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その5






 降下したリマー艦隊は、DAを放出すると同時に陸戦部隊を展開させる。強襲戦闘車両を前面に、予想車両系が続く。

 地上部隊を指揮する車両の中で、一人の人物が腕を組みながら戦術モニターを見ていた。


「抵抗がないな」

「は、軍事基地はほぼ空に近く、警察組織は我先に逃げ出しているようです。レジスタンスも障害無く進行しているようで」

「腐敗もいいところだ。まあ楽をさせて貰っているが」


 苦笑。多少の物足りなさは感じているが、つつがなく事が進むのは良いことだと自分に言い聞かせる。


「我々はこのまま首都の制圧に入る。最重要目標は()()()()()()()()()()()()()()()だ。雑魚は逃して構わんが、金持ってそうなヤツは一匹たりとも逃がすな」

「「「「「イエス・マム!」」」」」


 言ってることはまともに聞こえるが、実情は山賊行為と変わらない命令を下す女性。

 【シズホ・ウェストエンド】陸軍大将。リマー陸軍の重鎮である彼女は、今回の作戦で直々に指揮を執っていた。

 滞りなくなく進む状況を認識して、彼女はふっと、小さな笑みを浮かべる。


「ミズホめ……やるようになった」


 ()()()の手腕を評価する。そう、彼女はミズホの母親だ。

 陸軍重鎮の家系であるウェストエンド家。その中にあって艦隊戦術の方に長けたミズホは異端であった。結局実家になじめず家を飛び出したミズホは、その才能に目を付けたリアルに引き抜かれ、彼女の元でその才覚を十分に発揮している。今も首都に近い軍事基地をしらみつぶしに襲い、使用不能なレベルのダメージを与え続けていた。行動も判断も文句なしの及第点と言えよう。

 あの才能が陸戦で活かせないのは残念だが、その才能を認められ存分に采配を振るえるのは彼女にとって幸せであろう。まあ代々続いてきた軍人の家系とはいっても親と同じ道を歩む必要は無い。好きにすれば良いのさと、嘯く。


「……さて、私は私の為すべき事をするか」


 気持ちを切り替え新たな指示を出す。先に潜入していた工作員の情報網と連動、効果的にカルテルコネクションの連中を追い込む手はずが整っていく。

 狩りの時間だ。











 本星では順調に制圧が進み、艦隊戦も早々に勝負が見えてきた。この時点でやっとK-M1に居座っていた艦隊に情報が入った。


「リマーが本星攻め込んで来ただと!? い、いかんではないか!」


 流石に艦隊司令も焦る。だがK-M1付近に居座っている敵艦隊を見逃すわけにはいかなかない。あくまでサボっていたいということではなく軍人の責務として。

 しばらく苦悩した末に、指令は判断を下す。


「艦隊の半数を本星に向かわせる。残った者は以降自己の判断で行動せよ」


 800の艦隊を二つに分けることにした。居座っている艦隊より数は少なくなるが、にらみを利かせるには十分と見たのだ。しかし敵側にもクレン本星襲撃の知らせは入るだろう。そうなれば攻勢に出てくることも考えられる。そういった場合は各々判断して行動しろと指示を出した。この司令官、勝ち目がないと思うくらいには有能だったようである。

 いよいよともなれば逃げ出すか。そんな算段をし始めた司令官の下に、新たなる報告が告げられた。


「レーダーに感あり! こちらに向かってくる艦隊を確認しました! 友軍信号は無し、新手です!」

「何!? リマー軍の増援か!」


 新たに侵入してきた艦隊。それはクレン本星ではなくK-M1に向かって進路を取っていた。だから派遣されていた艦隊も察知したのだが。


「アンノウン!? こんな時に横槍を入れてくる馬鹿がいたか!」


 リマー艦隊ではない、そして居座りどもとも違う、未確認の他勢力。恐らくは機会を窺っていたのだろう。よりにもよってと言うタイミングで侵攻を開始したらしい。

 クレン側の司令官は迷う。応戦するべきか、それとも予定通り行動するべきか。

 そんなおりに。


「し、司令! 入電です! K-M1に居座っている連中からです!」

「なんだと!?」


 敵艦隊からからの通信。一体何のつもりか。

 無視するべきなのかも知れなかったが、司令官は精神的に追い込まれていた。回線を開いたのは藁にもすがる思いだったのかも知れない。


「当艦隊の指揮を預かっているディレットーレと申す。ゆえあって所属は明かせない。ご無礼を許されよ」


 明らかに偽名の敵司令官。疑念の目で「何用か」と問うてみれば。


「時間が惜しいので手短に言おう。今侵攻してきた所属不明の艦隊を迎撃するため、一時的に手を組まないか、と言う話だ」

「は?」


 何を言い出すのかこの男は。司令官がそう思っても仕方の無い提案である。


「こちらとしては余計な戦力を消耗したくはないし、そちらも同じだろう。なに共闘しようというわけではない。こちらとそちら、それぞれが所属不明艦隊を迎撃すると言うだけだ。この一戦のみ互いに不干渉。そういうことでいかがか?」


 曖昧な言い方をしているのは、言質を取られるのを防ぐためか。いずれにせよ所属不明艦隊を放っておくわけにはいかないし、ましてやこのまま本星に向かうというのは敵前逃亡と取られかねない。国家が残っていればの話だが。

