兄妹の会話
わ~~お
今私は蜂になって空を舞っています。
そして目の前には私が倒れています。
ドレスが汚れたでしょうが気になりません。
蜂になって空を飛ぶとは不思議な感覚です。日本人だった頃には考えられないことでしょう。
只今裏庭にて一人ギフトの練習中です。
庭で拾った芋虫の眼をじっっっと見てたら芋虫になることに成功しました。
そこで次は空飛ぶ生き物をと思い、蜂をつかまえ、蜂の身体の乗っ取りに成功しました。
本当はカラスになりたかったのですが、近づいたら逃げてしまうので仕方ありません。
今はパンくずで餌付け中です。
ふと考えます。 この状態で死んだらどうなるのでしょう? クレールの身体に戻る?それとも死ぬ? 抜け柄の身体は餓死するまで生き続ける?
そこに私が迷いこんだとか?あるいは別の生き物に憑依したまま生きることはできるのでしょうか。 ………。試す気にもなれないし、考えても無駄そうなのでろそろ自分の身体に戻ります。
起きあがりハンカチで土を落としていると。
誰かが近づいてきます。
「やあクレールお散歩かい?」
「はい、ごきげんようお兄様、お兄様もお散歩ですか?」
お兄様でした。私を探してたのでしょう。トリスタン ヴィルゴ 10歳 銀髪紫眼の美少年だ。妹に何か違和感を感じてるようです。子供は鋭い。
「ああ、一緒してもいいかい?」
「もちろんですわ」
「ドレスが汚れているね。転んだのかい?」
「はい。ボーッとしてて」
白々とした会話を10歳児としていることにちょっとストレスを感じてしまいます。
「お兄様、私に何か言いたいことがあるのでは?」
聞いちゃいます。
「え・・・・その・・・・・・クレールはなんだか変わったね」
「…」
「記憶喪失になる前と別人みたいだ。大人みたいな話し方をするし、よく一人でいる」
「・・・以前の私は覚えてませんが、私は私ですわ」
眼をみて堂々と嘘をつく。以前の記憶はない実際別人だ。
「うん、ごめん、変なこと言って」
困ったように首をかしげる姿に罪悪感を感じる。
「変わったとして変わったわたしは嫌いですか?」
「そんなことはないよ!」
良かったです。嫌われるのは悲しいです。
「あの…良かったら以前の私のこと聞かせてもらえませんか?」
お兄様の腕にくっついて、あざとく上目遣いに聞いてみる。
「かまわないよ」
お兄様は少し驚いたのち蕩けそうな笑顔で《私》の頭を撫でてくれた。