第1話:創造神アイン
ーーー青春。
それは俺にとって無縁な存在。
いつの間にか創造神としての自我を持っていた俺は、そんな青春時代など過ごすことなく成長した。
いや、俺は本当に成長したのか?
自分が何歳なのか考えるのを辞めてから、もう何年経ったのかわからない。途中までは自分の年齢を数えていたものの、何の変化も無いまま100年を過ぎた辺りから馬鹿らしくなって数えるのを諦めた。
もしかすると何万年と過ごしてきたのかもしれないし、実は数百年しか経っていないのかもしれない。既に俺は時間という概念を失っている。
それでもめげずに生きてこれたのは、俺にも「夢」があったからだ。
俺は毎日下界にいる人間や獣人達が通っている学園の様子を眺めていた。どれだけ暇人(暇神?)なんだ、と思うかもしれない。
そう、俺は暇なのだ。
だから俺は毎日学園の様子を眺めてはいつも羨ましく思っていた。彼らは学園に通って色々なことを学ぶ。そして沢山の人達と交流していき……成長していく。
俺にはほぼ友達がいない。ほぼ、だ。別にいない訳ではないが、彼らのように青春の1ページなんてものは無い。その代わり俺にはいつしか夢ができた。
「いつか必ず人間達と一緒に学園で青春する。」と。
毎日学園を眺め、ずっと夢を抱き続けてきたからこそ、気の遠くなるような長い日々でも諦めずに過ごしてこれたのかもしれない。
目的の無いダラダラとした日々を延々と過ごしていた俺だったが、ついに今日、俺の長年の夢は叶ったのである。
それは本当に唐突だった。
☆
ある世界を管理する世界神がミスをしたせいで、その世界に魔物が急増してしまった。このままいけば、その世界はあと1000年足らずで滅びてしまうそうだ。
これはなかなか重大なミスだ。世界が滅びてしまったら、他の世界も連動して崩壊してしまう可能性がある。
もし気づくのが遅くそのまま世界が滅びていたなら大変なことになっていた。新たな世界を作ることは簡単ではないからな。
恐らくその世界神が仕事をサボった結果ーーーそのような状態に陥ってしまったのだろう。
その世界神には相応の罰を与えるとして、まずは世界が滅びないように元の状態に戻す必要がある。その為には下級神が人間に変装し、下界へと降りてミスを修正しなければならない。
勿論、異世界から勇者を召喚し、加護をあげて魔物と闘ってもらうのも可能ではあるが、必ずしも勇者が神達の思い通りに動いてくれるとは限らない。
もし勇者が自分の力に溺れて悪事を働きだしたら、更に仕事が増えてしまう。勇者を強制的に働かせることも可能なのだが、俺はこの方法が嫌いだ。だから出来るだけ早めに下級神を下界に転移させてミスを修正させる。
だがそこで俺は思い付いた。というか、何故今まで思い付かなかったのだろう。
「ミスを修正すんの、俺がやればいいんじゃね?」
創造神にしろ、下級神にしろ、どちらも神だということに変わりはないので恐らく俺にも可能……なはずだ。むしろ、俺が世界を創造したので、俺の方が楽に世界を調整できそうだ。
幸い今の俺に仕事はないので俺が行ったところで何の問題もない。まあ何かあればすぐに転移で神界に戻ってこればいいからな。
それにもし可能なら、人間として学園で青春してみたい。可能なら……というより、何がなんでも学園に通うつもりだが。
やっと、長年の夢を叶えることができそうだ。後は他の神に説得するだけだ。説得とはいっても俺の決めたことなら誰も止めないだろう。
別に俺がいなくなったって何の問題も無い。ちょっとぐらい止めて欲しい気もするが。誰も俺のことなんて友達が全然いないボッチ野郎ぐらいにしか思われてないだろう。もし止められたら……その時はその時だ。
ただ、さすがに無断で下界に行って後でメチャクチャ怒られると面倒臭いので、一応会議を開くか。