入学初日の受難 中
入学前の受難 後を大幅に編集しました。口調とかかなりおかしかったので。
あと、アグリットのオリジナル魔術のとこ、やめて干渉系の上級魔法って設定に変更しました。
色々と変更してしまって申し訳ございません、この文章読んでもよく分からなかった方はもう一度読み直すことをお勧めします。
アイン達は放課後、第二訓練所に向かっていた。緊張しながら四人は歩く中、レイスはアインだけに聞こえるような声で話しかける。
(なんで決闘を受けたんですか?私が提案したとはいえ、断っても良かったのに)
(あの時言ってた事もそうだけど、これから貴族と決闘する時の強さの目安にしたくてさ)
(確かにそれは必要かもですが、リーラさんは特待生の中でも上位、負けたらどうするんですか)
(最悪負けても良いかなって、男になったらどちらにせよ、特待生の味方になるんだし)
(アインさんがそれで良いのなら、私からは特にありません)
「ちょっと何コソコソ話してるのかな?」
「勝算はあるのかって話ですよ、ね?アインさん」
「うん、相手は特待生派の女子リーダーだからね。何か弱点とか知ってるかな?」
アインとレイスはカローナをうまく誤魔化しながら話を逸らす。
「弱点ではないですが、彼女は火属性の適性が強いと聞いた事がありますわ」
「ということは水属性の魔術で攻めたほうが良さそうですね」
「ところで、アインは何の属性が一番適性が強いの?」
「私、実はどの魔術も適性が高くないんです」
「それ本当に大丈夫ですの?今からでも私が代わりに…」
「大丈夫だから!落ち着いて!!」
アインは慌てるオリビアを宥める。魔術を扱う者には必ず火、水、風、地、雷の基本属性である五大属性の内のどれかに適性がある。適性がある属性ならば、修練を重ねれば上級、極めると殲滅系魔術まで扱える。
だが、アインにはどの属性も適性が高くなかった。モーリスのもとで修行しても、中級までしか使えるようにならなかった。
三人が適性がない事を知って不安そうな顔をしてこちらを見てくるが、アインはそれほど慌ててはいなかった。モーリスから教わった奥の手と適性のない事をカバーするための策、そして何よりそれを覚えるために費やした五年間の修行がアインの自信になっていた。
そうこうしていると、第二訓練所に着いた。四人は中に入ると、そこにはリーラともう一人の男子生徒がいた。
「来たわね。紹介するわ、彼は特待生派閥の男子リーダー兼まとめ役のケインよ」
「よろしくアインさん、そちらの中立派の貴族様も。この模擬戦の審判をさせてもらう」
「よろしくお願いします」
アインは彼の言い回しに嫌味を感じた。短く切りそろえた灰色の髪に銀縁の眼鏡をかけ、眉間には大きなシワを作っているケインをアインはレイスよりも目つきが悪いなぁと思っていると、そのレイスから彼の説明を受ける。
「彼は学院十魔杖の第九杖です。実力はトップクラスですが、貴族に対して嫌いで有名なんです」
「....学院十魔杖って前も聞いたけど何なの?」
レイスは知らないのかとガックリと肩を落とす。その代わりにカローナが説明する。
「学院十魔杖っていうのは本物の十魔杖にちなんで学院のトップ十人を指す言葉だよ」
「なるほど、カローナありがとう」
「どういたしまして!」
彼が眉間にしわを寄せている理由が分かり、そんな人物が派閥争いに関わっているのかと、この問題の根強さをアインは実感した。
「まずこれを渡すわね」
アインはリーラから腕輪を渡される。腕輪には白い宝石が付けられていた。
「これは結界を発生させる魔道具よ、こうやって魔力を流すと身体に纏うように結界が展開されるの」
リーラの言葉と同時にケインが腕輪を嵌めて「展開せよ」と唱えて魔力を流すと、ケインの身体に結界が薄く光を帯びながら展開される。
