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その6






 自分たちが仕掛ける直前で何者かが先にやらかしてくれた。何を言って(略)

 ヴィクトリカ以下カンパニー総員の心境である。

 唖然としていたヴィクトリカだが、状況を思い出し我に返った。


「……あ~、出した荷物を全部回収して観測に切り替えるよ。いつでもケツまくる用意だけはしときな」

「いいんですかい? 荷物は邪魔になると思いやすが」


 デコイ無人機と砲台は元々全部破棄する予定だった。ここで回収しても意味は無いのではと手下は思ったが。


「向こうが相手してくれたらやりようがあるが、今やっても二番煎じ以下の出し損だよ。回収してうっぱらった方がまだマシさ」


 ここで新たな勢力の登場を演出したところで向こうもまともに相手をしている余裕はあるまい。そしてリマーに第三勢力の関与を匂わせる、その依頼は乱入者の登場によって無為と化した。自分たちの失策ではないのでペナルティはないだろうが、後金はもらえないだろうし大量に無人機と砲台を購入した分赤字となるはずだ。せめて売り払って損失を補填し、状況を記録してスポンサーと交渉するくらいはしなければならない。

 それにしても。


「一体どこの手勢だい。ガチで手を出しに行くなんて酔狂なこと考えるのは」











 交戦中の先鋒艦隊、その後方。空間の歪みが発生した。

 それを確認した艦隊の反応は早い。


短距離超光速航行ショートドライブ! 先ほど牽制してきた別働隊か! 各艦および僚艦隊に通達! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


 後ろに生じる艦隊と交戦する余裕はない。であればクレン艦隊に突っ込む方がマシだという判断を瞬時に行い実行に移したのだ。

 これは最初から蒼の軍勢――乱入者の行動を予測していたからこそ。と言うか自分たちだったらまず間違いなく同じような行動を取る。短距離の超光速航行などという難易度の高い技術を『余所が用いる』というのは少々予想外であったが、自分たちが出来るのだ、他に出来る者がいてもおかしくはなかろう。

 ともかく今は動くときだ。最低でもクレン艦隊の中に飛び込み乱戦状態となってしまえば、()()援軍という体で参戦してきた蒼の軍勢は手出ししにくくなる。まっすぐに突っ切ってついでにクレン艦隊を蹴散らしておくかと思案していた先鋒艦隊司令だが。


「指令、ダーメファルカンより入電です」

「何……繋げ」


 正直無視してしまいたかったが、ダーメファルカンは先鋒艦隊の『真の旗艦』と言って過言ではない。その意向は無視できるものではなかった。

 モニターに映し出されたミズホは、敬礼もそこそこに口を開いた。


「閣下、ご無礼ながら具申いたしたく」

「何だ、手短に」


 嫌な予感というか、どうせろくでもないことなのだろうと苦笑しながら対応する指令に対し、ミズホは微かな、しかし不敵な笑みを見せた。


「ただまっすぐ突っ切る、というのは芸が無いかと。幸い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 何が言いたいのか、何がやりたいのか。それを察した指令は苦虫を噛み潰したような表情となる。

