その4
色々、あった。
多くの国家、組織が被害を被り、中には消滅してしまったところもある。被害総額は天文学的な物になり、再建できるか怪しいところも多い。
その一方で暴利をむさぼる者たちも居る。戦争特需で利益を被る者。引っ張りだこの傭兵たち。そして闇に忍んで生きる犯罪者や組織。そういった狡猾な輩は今の世を謳歌しているが、まあ戦後どうなるかは火の目を見るより明らかなので放っておこう。
ともかく、一刻も早い状況の改善を多くの民は望んでいた。そしてそれは、間もなく叶えられようとしている。
アルコーリク星系への侵攻。2年の時を経て、リマーを中核とした軍勢はそこに至った。
「随分と数を減らした物よ」
相変わらず玉座で暇 (じゃないけど)を持て余していたトゥール王が言う。
アルコーリクに反撃した勢力の中には、戦費が尽きたり戦力を大幅に減らしたりして、戦線を離脱した所もある。その結果、総戦力は艦隊で2万台にまで減少していた。
もちろんアルコーリク側もそれなりに戦力を減らしている。だがそれは同調したり便乗したりした勢力の物がほとんどで、アルコーリク連邦本来の戦力は未だ健在。そして現在ほぼ全ての戦力が星系内に集っていた。
十重二十重と組まれた防衛網。だがそれは本命ではない。
「件の話、ラウネン嬢からの情報と照らし合わせてみましたが、ほぼ間違いないかと」
「超兵器を用意している、か。隠し札があるとは思っていたが、こう来るとは。……いや、隠すつもりもなかったようだ」
日常的に繰り広げられていた情報戦。その中で、ルイセ率いる王室国家戦略情報局は新たな情報を入手する。そして同じ情報をフェアレは掴んでいた。いや、本人曰く「掴まされた」らしいが。
アルコーリクが開発した超兵器。それが配備されたという情報だ。しかもそれは一つや二つではないらしい。
なんの冗談だと言いたくなるような話だが、どうもこれ冗談ではないらしい。裏も取れた。国外の軍需企業に、多額の資金をぶち込んで開発と製造を依頼した事が判明したからだ。流石にその全貌を企業から抜き出すことはできなかったが、大まかな概要は把握できた。
しかしそれすらも、アルコーリクの思惑のうちではないかという疑いがある。
「国を傾かせるために莫大な予算を使い、そして企業どもにコンセプト兵器を作らせ『実験場』として戦場に持ち込む。滅ぼすつもりだからと大盤振る舞いか」
「よしんばアルコーリクが存続したとしても、無理な予算執行で経済はガタガタ。国が傾くではすみませぬ。遠からず倒れる可能性は高うございますな」
「加えて国外にて超兵器を開発させることで、その技術を流出させ、後の世に混乱を招く伏線とする。いやはや、たいしたタマよ」
王とレイングは、疑いと言うより確信と言ったレベルだ。『自分が相手の立場で、相手と同じ思考回路であったならば同じようなことをやる』。そういった思考シミュレーションが、彼らにはできた。ろくでなしはろくでなしを知ると言うことだろうか。
まあともかく、相手はなりふり構わず破滅に向かって全力疾走するつもりのようだ。おまけに後々でっかい爪痕を残していく気満々である。まともな人間であれば理不尽な振る舞いに怒りを覚えたり、脅威を感じたりするのだが。
「随分と面白くしてくれる。良い趣向ではないか」
「人生最後に巨大な花火を上げようという心意気ですかな。まあ気持ちは分からないでもありませんが」
こいつらにまともな反応を期待する方が間違っている。案の定面白がっている方向だった。
そして、ろくでもないのはこいつらだけじゃなかった。
「我が方の兵は士気も十分。精神的に疲弊し戦線を離脱した者はほぼ皆無と言って良い状態ですな。いやはや、杞憂でしたか」
「備えておいて損はあるまいさ。これから先、そういう者が続出せんとも限らん。また戦後に『ぶり返して』PTSDなどを発症されるやも知れんからな。……今のところそのような様子は見受けられんが」
そう。以前不安視されていた兵の精神状態であったが、むしろ殺る気もといやる気満々であった。楽な戦いを重ねてきたのではない、これまでに無い苦戦の連続であったのだが、兵たちは「くくく、俺をここまで追い込むとはな」とか「おもしれえ、やってやんよ!」とかそういったノリのやつらばっかで、精神的な傷を負ったやつなど皆無に等しい。
ごく一部の例外も、「スコアがゼロ……ふふふ、笑え、笑えよ……」とか「出撃のしすぎで彼女に振られましたがなにか」とか言う方向性のダメ人間ばかりだったので、何の参考にもなりゃしなかった。