「この結界はダメージを肩代わりしてくれる魔道具なのよ、解除の時はこうね」
ケインが「解除せよ」と唱えると、結界がケインの身体から消える。リーラはそれを確認すると、今度はルールの説明を始める。
「ルールは先に結界を壊されるか、魔力が切れるか、戦闘不能状態になった方の負け。結界は一定数魔術を受けると消えるから。あと、結界展開時は常に魔力を消費し続けるから気をつけてね。最後に杖だけど、これは模擬戦では原則学院で支給されたものを使う事になっているわ。説明は以上だけど、何か質問はある?」
「....じゃあ、このギャラリーはなんですか?」
「それは、私も知らないわよ。気付いたら話が広まってたみたい」
「いや、教室であんだけ騒がしくすれば皆んな気になるでしょ」
カローナのツッコミにリーラとオリビアはゔっと胸を抑える。
「ごめんなさいアイン」
「私もゴメン....」
謝る二人だったが、それもそのはずで、訓練所には多くの見物人が訪れていた。訓練所は決闘などで利用されることもあり、少し小さな闘技場のような造りをしており、観客席には特待生だけでなく貴族の姿も見える。アインはこの状況から少し焦りを感じた。多くの人に戦うところを見られると、カインとして戦う時に勘づかれる可能性が出てくるからだ。なるべく短い時間で手の内を明かさない様にしなければアインは思う。
「過ぎたことは仕方ないだろう、それよりそろそろ始めないか?」
溜息をつきながら言うケインの言葉にアインはそうですねと賛同する。リーラもそうねと答え、決闘に移ることとなった。
リーラとアインは中央に行き、杖を持って向かい合う。既に他の者は観客席に移っており、二人のことを応援している。
「アインさん、ハンデは上級魔術禁止と三分間私は攻撃しないって事でどうかしら?」
「それでお願いします」
アインは流石に貰い過ぎかと思ったが、早めに決着をつけたいことから素直に了承する。
「準備はいいか? それでは始めっ!」
「展開せよ!」
「帯電せよ!」「滾れ!」「突風よ!」
開始の合図でリーラは魔道具を発動する。それと同時にアインは身体に電気を帯び、身体強化の魔術を使い、そして後方に突風を起こし、その勢いでリーラに突っ込む。
急に高速で突っ込んでくるアインにリーラはギョッとし、アインの行動が予想外すぎて固まってしまう。
その隙にアインはリーラの懐に潜り込み、魔術を発動させる。
「ちょっ、まっt....!」
「突風よ!」
アインはリーラの体に杖を突き立て魔術を発動する。リーラの体は急に起きた突風に吹き飛ばされ壁に突撃する。そのまま地面に倒れ込み、動かなくなる。
訓練所はしばしの沈黙が流れる。アインは何故か静まり返ったこの状況に、何かおかしいところがあったかと首をかしげる。
「.....勝者、アイン」
ケインは信じられないといった表情でなんとか事実を述べる。それを聞いた者たちが次々と我に帰るようにザワザワと騒ぎ始める。
アインはこの周囲の雰囲気に何かやってしまったのかと内心ビビりながらリーラの容態を確かめる。
ダメージを肩代わりする魔道具と聞いて、かなり魔力を込めてしまったが、突風の勢い自体は消される事がなかったせいか、壁にあった衝撃で気絶してるようだった。リーラを纏っていた結界は本人が気絶してしまったせいか、既に消えている。アインはとりあえずリーラの容態に一安心しながら、もう一度周りの状況を確認しようとすると、レイス達が観客席から降りて自分の所に向かってくることに気づく。
「「「アイン(さん)、なんな(の)(んですの)(んですか)アレは!」」」
三人が一斉に詰め寄ってきてアインは思わず後ずさりしながら答える。
「あれは突風の魔術だけど...」
