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とある見習い魔術師の受難  作者: オレオレオ
第1章 全ての受難の始まりのようなもの
3/21

ことの始まり 転 前

  「これは酷いな」

 カインは改めて部屋を見回してげんなりとしていた。数分前までは綺麗に整頓されていた部屋は掃除をする以前以下の悲惨な有様になっていた。棚の薬品はほとんどが落ちて割れており、紙や道具も散乱して酷い有様だった。


「本当に申し訳ない」


 顔を青くして謝っているのは人の姿になったフーデルクであった。エメラルドグリーンの長髪に整った顔立ち、誰が見てもイケメンと答えるような男性の姿になっている。


「なんとなく結界にぶつかった時から嫌な予感はしていたが、まさかここまでとは。弁償させてほしい」


「壊れてしまったものは仕方がない、気にするな。だが、依頼の報酬は色をつけてくれよ!」


「ああ、わかった」


 苦しそうな表情で返事をするフーデルクに対し、ニヤニヤと笑うモーリス。カインはそんな二人に気にせず自分が気絶した辺りの場所に向かう。


「ダメだ、ここら辺の薬品は全部割れてる....」


 肩を落として落ち込むカイン。そんなカインを見て、モーリスとフーデルクも廃棄処分の物とそうでないものの仕分けを始める。


「ふぅ、大体こんなもんじゃろ」

 

「結局、残りのポーション全部割れてましたね......」


 カインは落ち込んだ様子で、紅茶をモーリスに手渡す。モーリスは近くのイスに腰掛け、紅茶を啜りながら カインに言う。


「まぁそう落ち込むな、幸い材料は無事じゃから作ればよかろう。五日もあれば出来るからそれまでの我慢じゃ」


「五日もこの姿で過ごすんですか、まあ仕方がないか」


 カインは諦めた様子でイスに腰掛ける。

 フーデルクはそんなカインを見て、申し訳なさそうな様子で、モーリスに尋ねた。


「もう少し早くならないか、私のせいではあるのだが、五日も待たされては死ぬ者も出るかも知れん」


 カインはフーデルクの依頼内容を片付けの合間に聞かされていた。今の言葉からも分かるが、龍帝自らここに依頼しに来たという事実が相当切迫した状況だという事が察せられる。

 モーリスもそのことを分かってか、何かを考えるように下を向く。


「三日、いや二日徹夜すればなんとか....]


「「それは本当(ですか)!!」」


 モーリスの言葉にカインとフーデルクが食いつくように反応する。モーリスはそんな二人の反応に引き気味に答える。


「で、出来なくはないが、長旅の前に二徹はちょっと....」


「問題ない、私に乗って行けば二、三日で着く!」


 フーデルクの言葉に失言だったと悟るモーリスは勢いに押され渋々といった様子で了承する。尚、カインも徹夜明けで乗り物ーましてはドラゴンの高速飛翔では師匠がグロッキーになる事は分かっているが、早く男の姿に戻れることもあって何も言わない。

 こうしてこれからの予定が決まり、カインは家帰ることに決め、席を立った。その時、ある事実に気づく。


「あのー、ここ村のはずれにあるとはいえ、結界の中でしたよね?」


 カインがそう呟くと、モーリスがどうしたといった様子で返答する。


「当然じゃろ、この村の結界は儂が作ったんじゃから」


「つまり、この家がこの惨状なら村の方も....」


 カインの言った事を理解したフーデルクはしまった!というような顔で立ち上がる。

 その後、三人は村の人達に説明と謝罪をしに回った。



「疲れたぁ」


 カインは自室のベットに倒れこんだ。村の人たちに謝った後、自宅に戻るとまたそこからが大変だった。弟達からは誰ですかと言われ、説明し終わると今度は両親に自分の彼女だと勘違いされてしまった。

 そこからなんとか事情を説明し今に至るのだった。ベットに横になり一気に疲れが出て、カインはうとうとし始める。もうこのまま寝てしまおうかと思った矢先ドアをノックする音が聞こえ仕方なく体を起こしドアを開けると目の前には母親がいた。

 

「ご飯が出来たから呼びに来たのよ」


「ごめん母さん、今日は疲れたからも寝るよ。ご飯はいいや」


 そう言ってカインがベットの方へ戻ろうとすると母がまた呼び止める。

 

「貴方、湯浴みはまだよね、寝る前に行ってらっしゃい。」


「ゔ!いいよ、一日くらい平気だよ」

 

 この村では公衆浴場が存在する。普通村ではあり得ない設備だが、流行り病の時、再発防止と日々の癒しとしてモーリスが作ったのだ。お湯などはモーリスの作った魔道具で生み出し、管理は村で共同して行っている。それ以来、村の者は一日の終わりにこの風呂に通うのが日課となっているのだ。

 

「ダメよ! 今の貴方は女の子なんだから綺麗にしないと!」


「僕は男だ!」


「今は女の子でしょ! この時間なら人は殆どいないし大丈夫よ!」


「い・や・だ!」


 そう言ってドアを閉めようとすると、母も負けじと取っ手を引っ張る。普段は自分の方が力が強いはずなのに何故か引っ張られてしまう状況にカインは驚く。


「何恥ずかしがってるのよ!自分の身体でしょう!そんなに嫌なら母さんが洗ってあげるから手を離しなさい!!」


「別に恥ずかしがってないし、この歳で母親に洗われるとかどんな罰ゲームですか!!」


「失礼な!私のテク見せあげるから大人しく降参しなさい!!」


「そんなテク見たくねぇよ!!!!」


 そんな一悶着の末、母親の馬鹿力?に結局カインが負け、十五歳にして、母親に全身をくまなく磨かれるのだった。


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