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シュトゥルム・プリンツェスィン ~婚約破棄からの宇宙戦争!? 嵐を呼ぶ暴れん坊王女様~  作者: 緋松 節
第三話・進撃開始! 帰るまでが戦争です

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その2






 『第一次リマー・クレン星系間会戦』。それはリマー艦隊が発ってから2日後、二度目の再集結地点と目されていたエリアにて勃発した。

 クレン王国軍、そしてかき集めた傭兵の艦隊合わせて二千五百隻強が布陣する真正面。超光速航法を終えて現れる物がある前兆の、空間の揺らぎが生じる。


「現れたか、待ちかねたぞ。……全艦砲雷撃戦用意! ドライブアウトしてきた連中に洗礼を浴びせてやるがいい!」


 クレンの軍勢を預かる総司令官が指示を下す。さすがに以前のリアルエクストリーム脱出騒動で懲りたのか、指令に選出された彼は傲慢ではあるが比較的まともな部類の軍人であった。

 その戦術も手堅い。ドライブアウトしてくる直後を狙って集中砲火し敵の出鼻をくじく。セオリー通りで着実な手段を執っていた。そうしながらも傭兵の艦隊を前面に出し、旗艦艦隊は後方に陣取っているところはクレンの軍人である。

 相手もセオリー通りなら、バリアを展開して蛇行するなりしながら損害を抑えるだろう。そして後続が到着するまで時間稼ぎに徹するはずだ。先鋒艦隊なら足の速い艦を中心とした編成であろう。火力で圧倒できると踏んでいた。

 その目論見は当然のように覆される。

 真っ先に現れた艦影に向かって、無数の砲火がたたき込まれる。しかしそれらをものともせず悠々と突き進むのは。


「なに!? 殲滅艦だと!」


 シュナプス級殲滅艦【キルシュヴァッサー】。全長2キロの巨体を持つ()()()()()()が、真っ先に飛び込んできたのだ。

 通常の艦より遙かに強固なバリアと装甲で集中砲火を受け流す巨艦に次いで現れるのは、2隻の重戦闘空母とその護衛を司る十数隻の巡洋艦。そして戦闘輸送艦数隻におまけの強襲揚陸艦ダーメファルカンである。

 先鋒艦隊というよりは打撃艦隊に近い編成。明らかに威力偵察より殴りかかることを意識したものだ。つまりこいつらは――


「待て待て待て待て! 1()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()かあああ!?」


 正気の沙汰じゃない。いくら密集していないとはいえ、戦力差がありすぎるどころではない相手に対し、真正面から突撃を敢行するか。

 あまりのことで、咄嗟に反応できた者は皆無であった。その僅かな時間が、つけいる隙を与える。


全武装自由使用オールウェポンズフリー! 片っ端からぶっ放せ!」


 艦隊司令が命じると同時に、展開したキルシュヴァッサーの砲座が一斉に吠えた。

 主砲、同軸連装砲の砲撃を受けた艦が機関部を根こそぎ消失し、轟沈する。副砲の大口径レールキャノンにはEMPクラスター散弾が装填されており、直接的なダメージではなく電子索敵の妨害を目的とした弾頭は敵艦艇に殺到しその目的を十二分に果たす。

 単艦、または少数での殴り込みを想定し開発されたのは伊達ではない。キルシュヴァッサーの突撃は、クレン艦隊の鼻っ柱を思いっきりぶん殴った形であった。

 そしてそこでは終わらない。


「各艦艦載機を出せ! 『嵐の姫』の行動には十分留意しろ! 間違いなく真っ先にぶったたきに行くぞ! へまを打たせるな!」


 佐官以上にしか分からない隠語で注意を促す。艦隊の人間は大体分かっている話だが、一応最大級の機密だ。形だけでも隠しておかなければならない。

 ともかく突入速度を維持したまま艦載機が放たれる。先鋒艦隊に属している戦闘空母、【ホエールシャーク級】はカタパルトデッキを艦内に持つ構造だ。発艦着艦に際してパイロットには技量を要求されるが、その際に攻撃されるのを防ぐ事が出来る。艦の戦端に口のごとく開いた射出口から、次々と艦載機が発っていく。

 ヴァルキュリアが先行しトゥルブレンツが続く定型のフォーメーション。オペレーターからの指示が飛ぶ。


「アルファマムより各機、対艦、対DA戦闘用意。艦隊進行方向の空域に攻撃を集中、道を空けろ」

「アルファリーダー了解。各機、花道を作るぞ。当たる端からぶっ飛ばせ」


 押っ取り刀でクレン軍艦隊が艦載機を出そうとするが、その前にリマー軍が襲いかかる。狙いは艦載機でも艦本体でもない。カタパルトデッキやそれに類する射出機構だ。射出機構を潰せば艦載機を放つことは難しくなる。DAでの防衛、反撃を封じる算段であった。

