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その4






 ジャックポットを護るべく展開した艦隊。

 その中央に位置するのは、なぜかダーメファルカンである。


「いやあ、さすがは海千山千のカジノ支配人たちでしたなあ。()()()()()()()のに少々手間取りましたわ」

「上出来でしてよ。これで堂々と矢面に立つ事が出来るというもの」


 にっこりと笑うミズホ。何をどうやったのか、ジャックポットを管理している幹部を説き伏せ、艦隊の指揮権を一時的に預かったらしい。

 幹部や雇われている兵の中には、リマーのことを聞いている者も多い。しかしその大半が表面的な情報を鵜呑みにしている。私怨で前線に赴いたお飾りの姫様に、何ができる物かと疑念の視線すら向けている輩もいた。

 だが、一部の人間……主に()()()()()()()()()()()()は、真実を耳にしていた。そういった人間はリアルが戦力になると理解している。そしてさらにはリマーを敵に回すような行為はやめておいた方がいいという意見も出てくる。そういった人間の説得と、ミズホの口車によってフランローゼ隊の参戦は決定された。

 防衛艦隊の多くを占める傭兵たちの中にも、リマーの蛮行を知る者はいた。そういった者たちは率先して彼女らに従い艦隊の編成に協力する。結果、さしたる混乱もなくダーメファルカンを中核とした編成は成った。

 現在防衛艦隊はジャックポットから離れ、その隣の惑星の軌道上で陣を敷いている。ジャックポットの近海で戦闘を展開するという愚は犯さない。迫り来る某国艦隊を待ち受ける形だった。

 艦隊の総数は向こうが上。で、フランローゼ以外は双方練度が高いとはとても言えない。普通に戦えば、どうにもぎこちない、ぐだぐだとした物になっていただろう。だがフランローゼ隊の存在が、一石を投じるどころか根底からひっくり返す。


「ではミズホ、艦隊の指揮は任せますわ」

「御意。ご武運を」


 ばさりとコートを翻して、リアルはブリッジを後にする。もちろんDAで出撃するためだ。

 これまで一応影武者を立ててまで色々と誤魔化してきたはずだが、全部ご破算にしてぶっちゃけるつもりなのだろうか。


「いえいえ、助力する代わりに箝口令をお願いして、私らただの傭兵扱いにして貰ってるだけですから」


 こっち見てメタんな作中人物。


「まあそれはさておいて。……各艦の様子は?」


 制帽の位置を直しながら、ミズホは眦を鋭い物に変えた。


「全艦こちらの指示通りに配置。今のところ問題はありません」

「よろしい。敵艦隊が想定されたラインを超えたらDAを展開。こちらから先手を打つ」


 別人のようにキビキビとした様子で指示を出すミズホ。その口元が歪む。


(さて、イレギュラーがなければ勝てる戦いだが、どうなるか)


 舐めてはいない。確たる事実としてミズホは自分たちの優位を認識していた。相手の某国は小国であり、ほぼ実戦経験を持たない。対してジャックポットを護る傭兵たちは、その大半がある程度の実績を持つ。連携こそ完全には取れないものの、練度という意味では開きがあった。単純に戦力差で負けていても、不利にはならない。

 そして、ミズホ・ウェストエンドという女は、その状況を最大限に利用する。


「敵艦隊の旗艦は特定できたか?」

「はっ。光学測定にて、敵艦隊の中央に大型艦を確認。防御の隊形から旗艦と判断されます」

「その艦を最優先攻撃目標と設定。だがフェイクであることも留意し、艦隊全体の動きから目を離すな。DAの展開と同時に各艦は砲撃を開始せよ。射程距離は気にしなくていい。敵艦隊を牽制させる」

了解(アイマム)


 ミズホの指示を受け、艦隊はそれなりに統率の取れた行動を取る。完全に統率が取れていなくても構わないとミズホは考えていた。やるべきことをやってもらえれば、それで良い。

 双方の艦隊の距離が縮まる。当然ながら先手はジャックポット側が取る。


「フランローゼ1、出ますわよ」


 ダーメファルカンから滑り落ちるように射出された紅いトゥルブレンツが、とんぼを打ってから加速する。それに焔の薔薇のエンブレムを付けた機体が続く。

 同時に。


「全艦砲撃開始。狙いは大体でいいが、味方には当てるなよ」


 砲火が(そら)を貫く。射程外からの砲撃は命中精度など望むべくもないものであったが、敵艦隊は反応した。

 慌てたような回避行動。それも散り散りばらばらだ。統率が取れていないのが見て取れる。予想通りだと、ミズホは鼻を鳴らす。


「敵の陣形が崩れた。仕掛けるぞ。フランローゼ隊が突っ込む。各艦、各DA部隊は援護しろ」


 真っ先に突っ込んでいくフランローゼ隊のを援護し、敵艦隊を切り崩す。リアルの身に対して全く配慮がないように見えるが、全く名の響いていない国家に、リアルをどうにかできる人間がいるとは思えなかった。そんな人間がいたら逆に喜ぶだろうから放って置けばよろしいというのが、ミズホの意見だ。