つまり不安要素はないというか逆の意味で不安ではあった。ともかく戦うのに問題はない。だったら用心だけしとけばいっか、となるのが頭リマーな連中である。だれか止めてやれ。無理だろうけど。
「ま、我が国はそれでいい。して、他国はどうか」
「損耗が激しい国はそも脱落しておりますな。残った国はそこそこ士気が保たれているようで。戦力としては十分かと」
「この2年間を戦い抜いたらば、それなりになるか。そうでなければ困るがな」
リマーと轡を並べ戦い抜いてきた国家群も、それなりの士気と戦力は保たれている。実戦が彼らを鍛えたのだ。いろいろ思惑はあれど、決戦に際してしり込みをするような様子は見せていない。彼らには彼らの思惑があって戦争を続けているが、リマーにとってそこはどうでもいい。決戦において戦力となるか、そして戦後『おもしろく』なるか。重要なのはそれだ。
まあそれは今後の楽しみだ。今は目の前の戦争をしゃぶり尽くすために全力を注ぐ。
「して、戦力の配置はどうか」
「は、我が国の艦隊を中核に、打撃重視の編成となっております。いわゆる決戦仕様ですな」
本丸に殴り込むための編成。長期戦を考慮に入れず、機動力と火力、そしてDAなどの艦載機の数を重視したもので戦いに挑む。これで決着をつけるという意思が見て取れた。
「リアル姫は最前線に。あと『義勇兵』から生きのいいのが選抜されておりますな。土壇場で裏切ることもありますまいが」
「そうなったらなったでリアルは喜ぶであろうよ。そうでなくとも考慮すればひりつくような緊張感を味わえる。うらやましい話さ」
「……仕立てたブリッツシュラークは儀典儀装なので使えませぬぞ?」
「念を押さずとも分かっておるわ。どうせジェネレーターのコアも抜いてあるのだろう?」
「分かってらっしゃるのであればよろしい。あと警備兵には陛下を見かけたら容赦なく撃てと厳命しておりますので」
「久々に主を主と思わないムーブ来たな」
貴重な情報を垂れ流しにしつつ漫才は続く。リマーは上から下までいつも通りに絶好調の頭リマーであった。
配置された艦隊の最先鋒。そこのダーメファルカンを含む強襲揚陸艦を中核とした艦隊があった。
「壮観ですわね。広報部も仕事のやりがいがある光景でしょう」
そう言うのはリアル。この2年で随分と大人びた印象となった。元々目鼻立ちがきつめの印象があったが、今では色気たっぷりの女幹部と言った風情である。
彼女が見据えるモニターには、集結した艦隊の居並ぶ姿が映し出されている。以前クレンと戦争したときよりも大規模だ。確かに壮観と言えよう。
これから彼女らは真っ直ぐにアルコーリク本星に突っ込む。やることはクレンの時と同じだが、相手の防衛網はそのときとは比較にならないほど分厚い。しかしながら、今回はこちらも相当の戦力を持って挑むのだ。激戦となるのは必至であった。
「さて、いかなる手腕でわたくしを楽しませてくれるのかしら?」
妖艶に微笑む彼女を、シャラは無表情ながら満足げに見守り、レンは何も考えていないぼんやりとした様子で、ルルディとヴィイは揃ってため息を吐いた。
「総員、存分に華吹きますわよ!」
ばさりとコートを翻し、薔薇の王女は不敵な笑みで高らかに吠えた。
次回予告
リアル:ふふ、楽しみですわね。次回が待ち遠しくてよ(うっとり)
ルルディ:ダメだこの姫様キマってやがる
狐氏:決戦に対してここまで心ときめくヒロインがいただろうか
ルルディ:アンタはアンタでころころ名前変わってんじゃないわよ
狐氏:……かっこかりって付けた方が良かったかな?
ルルディ:そういう問題じゃねえよ
狐氏:まあ多少の問題は棚上げ先送りにするとして、次回予告いってみようか
決戦の地、アルコーリク星系。そこは様々な奇想天外兵器の待ち受ける魔境であった。
戦く各勢力。だが一部の者たちはむしろ嬉々として死地に飛び込む。
言わずと知れたリマー軍。そして酔狂人たち。
恐れを抱かぬ死狂いどもが、絶望を切り裂く。
次回『THE・Carnival』
焔の薔薇は戦場にて華吹く。
リアル:ジャイアントキリングとかロマン満載ですわね!(おめめキラキラ)
ルルディ:ダメだこりゃ
狐氏:処置無しだねえ
俺達の夏はまだ終わらない!さあ燃え残りに火を着けろ!
ってな感じでルビコンの地にてサッカーの試合ができるくらい死んでる緋松です毎度。
はいそんなわけでゲームの合間に投稿です。所謂決戦前夜な話ですが、なんか不穏な単語がちりばめられているような。大体皆の予想通りだよ。というわけで次回は趣味満載の話になります。ルビコンでの戦いに没頭しなければいつも通りにペースでお届けできるはず……信じれ。
そう言ったところで今回はこの辺で。




