。

 巨体が、先陣を切る紅き機体に襲いかかった。












リベンジなるか?

(ヒント・無理)

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