 自分たちが矢面に立って敵艦隊を浮き足立たせ、そこから攻勢に出ると言うのが大まかな方針だ。傭兵たちには無理をさせず、敵の体勢を崩してから本格的な攻勢に移る。危険な目には遭いたくないが手柄は欲しい、という傭兵たちの心理を慮った策であった。


「フランローゼ1より各機。メインディッシュは旗艦、後はオードブルでしてよ。適当に蹴散らしてぶっ込みなさい」

御意(イエスマム)!』


 打てば響くような反応。気力も指揮も十分な配下の様子に、リアルは満足げな笑みを浮かべた。


「さて、華吹きますわよ」


 紅い機体が加速。やっと反撃を開始した敵の砲撃の間を縫うように、宙を駆ける。

 迎撃のために出てきた敵のDAを捕捉。だが扱い方がなっていない。攻撃型のDAを迎撃に用い、しかも真正面でただ銃撃を行うだけだ。

 カモである。


「芸がありませんわね」


 稲妻のような機動で攻撃を回避しつつ接敵。ストライクランスを振るう。相手から見れば、とんでもない機動で攻撃を回避していたトゥルブレンツが、突如目の前に現れたようにも見えただろう。

 真正面から刺突。鳩尾の辺りに突き込んだランスをトリガー。一撃で敵機は真っ二つに引きちぎられた。

 その戦果を確認することなく、駆け抜ける。この程度の相手であれば障害物以外の意味は無い。他のメンバーも同様で、正しく風穴を開けるがごとく敵陣に斬り込んでいく。

 このままであれば容易く某国艦隊は総崩れになるだろう。ジャックポット側の多くの兵がそう予想した。

 しかし。


「そう上手くは――」

「――いかなそうだな」


 リアルとミズホが同時に呟いた。

 リアルのトゥルブレンツが突然の回避行動。一瞬まで紅い機体が存在した空間を、閃光が薙ぐ。

 現れたのは高速で飛翔する、長大な砲を備えた航空機のように見える何か。それが変形し、細身のDAとなる。

 強襲型の機体だ。ダークグレイのその機体は、高速で飛翔しながら砲を構える。


「ふん、くだらない仕事だと思ったが、存外面白くなりそうじゃないか」


 灰色の機体を駆るのは、目つきの鋭い男。某国に雇われた傭兵の一人であった。

 機体を振り回しながらフランローゼ隊に向かって断続的に砲撃を行う。馬鹿でかい獲物を事もなげに扱うその様子は手慣れており、どうやら相当の使い手のようだ。

 その様子を見たミズホは、制帽の位置を直しつつ言う。


「フランローゼ隊は新手に応戦。各DA部隊は敵の迎撃に集中しろ。艦隊はそのまま砲撃。敵艦隊の再編成を許すな」


 戦線の維持に努めるよう指示を出す。フランローゼ隊の足が止められた以上、早期の決着は望めない。ならばやりようを変えるだけだ。

 数では負けているが機先は制した。相手に立て直しの時間を与えずに崩していく。最低でも追い払えばいい。フランローゼの『離脱』は、ミズホに何一つ動揺を与えていなかった。

 一方。


「【ガルーダMarkⅢ】。珍しい機体を使いますのね」


 高速で灰色の機体を渡り合いながら、リアルは呟く。

 相対している機体――ガルーダMarkⅢは少数しか生産されておらず、そして整備性が悪くて扱いづらいのであまり使う者がいない。

 だがその性能は、大分バランスがおかしいが高いものであり、使いこなせれば相当の戦果を期待できる。そしてこの機体を使いこなせると言うことは、()()()()()()()()と言うことだ。


「炎の薔薇の紋章。黒曜の海賊殺し。リマーの近衛だったという話だが……王族でも遊びに来ていたか? まあいい、相手にするには面白すぎるだろ」


 悪人顔をさらに凶暴な笑みへと変化させる男。歴戦の傭兵であり、リアルを超えるかも知れない人形遣い。

 【マクシミリアン・ウィンチェスター】。無名であった在野の鬼才が、狂乱の王女に対して牙を剥いた。











なんかまた強敵っぽいのが出てきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今まで出てきた機体の武装は良くある量産型って感じだったしそろそろゲテモノ武装が欲しくなる頃だけど、さて、こいつは持ってるかな?
[一言] 敵《ライバル》は強くないと面白くないですの♪ だから読者《コッチ》見て言うなと
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