 一瞬悩んだ末に、司令官は判断を下す。


「……良かろう。我々としても放置しておくわけにはいかないからな。そちらの提案に載せて貰う」

「感謝を。では幸運を祈る」


 短いやりとり。それだけで、一時的な共同戦線は成った。

 こうしてK-M1に派遣されたクレン艦隊は、乱入してきた艦隊と一戦交えることになる。

 そしてそのことが、結果的に彼らの命脈を保つことになるとは、この時誰も予想していなかった。











 さて、順調にクレン本星を蹂躙していくリマー軍であるが、その中核となっているダーメファルカンでは、一つの変化が起きていた。


「目標沈黙。残存兵力に反撃能力が無いことを確認。次の目標までの到達時間および予想される戦力を算出しました。艦長と索敵に送ります。それと各消耗具合から後3戦で補給が必要だと推測されます。補給部隊の現在位置および予想配置をマップ上にマーク。ご参照を」


 矢継ぎ早に報告しながらタッチパネルを操作し続けるのは、戦術オペレーター席に座ったルルディ。メイド兼フランローゼ隊員としての訓練を受けていた彼女だが、図抜けた才能を開花させた。情報、戦術分析に関して、フランローゼ内では比肩する者がいないほどのオペレーターとなったのである。

 ミズホやリアルは良い拾いものをしたとほくほく顔だが、残りのメンバーは複雑な表情だ。別にいびる気はないが、数ヶ月で自分たちをも凌ぐ技量を持つに至られるとこう、モヤモヤした物が胸に宿る。元敵だったのでなおさらだ。

 まあ本人は必死こいてるだけなのだが。ここで手を抜いたらもっとしごかれるというのは嫌でも分かる。だが有能ならばそれなりに仕事を押しつけられるというのも事実だ。どちらがマシかと言えば、まだ重宝される方がマシだろうという判断だった。

 もちろん納得していない。納得していないので彼女は密かに企んでいた。


(絶対円満退職してやるうううううう!!)


 心の中で咆吼し、ルルディはタッチパネルを叩き続ける。

 まあそうやって自覚無しにズブズブと取り込まれているルルディのことは放っておいて、ダーメファルカンを含む地上攻略部隊は、順調に事を進めていた。


「状況終了。各機コンディションをチェックし報告なさい」


 大剣を提げ周囲を睥睨する、紅きブリッツシュラーク。破壊され煙を上げる軍事基地の中央。リアルはコクピットの中で鼻息を鳴らした。


「期待はしていませんでしたけれど、何ともあっけないざまですわね」


 若干不満げな様子である。本拠地であれば子飼いのエースの一人や二人や五人や六人くらいいるかと思っていたのだが、全くもって手応えがない。まだ宇宙で突っかかってきた相手カーネの方がマシであった。

 当てが外れてがっかりしてるリアルだが、その行動に淀みはなく油断も隙もない。きびきびと指示を出し帰艦、次の目標に向かう間に機体のメンテナンスを受け、軽く食事を取る。


「機体の冷却はよくてよ。エネルギーカートリッジと弾倉の補給をお願い。それとシステムチェックを。バグはないけれど反応のパラメーターを1.7修正して」


 サンドイッチとスムージーで腹を満たしつつ、メカニックに指示を下す。最早本星上にある過半数の軍事基地を機能停止に追い込んだ。もう数時間もすれば完全に沈黙するだろう。


「それまでに首都が制圧されるのが早いかどうか。……競争というのも一興ですわね」


 強敵がいないのでRTA感覚になりつつあるリアル。コレがホントのリアル・タイムアタックとか言い出しそうだ。

 ともかくここまで大きな障害はなく、事は順調に進んでいた。そしてこの後も何らアクシデントはなく、着々と制圧は続く。

 そしてリマー軍がクレン本星の軍事基地を全て壊滅させるとほぼ同時にクレン王宮は制圧され、王家は打倒された。それを見計らったかのようにリマーの後続艦隊が星系に到達。乱入してきた某艦隊は撤退を余儀なくされる。

 もちろんリマー艦隊とクレン艦隊は、クレン艦隊の壊滅という形で決着がついた。生き残った極少数は降伏したり逃亡したりしていたが、それも少数だ。再起は図れまい。

 こうして、戦いは二日とかからずに終結した。

 だが当然のように、それでは終わらなかったのである。











 次回予告


謎の仮面:うん予想通りとは言え、酷いね

リアル:あら、手加減はしていましてよ

ルルディ:そういう問題じゃねえでしょ

謎の仮面:つくづく残らなくて良かったと思うよ。いや何のことだかさっぱりだけど

リアル:後はかっぱいで帰るだけ、なのですけれどねえ

ルルディ:締め方が不穏なんですけど

謎の仮面:まあ大体予想通りだと思うよ。ってなわけで次回予告


リマーとクレンの戦いに決着はついた。

しかし各地で巻き起こった戦火は止まらない。

戦争の事後処理に追われつつも、リマーは次なる戦いに向けて動き出す。

そして各勢力もまた……。

次回『終わりなき戦い(なお主役陣は喜んでいる模様)』

焔の薔薇は戦場に華吹く。


謎の仮面:ところでそろそろツッコミが欲しいんだけど

リアル:あら、何のことですの謎の仮面さん? (白々)













気がついたら年末だよ。なんか何もしてねえよ。

エアガンで浪費しただけの一年でした緋松です。


さて更新です。なんか中途半端な顛末になってしまいましたが、クレンの戦力が溶けていくだけの描写になりそうなので、サクッと切り上げました。気持ちを切り替えていこう。

今回でクレンとのいざこざに決着が……つかないんだなあコレが。後始末と新たな戦いが待っています。もうちょっとだけ続くんじゃよ。


そう言うことで今回はこの辺で。

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― 新着の感想 ―
[一言] かっぱがれたからと言ってもまだ│食える《オイシイ》トコロは残っとるやろ? 歯噛めるトコまで歯噛むのがオレらの流儀やで? (いわゆる屍肉喰らい《スカベンジャー》の頭目の一人のセリフ)
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