 空母を中心に打撃を与えていくリマー軍DA部隊。本格的な反撃が始まる前に、とうとうあの女が動く。


「フランローゼ隊出るぞ! 各部隊はフォローを!」


 重巡洋艦3隻に護衛されたダーメファルカンから、焔の薔薇を記したDA部隊が飛び出していく。


「レディメイド1より小隊各機。敵の数が多い、姫様の元に寄せ付けるな」


 シャラが指示を出し、部下の2機が続く。


「こんな規模相手に無茶言ってくれるです」


 ぶつくさ文句を言いながらも適切に支援射撃を行うのは、【ヴィイ・クワイエット】特務少尉。


「……レディメイド3、了解」


 口数少なく答えるのは、【レン・サイト】特務少尉。

 双方ともリアルの側付からそのままフランローゼに編入された人材だ。当人たちからしてみれば、王女の世話をするはずがDAパイロットになっていた、何を言って(略)といったところだろう。しかしシャラが選抜しただけあってか、めきめきと腕を上げ今ではエース級と言っても過言ではない。最低でもシャラやリアルの足手まといにならない程度には仕上がっている。

 狙いは対DA装備を施した艦だ。痛手は与えなくとも装備のいくつかを使えなくすればそれでいい。彼女らの仕事は()()()()()()()()。 その後は――


「どっちを見ても敵。張り合いが出ますわね。……フランローゼ1、華吹きますわよ」


 内部に大口径砲が仕込まれた巨大な対艦兵装【ストライクランス】を携えた、紅いトゥルブレンツが駆ける。

 シャラたちによって開けられた対空の穴をつき、稲妻のような速度で敵艦に肉薄。全く速度を落とさないままバリアをぶち抜いて機関部付近にランスを突き立てた。

 表面装甲を貫くと同時にトリガー。装填されたサーモバリック弾頭は、二次装甲まで至ったところで気化爆薬をまき散らし発火。盛大な爆発を生じさせる。

 致命傷ではない、しかし決して軽くはない損害を与え離脱。そこから追撃を行わず、彼女らは次の目標へと向かう。撃破するのではなく敵の足を鈍らせること。それに徹する。

 次々と敵艦に挑むが欲を出さず、僚機や後続が手柄を狙える余裕を残すという、あくまで1パイロットとしての役目を果たす姿勢。それは周囲の考えを改めさせた。


「……は、見誤っていたか。我らの姫、ただ豪胆ではない」


 DA部隊の長を務めるアルファリーダーが呟く。そして彼は母艦に回線を開いた。


「アルファリーダーよりアルファマムへ。これよりDA部隊は敵艦隊への攻勢を優先とする。姫君の護衛はかの中隊で十分だろう」

「は? いえちょっと待って……は、は、了解しました」


 泡を食ったオペレーターだが、何らかの指示が下されたようで態度を改める。


「こほん。アルファマムよりアルファリーダー。艦隊司令より命令の変更です。……「好きにやれ」、以上」


 大丈夫なのこれ、というオペレーターのつぶやきが最後にちょろっと漏れ出たが聞かなかったことにして、アルファリーダーは獰猛な笑みを浮かべる。


「アルファリーダーより各機、聞いての通りだ、姫君のエスコートは女傑たちに任せる。俺たちは相手の鼻っ柱を殴り続けるぞ」


 これまでフランローゼの動向を意識していた部隊の動きが変わる。より攻撃的に、果敢に。結果先鋒艦隊の針路上に陣取る空母類は、ろくに艦載機も出せずに無力化していく。 ここにきてやっと、クレン艦隊が反撃に移ろうとした。


「くっ、被害を受けているのはごく一部だ! 各艦敵艦隊に砲撃を集中、全方位から鉛玉を浴びせてやれ!」

「は!? し、しかしそれでは流れ弾で僚艦に被害が及ぶ可能性が……」

「構わん! ヤツらの周囲は傭兵が主だった構成だ、自力で何とかするわ」


 艦隊司令が無茶苦茶な指示を出し、上からの命令に逆らえない者とやる気の無い傭兵たちの艦が消極的に攻撃を開始する。

 だが遅い。砲火に曝されながらも、先鋒艦隊司令は不敵に笑む。


「ふん、我々だけに注視している場合ではないぞ? そら、()()()()がきた」


 クレン艦隊の前面、虚空に無数の歪みが生じる。

 大規模のドライブアウト。先鋒艦隊が所属する第5艦隊群が、一斉にクレン軍へと挑みかかった。











ちょっとペースが落ち気味。

戦闘シーンになるとどうにも手が遅くなりがち。

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