令嬢の冒険 後編
只今街路から離れ、簡素な家が立ち並ぶエリアを歩いてます。
私は屋根を伝い飛んでます。
何故なら路面には・・・・・・私は何も見ていない。
(おっと、目的地に着いたようです)
大きめの建物だ。個人宅には見えない。
降り立ち中に入ると複数の子供がいる。みな草臥れた服を着てる。
(……孤児院でしょうか?)
奥から簡素なワンピースにエプロンをした女性が現れ少年を見て、驚いて問いかける。
「ルイス!その怪我はどうしたの!?」
「ちょっと転んだだけだよ。マーゴさん」
少年はルイスと言うようだ。決まり悪そうに答える。
(マーゴさんという女性は職員の方でしょうか?)
ひとりの少女が私を見て問う。
「ルイス!そのカラスなーに?」
「あぁ拾ったんだ」
別の子が問う。
「食べるの?」
(?!)
「食べないよ。ちょっとこいつに助けられたから食い物やりたいんだ。 残飯とかないかな?」
(?!?!)
「カラスに助けられた?まぁいいわ先に手当てしましょう」
◇◆◇◆◇
(私は今試練に晒されています)
目の前に広がる色とりどりの野菜くず達。
一応洗ってくれたようだが黴臭い。
肉類がないだけましでしょうか?
「こんな物しかなくて悪いな」
残飯の前で固まる私に、手当てして戻って来た少年が親しげに詫びます。
しばし残飯と睨み合う。
(・・・ふぅ・・・ルイス君の気持ちです。食べましょう)
もそもそと残飯を食べながら施設を観察します。
子供はみな草臥れた服を着て、痩せている。
風呂にも入っていないようで不潔っぽい。
職員さんはマーゴさんともう一人女性職員がいるだけ。
随分貧しいようだ。
(・・・この施設の運営はどうなっているのでしょう。 うーん・・・マーゴさんに聞いてみましょうか?)
カラスだから話そうと思えば話せます。
さすがに不気味かな?両親に相談して後日ちゃんと視察に来よう。
貴族令嬢として慈善活動するのは悪くないはずだ。
・・・5歳児がすることではないだろうが、と考えていたらルイス君が妹さんの様子を見に行くようだ。
私も着いて行く。
「サラ、起きてるか?」
熱を出した少女が寝てる。 サラというようだ。
辛そうな寝息だ。 頬は窶れてる。
藁の寝具で寝てる。この世界では一般的なものなのだろうが、自宅の寝具を提供したくなる。
ルイス君の横顔は悲しげだ。
(・・・・・・一度屋敷に帰りましょう)
◇◆◇◆◇
一旦屋敷に帰り金貨とポーションを持って舞い戻る。
「どうしたんだ?!これ!!」
「まったく、どこで盗ってきたのかしら…」
ルイス君が嬉しそうに、マーゴさんが困ったように言う。
(お家のお金くすねました)
「ヌスンダンジャナイ、ダイジョブ」
嘘をつくときは目を見て堂々と!
「「?!」」
「サラヲイシャニミセル、クスリカウ」
「「喋った?!」」
「マーゴ、ココノコトオシエテ」
この孤児院について教えて貰った。
どうやらここの資金元は我が家だった。
少しずつ予算が減り、困窮したようだ。
屋敷に帰ると金貨とポーションをどうしたか問い詰められた。
カラスが欲しがったからあげちゃった、と話し叱られた。
後日、慈善活動について調べたら横領が見つかって誉められたのでプラマイゼロです。