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シュトゥルム・プリンツェスィン ~婚約破棄からの宇宙戦争!? 嵐を呼ぶ暴れん坊王女様~  作者: 緋松 節
第十一話・終わりなき戦い(なお主役陣は喜んでいる模様)
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その3






 リマーとクレンの戦争は片がついた。だが平穏はまだ遠い。


「……それで傭兵を集めてるってのかい」

「ああ。数は少なくても良いから腕っこきをってオーダーだ。折角立ち上げた商売をおじゃんにされたくないってさ」


 仲介人を通してマクシミリアンに連絡を取ってきたのは、インパチェンス・カンパニーの女傑、ヴィクトリカ。彼女の話を聞けば、カンパニーの『出資者』は自身の商売範囲の安全を図るため……と言う名目で戦力を集めているらしい。

 最近美術商を始めたというその出資者は()()()()()()()()()()()らしいが、金払いは良いそうだ。多少無茶な依頼はするが、それに見合うだけの報酬は用意してくると言う。


「リマーとやり合って無事に生き延びたんだろ? その腕を買いたいらしい」

「どっちかってーと見逃して貰った感はあるけどな。……まさか連中とまたやり合えとでも?」


 それはそれで張り合いは出てくるけどな、そう考えるマクシミリアンもどっかおかしい。


「流石にそいつはないよ。むしろできるだけ関わらない方針だと」

「なんだつまらん」

「アンタも大概だねえ。……ま、メインの相手はアルコーリクに便乗してる輩だ。食い応えはないかも知れないねえ」


 現在人類域の何割かは、そういった輩のおかげでめちゃくちゃだった。それは広がりはすれども収まる気配は全くない。傭兵としては稼ぎ時かも知れないが、一般市民にとってはたまったものではない。

 それに対して各組織はそれぞれ対応している。自力でなんとかできる戦力を持つ国家などはまだいいが、そうでないところはあっさりと蹂躙されたりする状況だ。どこも血眼で戦力をかき集め始めていた。

 そう言ったところなら自分を高く売りつけられそうな気はしたが……マクシミリアンはヴィクトリカの話の方が面白そうだと感じている。

 勘だ。だが不思議とそれが外れる気はしなかった。


「そんで、雇い主はどんなのよ」

「ああ、蒼の軍勢って知ってるかい?」

「あの仮面被った変人の集団だろ? それが何」

「アレの近似種」


 早速面白そうだった。別の意味で。











「……とのことで、順調に人は集まりそうです」

「それは重畳。私の方も根回しは上手くいっている。滑り出しはこんなところか」


 サングラスをかけた男の報告を、その人物は聞いていた。

 上品な仕立てのスーツ。そこまでは良い。だが顔の上半分を覆う狐を模した仮面が全てを台無しにしていた 。


「連盟やファウンデーションもクレンの件が落ち着き次第動くだろう。その前に精々恩を売っておくとするさ」

「信用もただではありませんからな。稼げるうちに稼いでおくのは良いことです」

「とは言っても手を伸ばせるところは限られる。さしあたっては我々が商売する範囲からだな」

「それとリマーに関わらないところ、ですかな?」


 サングラスの言葉に、狐マスクの男は苦笑する。


「あれは災害みたいな物だからなあ。狙って避けられるならそうしたいが」

「敵対する行動さえ取らなければ興味を持たないとは思いますが、確実ではありませんし」

「出会ってしまったら誤魔化すしかないか。敵対しなかったら命までは取るまい」


 笑えないことを言い合う。もう祖国が滅んでしまった以上、リマーが自分たちを追う理由はないと分かっているが、戦が絡むとなればどう反応するか分からない。できるだけ接触を避けるのが吉だ。

 が、火の粉を払うために戦力をかき集め安全確保に努めていれば、いずれかち合う可能性もあった。まあそのあたりは現場に任せ自分たちは引っ込んでいたい。けれども相手はリマーだ。ひょんなことから関わってしまう可能性はあった。

 まず土下座か。二人の思考は一つだった。つーか全面降伏以外に無事で済む選択肢が思いつかない。


「やれやれ、苦労から逃れたと思ったら、またその先で苦労する羽目になるとはね」

「人生とは往々にしてそういう物でしょう。他人に背負わされる苦労をするよりは幾分マシかと」

「違いない。降りかかる火の粉は払っておくしかあるまいよ」


 男たちは動き出す。己の未来を切り開くため。

 まあその正体はモロバレなのだが、気がつかなかったことにしてあげて欲しい。











 アルコーリクの侵攻から広がった戦乱は、一向に収まる様子を見せなかった。彼らが用いた技術のせいばかりではない。野心を秘めた者たちが多かったと言うことなのだろう。アルコーリクの技術は、彼らの野心を解き放ったのだ。

