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シュトゥルム・プリンツェスィン ~婚約破棄からの宇宙戦争!? 嵐を呼ぶ暴れん坊王女様~  作者: 緋松 節
第十一話・終わりなき戦い(なお主役陣は喜んでいる模様)
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その2







 さて、リマーにかっぱぐだけかっぱがれた裏社会カルテルコネクションだが。

 まあ酷い有様であった。


「……生きてる。俺生きてるよ……」


 かろうじて残ったいつもの酒場。精根尽き果てたといった様相のウェットラットが、カウンターに突っ伏していた。

 結局逃げ損ない、リマー軍の強制捜査と言う名の強盗行為に巻き込まれたのである。とはいえ組織に属さない(かつ金もそんなに持ってない)ウェットラットは本当に巻き込まれただけで、ちょっと酷い目に遭った程度で済んだ。だが組織に属している人間はそうは行かない。

 それはもう徹底的な略奪であった。組織も武力で抵抗しようとしたのだが、難なく蹴散らされ、押し込まれる。幹部は次々と拘束され、資金の所在を吐かせるまで拷問というのも生ぬるい目に遭った。具体的には拘束されてシズホに股間ふみふみされて新たな性癖に目覚めたりとか。ご褒美じゃねえか。

 こうして、リマー軍は組織の持つ財産を根こそぎ洗いざらい奪い尽くし、致命的なダメージを与えて去って行った。残されたのは色々な意味で残骸。そして死屍累々。まともに人格を保っているウェットラットは幸運な方であった。

 今街では復帰した警察と、星間交易連盟が雇ったPMCが治安維持に当たっている。汚職だらけであった警察上層部は一掃され、数少ないまともな警官がその代行を行っているが、当然ながら手が回っておらず多くの業務をPMCに任せている状態だ。彼らは犯罪者に対して容赦が無い。懲りずに今までのような悪さをしようとした連中は軒並み捕縛され、悪くすれば速攻射殺なんて目に遭っている。連盟はこの機にコネクションを潰す気満々で、治安維持に惜しみなく資金を投入していた。この星で犯罪組織が再起するのはかなり難しいだろう。

 機は逸した。しかしここから逃げようと思えば逃げられる。だが。


「行く当ても、伝もないんだよなあ」


 クレンのコネクション壊滅を受けて、関わっていた勢力は一部を除き潮が引いたように連絡を絶った。ウェットラットの伝も同様である。自分たちも同じ目に遭いたくない一心であったろうが、何とも情のない話であった。犯罪組織に情を求めるのが間違っているという話もあるが。

 それはそれとして、逃げ出したところで今後の当てなど全くない。どこかで野垂れ死にするだろうという漠然とした覚悟はあったが、こんな感じで土台がまとめて崩されるとは思わなかった。リマーの鬼、悪魔、ち●ろ、などと心の中で罵るくらいしか、ウェットラットにできることはない。

 彼らのような人間だけでなく、一般市民も戸惑っている。降って湧いた圧政からの解放に。

 リマーの進撃は電光石火で、誰も何の対策も取れずに制圧された。もちろんレジスタンスたちの活躍もあったが、それはお膳立てをされていたからだ。彼らだけでは反乱は制圧されていたかも知れない。それはそれとして、数日で状況はがらりと変わった。横暴な王侯貴族は廃され、自由がもたらされた。しかし何をして良いのか分からない。そういった困惑が町を支配している。

 まあすぐさま借金だらけの現実がたたきつけられ呆けている場合ではなくなるのだが。そこから前より酷いことになるのか前向きに向上していくのかは、彼ら次第だろう。

 それはさておき、ぐだぐだしてるウェットラットはこれからどうするべきか考える。今までの仕事はもう行うことができないだろう。何しろ商売相手の組織がない。かといって他の仕事、ましてやカタギになれるとは思えなかった。幸いにして蓄えはあるが、それとていずれは尽きる。余所で1から出直すにも踏ん切りがつかない。

 しばらく悩んで彼が出した結論は。


「……とりあえず、すけべな店行くか」


 見事な現実逃避であった。

 なお、お目当てのお姉ちゃん(リマーのスパイ)が店をやめて行方をくらませたと聞いて泣き崩れるまであと10分。











 多くの人間が呆けたり狼狽えたりしている中、前向きな人間もいる。


「炊き出しはこちらで~す! 順番に慌てないでお受け取りくださ~い!」


 仮設の建物の前で、焼け出されたり職を失った人たちの為の炊き出しが行われている。そこで呼び込みを行っているのは教会の人間を率いたジャネットだった。

 クレン本星が制圧されてから即座に彼女は動いた。協会と連盟双方から資金と物資と人員を引き出し、復興のための奉仕活動に打って出る。教会も連盟もマネーロンダリングの理由には事欠かさないので、そういった部署を説得(脅迫)して出す物を出させた。前から準備していたとはいえ、えげつなく見事な手腕である。