 だが躊躇いなく話に乗るところは、やはりリマーの軍人であった。











 次々とドライブアウトしてくる艦隊。強固にバリアを張り、回避行動を取りながらリマー艦隊と交戦を開始しようとしていた彼らであったが。


「クレン艦隊に突っ込んでいくか。勘の良い」


 ミラーシェイドのサングラスをかけた指揮官らしき男。先鋒艦隊の反応に、笑みさえ浮かべてみせる余裕があった。


「これでは追えんな。さすがに戦い慣れていると思い切りも良いようだ」

「いかがいたしましょうか?」

「ふむ、いつでも離脱できるようにして艦隊は待機。【エストック隊】に繋げ」

「はっ」


 モニターに映し出されるのは、網膜投射式のフルシールドヘルメットを装着したパイロットたち。表情どころ目元も見えないその姿は、知らぬ人間が見たら不気味にも見える。


「お呼びですか、閣下」

「ああ、リマーの先鋒艦隊がクレンに仕掛けた。追って一当て出来るか?」

「やってみましょう。亜光速戦闘の許可を」

「良かろう。存分にやれ」


 無茶ぶりを事もなげに承諾したパイロットたちの姿が画面から消える。司令官の口元が笑みに歪んだ。

 カタパルトデッキに上がる機体。腰部から翼のようなスラスターユニットを生やした濃紺のDAは、銃剣のついたアサルトライフルを構えカタパルトに乗る。


「エストック1、【ノットノウ】。【ステュムパリデス】出る」


 いち早く飛び出した隊長機に次いで、濃紺で揃えられたDAが9機、一個中隊続く。

 エストック中隊。蒼の軍勢の中でもトップエースを選りすぐって編成された、事実上の最強部隊である。

 猛者たちを率いる隊長――ノットノウは、淡々と配下に告げる。


「エストック1より各機。当部隊はこれより亜光速加速に入る。目標はリマー軍先鋒艦隊のDA部隊だ。向こうもエース級が揃っている。手を抜くなよ?」

『了解』


 帰ってくる返事も淡々としたもの。本来亜光速戦闘というものは障害物の存在しない領域で行う。しかも大概は亜光速以上の速度で迫る星系間長距離ミサイルなどを迎撃するためのものだ。宇宙戦闘という観点から見れば障害物だらけと言って良い艦隊戦で行うものではない。ぶっちゃけ頭おかしい。

 が、どうやらこいつらリマー軍並みのアレでナニだったようだ。迷い無く戦闘システムを切り替え、亜光速戦闘に備える。

 機体制御を全て神経接続に変更。思考を量子演算モードにて限界域まで加速。慣性制御最大、対Gシステム亜光速対応へ。エンジン出力、スラスター出力共にリミッターを解除。

 世界の速度が目に見えて低下する。そのような感覚を覚えながら、ノットノウはシールドの下で呟く。


「さて、見せてもらおうか。リマー軍エースの実力を」


 加速開始。数秒とかからず、鋼鉄の凶鳥は亜光速へと達した。











 クレン軍旗艦。そのブリッジでは総司令が目を剥いていた。


「後方に展開していた敵艦隊が()()()()突っ込んでくる!? 正気か!?」


 再びの艦隊突撃。だがリマー艦隊はまっすぐ突っ切るのではなく、()()()()()()()()突撃を敢行してきた。

 本艦隊群と合流する()()()()敵旗艦を狙う。ミズホが具申したのはそれだけだ。破れかぶれの特攻などではない。先鋒艦隊および僚艦隊はほとんどダメージらしいダメージも受けていないのだ。捨て鉢になる必要はどこにも無かった。

 ここは強引に旗艦を狙う状況ではない。()()()()()()()()()()。旗艦艦隊が陣取った位置、クレン艦隊の練度。それらを考慮して『押し通せる無茶』だとミズホは判断し、先鋒艦隊の司令もそれに乗った。そういうところやぞリマー軍。

 まああくまで旗艦を狙っていると言うだけで、実際撃破できなくとも構わない。本命は本隊と合流することだ。ついでに敵が混乱してくれればベター。それ以上はおまけにすぎない。

 補給を終えたDAを先陣に艦隊が突撃する。砲火連動突撃を駆使し、邪魔な敵艦を蹴散らしていく。

 力業だ。だが予想外の無茶にクレン艦隊は対応しきれない。回避しようとする艦、反撃しようとする艦。相変わらず連携のなさが互いの足を引っ張り、折角立て直そうとしていた態勢が再び崩壊しつつあった。

 刃物のように敵艦隊へと斬り込んでいくその先端。敵DAを蹴散らし敵艦に痛打を与えながら紅いトゥルブレンツが駆ける。


「脆い。だけどこのまま終わるものかしら」


 また一つDAを撃墜しながらリアルが呟く。今日この日だけでもすでに20機近い機体を大破させた。彼女だけでなくフランローゼ隊各員は平均10機は葬っている。艦については足止めを優先としたため撃破はなし。それでも戦果としては十二分な物だろう。