 とはいえそれが上手くいくとは限らない。目星を付けていたところに攻め込んだはいいが返り討ち、なんてことも往々にしてあった。まあそのようなところは半数と言ったところで、残りは突然のことに反応できず侵略を許した。それは十分に混乱を生む。

 加えて関係ないのに便乗し、余所に攻め込んだところもある。クレンの資源惑星にちょっかいかけたのがそのような輩だった。大概は彼らのように考え無しなので、けちょんけちょんに叩きのめされていたが、ひょんな事から上手くいってしまったところもあった。


「くはははは! 良いぞ良いぞ、このまま攻め落としてくれる!」


 とある国家の艦隊司令が調子に乗って高笑いを上げる。隣国への奇襲。それは思いのほか上手くいった。星系外縁部に展開していたパトロール艦隊を敗退させ、相手が戦力を纏める前に侵攻を果たした。国土の半分近くまで押し入り、本星まで間もなくと言ったところだ。

 順調であった。不意打ちの奇襲……というか首脳陣の思いつきで行った事が功を奏した形だ。元々国家間は仲がよろしくなかったが、戦端を開くほどこじれていたわけでもない。だからこそ余計に不意を打てたとも言えるが。

 だが彼らは大事なことを忘れていた。攻め入った国が()()()()()()()()()()()()()ということを。


「レーダーに感! 後方より識別不能の艦隊が接近しております! 数は20ほど!」

「ん? パトロールにでも出ていた艦隊か? たかだか20で何が……」


 司令官が小馬鹿にしようとしたそのとき、警告音が鳴り響いて、地震のような衝撃が奔った。


「な、なにっ!?」

「ほ、砲撃です! まだ有効射程範囲内に入っていないのに!」

「コーバンとヘンドリクス轟沈! 馬鹿な、たったの一撃で!?」


 アラートの赤い光が灯る中、艦隊は一気に混乱へと叩き込まれた。それを為したのはもう言うまでも無いだろう。


「騎兵隊参上といったところか! 各員に告げる。遠慮はいらん、存分に蹂躙してやれ!」


 ゲストシートで上機嫌に吠えるのは、カブル・ロックバイト。つまり現れたのは再編成された黒曜遊撃艦隊である。

 ばかすか打ち込まれる砲撃。相手艦隊は泡を食って反転したり反撃しようとしたりしているが、もちろん間に合うはずもない。ろくに対応できないまま、DA部隊が懐に飛び込むのを許してしまう。

 その先端に位置するのは、ブリッツシュラークを駆るレイヴンズだ。


「レイヴンズ1より各機! いつも通りだ、派手に暴れてやれ!」

「「「アイサー!」」」


 それぞれ特徴的な装備をした機体が、一斉に敵へと襲いかかる。大剣が敵機を一刀両断し、大型ライフルがシールドごと敵機を撃ち抜き、パイルバンカーが艦の装甲を貫く。

 そうやって真っ先に斬り込んだレイヴンズに続き、DA部隊が雪崩のように殴り込む。多くはいまだトゥルブレンツだが、エースたちには優先してブリッツシュラークの配備が始まっていた。まださほど慣れていないにもかかわらず、彼らは最新鋭機を乗りこなしている。


「はは、よく見えらあ! 反応も良い!」


 一人の中隊長が歓声のような声を上げつつ機体を駆る。敵の攻撃をかいくぐり、アサルトライフルを的確に当て、体勢を崩したところで超振動剣を抜き打ち。1機仕留める。


「良い感じだ! スコアを稼がせて貰う!」

「隊長~、置いてかないでくださいよ~」


 トゥルブレンツを駆る部下たちが、先行する隊長機を追う。ブリッツシュラークの戦果が目立っているが、彼らとて負けてはいない。数倍どころではない戦力差をものともせず、果敢に斬り込む。

 結果、敵艦隊は立て直しのタイミングをつかめず、一方的に蹴散らされていく。


「馬鹿な、こんな、ばかなァ!」


 敵艦隊司令官の最後の言葉がこれであった。旗艦を失った敵艦隊は、這々の体で散り散りに撤退していく。


「ふむ、張り合いのない。浅慮で侵略を行った者などこの程度か」


 事が終わり、つまらなそうな顔で鼻を鳴らすカブル。便乗した程度の連中では、食い足りないと若干不満であった。


「次は歯ごたえのある相手だと良いが……と言いつつ何度か裏切られておるが」


 苦笑しつつ友好国との折衝もそこそこに、次なる戦場へと向かう指示を出す。

 混乱、そして背後に蠢く者の影がありながら、リマー王国は平常運転であった。











新キャラ登場(白々)

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― 新着の感想 ―
[一言] クレンは色々と終わったけど、戦争はこれからが本番になりそうですね。 終わるのに何話かかるのやら。
2023/03/24 00:23 オクセンカン
[一言] 遭わない筈がない 遭いたく無くても 運命なんてそんなもん
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