 ジャネットの表情は笑顔。その瞳の奥には強い野望の光があった。


(ゼロから、いえ、マイナスからのスタート。この生涯をかけても宗教ビジネスとして成り立つかどうか微妙。普通ならこの星を丸ごと見捨てる選択よね)


 分かっていて彼女は苦難の道を行く。この何もなくなった星を立て直し、教会の教えを広めるのは困難を極めるどころではないだろう。

 だが()()()()()()()()。この蹂躙されまくった国に手を差し伸べようとする物好きは数少なく、その少ない一つであるグランシャリオ・ファウンデーションとは『シェア』の争いなど起こらない。むしろ持ちつ持たれつの関係を築く事になるだろう。後ろ暗い関係ではあるが、直接的な取引や関わり合いを持つつもりはない。あくまでお互いの邪魔にならない程度の付き合いとなる。

 そういった意味で彼女の障害は少ないと言えた。だからと言って楽な道ではないが。


(さて、私の才覚でどこまでできるか。あるいは自分の世代では終わらないのかも知れないけれど)


 先の見えない道。だがそれでもジャネット・ファクティスという女は迷わない。ただひたすらにおのれの野望を突き進む。

 彼女はクレン王国に居座る人間の中で、ほぼ唯一前向きだった。











 さて、大敗どころか一方的にボコられ壊滅状態にされたクレン軍だが、解体されずに何とか残っている。

 勝てると根拠なく思っていた者、出世に目がくらんだ者。そういった連中は真っ先に死んでいた。残ったのは運の良い者か早々に降伏した者か逃げ出した者だ。

 で、生き残った連中にも戦後のゴタゴタを利用して逃げ出す者がいる。そもそもがろくでなしの集合体だ。そういった輩が出るのは致し方ないと言えた。傭兵? 真っ先に全員逃げ出してますが何か。

 で、出し殻のように残ったのは、行く当てがないか精根尽きたかしがらみで逃げられなかったか、そういった連中である。決して愛国心で残ったのではない。その上敗軍である。士気など無きに等しい物であった。

 資源惑星で居残っていた連中など良い例だ。ごたごたで逃げるタイミングを見失い、主力が壊滅的な被害を受けた後でリマー軍に囲まれれば降伏するしかあるまい。そのままずるずると機を逸したまま、再編成されることとなった。

 金もなく物資もなく、士気も無ければ意欲もない。こんなのでまともに軍隊として機能するわけもなく、惰性だけで彼らはそこにいる。


「今からでも辞職できんかなあ」

「したいのはやまやまですが」


 艦隊司令と副官は揃ってため息を吐く。資源惑星に居座っていた傭兵――のふりをしたマリーツィアの手の者たちは、少数を残して引き上げた。もう完全に資源惑星を自分たちの領土にしたつもりである。その分そちらをパトロールする必要性は減ったが、改めてもいい気はしない。だらだらと戦いを引き延ばした身分で言うことではないが。


「まあ給料が出るだけマシか。……予算は死ぬほど削られたが」

「1、2回戦闘したら干上がりますな。張り子の虎も良いところでしょう」


 さっさと逃げ出すべきであったと臍をかむ。腐っている上が根こそぎ消え失せたことで風通しは良くなったが、そも自分たちも清廉潔白ではない。不正をしたくともどこも先立つ物がないのだ。余計なことだけを押しつけられ何も得がないと感じている。

 貧乏くじを引いたと後悔するクレン軍『残当』艦隊だが、まあ大体どこも一緒でみんな貧乏くじを引き当ててる。苦労しているのは彼らだけではなかった。

 ともかくクレン宇宙軍艦隊は、1000隻にも満たない数でこれからやりくりしていかなくなった。だがしばらくは再編成がてら徐々に身売りすることになり、最終的には500隻も維持できるかどうかと言うところだろう。星系国家の軍隊としては心許ない数だが、なければなければで余所から食い物にされる。ってかすでにマリーツィアから食い物にされてるから今更だった。

 艦隊のあちこちで、今日もため息を吐く音が聞こえる。











 こうして、クレン王国改めクレン共和国は再スタートを切る。

 経済的にボロボロ。借金だらけで収入源の多くは抑えられ見通しは暗い。人々は死んだ目でなんとか日々をやり過ごさなければならなかった。

 騒乱の時代の始まりであったこの国は、その後の時代に大きく出遅れることとなる。それが不幸であったかどうか、日々を懸命に暮らす人々には判別つくまい。

 歴史は彼らを置いてけぼりにして、容赦なく進んでいく。











色々な意味でクレン王国しゅ~りょ~

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― 新着の感想 ―
[一言] 陽はまた昇る… 多分昇ると思う 昇るんじゃないかな… 昇ったら良いなぁ… 昇ってくれよぉ~(泣) (祀り上げられ王)
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