 それだけのことを傷一つ無くやっておきながら、リアルは欠片も油断していなかった。クレン軍は確かに脆いが、まだ()()()()()()()()()()()()()。追い込まれた人間は時に異様なまでの力を発揮する。そのような状況になれば自分たちも危うくなるかも知れない。今は奇策が通っているが、奇策は所詮奇策だ。いつまでも通用するものでもないし、それほど世の中は甘くない物だ。

 そして横やりを入れてきた蒼の軍勢。1、2度戦場で相まみえたが、自分たちに勝るとも劣らない練度と技量を持つ強者であった。その彼らがなぜここに現れたのか。どこからかの依頼か、それとも……()()()()()()()()()()()

 自分たちと同じように傭兵とか偽っていた、どこかの勢力に属する存在。リアルは蒼の軍勢をそのような物だと当たりを付けていた。自分たちがやったのだ。余所がやらない保証はない。それはさておいて、クレン軍を相手取る片手間に対処できるような生やさしい存在ではない。敵艦隊を再び突っ切るなどという無茶(?)をしてまで本隊と合流するという判断をした先鋒艦隊司令は間違っていないだろう。

 だが、それこそ自分たちと同等の相手が、()()()()()()()()()()()()()。目的がただクレン艦隊の窮地を救い、恩を押しつけるだけでなく……()()()()()()()()()()()()()()()。その場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そこまで思考し、旗艦艦隊が目前に迫ったところで――


「各機、散開!」


 リアルは()()()()()()()()()()()()

 閃光が、奔る。

 艦隊戦の合間を縫って、攻撃を放ってきた流星のごとき何者か。それが亜光速機動しているDAだと気づいた瞬間、リアルは反応した。


「亜光速戦闘、いきますわよ!」


 己もまた亜光速戦闘へと切り替える。艦隊戦の最中、障害物だらけと言って良いこの空域の中で迷いもない。

 思考演算がナノマシンを介した量子演算へと切り替わり、世界が目に見えて速度を落とす。そして視界の端、稲妻としか思えない速度で駆ける、蒼きDAの姿を捉えた。


「華吹きましょうか!」


 紅き機体が、蒼き機体へと挑みかかる。











 次回予告


 リアル:なんで良いところで切りますの? ねえなんで良いところで切りますの?

 ヤーティェ:いや僕に言われましても。

 ルルディ:もがもごもげもがー! 

 ヤーティェ:こっちはこっちで何言ってるか分からないし。

 リアル:縛り上げられて猿轡噛まされてたら当然だと思いますわ。で、なんで良いところで切りますの?

 ヤーティェ:だから僕に言ってもしょうが無いでしょーに。ともかく次回予告行くよ。


 リマーとクレンの初戦、第一次リマー・クレン星系間会戦。それは乱入者蒼の軍勢の介入により、双方が不本意な形で一応の幕を閉じた。

 星系間に橋頭堡を築いたリマー。蒼の軍勢を受け入れざるを得ないクレン。戦いは終わらず、再び激突するときは刻々と迫る。

 そんな中、忘れ去られ出番を削られたルルディの姿は意外なところにあった。

 次回『思惑誘惑困惑わくわく』

 焔の薔薇は戦場に華吹く。


 ルルディ:もごもごもごもげー!

 ヤーティェ:だから何言ってるか分からないってば。











かねもいらなきゃおんなもいらぬぅ~、わたしゃも少し時間が欲しい~。

 いや金は要りますください(ゲス)緋松です。


 はい更新が遅れ気味な上に話が予定通りに進んでいません。本来はここでルルディさんのところも描写があるはずだったんですが……艦隊戦難しいよう。銀英伝ってすげえなと改めて思う緋松です。

 ともかく次回は戦いの顛末と、ルルディさんがどうなったのか語られるはずです。予想以上に話が延びなければ。伸びなければ! はいフラグ言わない。


 おかしいもっとサクサク進むはずだったんだけどな~とか首をひねりつつ、今回はこの辺で。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何を企む 第三勢力 敵の敵は味方? ナニ甘いコト言ってンの? 敵の敵はやっぱり敵に決まってるっしょ?
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