「そっちじゃないですわ!その前の開始直後の魔術ですわ!貴方、基礎魔術の適性がないって言ってましたがあれは雷属性の上級魔術の雷化じゃありませんか!?」
今度はオリビアが代表してアインに詰め寄るが、アインはイマイチ状況を理解していないのかキョトンとした様子で答える。
「雷化?違うよ、アレは初級魔法の電気ショックの魔術の応用で、身体に電気を帯びて細胞を活性化させて、身体強化魔術でブーストして突風の魔術で勢いをつけただけで....」
アインの説明に誰もがポカンとする。そしてレイスがなんとか胸に手を当て深呼吸してアインに向き合う。
「アインさん、貴方本気で言ってます?魔術の身体への重ね掛けはもちろん、そんな魔術の使い方するの貴方だけですよ」
「え?でも師匠は身体強化は戦闘では常識だって...」
「いや、普通の魔術師は基本戦闘でも遠距離からですし、身体強化してもあんな戦い方は普通しませんって」
アインはそういうものなのかと、よく分かっていなかった。この学院に来るまで、魔術師にはモーリスしか会ったことは無かったアインは戦闘技術に関してはモーリスの教えをそのまま常識としてトレースしていた。つまり世の中の常識をよく理解してなかったのである。
アインはもしかしなくても、これはやっちゃったなぁと早速内心後悔し始める。手の内を晒さない様に努めたら、そもそも戦い方自体がおかしかったのだ。これからどうしようと考えているとカローナからアインを更に焦らせる一言がくる。
「今師匠って言ったけど、アインには魔術師の師匠がいるの?」
アインはヤバイと心の中で叫ぶ。どう言い訳すればいいか分からず慌てふためいていると、レイスから助け舟が出る。
「アインさんは身体が弱かったせいで学院に高等科まで通えなくて、代わりに国から派遣されてきた魔術師に魔術を教わったんですよね?」
レイスにナイスフォロー!と心の中で叫ぶと、アインはそれに便乗して嘘を重ねる。
「そ、そうなんだ。身体が昔から弱くて、師匠に身体を強くしたいってお願いしたらこの魔術の運用法を教えてくれたんだよ!」
「へぇそっか〜、そんなに凄い人なら聞いた事くらいあるかも知れないね、オリビア!」
「そうですわね、そんな画期的な運用方法思いつく方なら有名な方だと思うんですが、名前はなんという方なんでしょうか?」
アインに再びピンチが訪れる。モーリスという訳にはいかないため、レイスに助け舟を求めてみるが、レイスはアインの視線から逃れるかの様に視線を逸らす。
「どうしたんですの?師匠のお名前を聞いているんですが、汗が凄いんですが大丈夫ですの!?」
オリビアに不審がられ万事休すかと思っていると、そこに予想外の人物が現れる。
「アインの師匠は私よ」
その声の先を見ると、そこには薄水色の長い髪を揺らしながら歩いて来る学院長の姿があった。
「が、学院長!来ていたのですか!」
「ええ、弟子のが戦うと聞いて仕事を抜け出してきたの」
「あ、あの学院長、アインが学院長の弟子と言うのは本当ですか?」
「ええ、本当よ。初等科から通わせたかったのだけど、身体が弱かった彼女には大変だからって理由で仕事の合間に修行をつけていたのよ。本当は弟子だということは隠したかったんだけど、こんなに目立ったんじゃしょうがないわ」
そう言って、アグリットはアインの方を見てウインクをする。アインはそれを見て、アグリットが入学前に言っていたことを思い出す。一応、形式上はアグリットの弟子となっていた事にアインは今更ながら気づくと同時に心の底からアグリットに感謝する。
「そうなんだ、師匠、学院長からも黙って欲しいって言われてたから言いにくかったんだよ」
「そうでしたの、それなのに私ったらごめんなさい」
「僕からもゴメンね。つい興味が湧いちゃって」
「気にしなくて良いよ、そのくらい!」
謝る二人にに凄く申し分けなさを感じるアインだった。
「その子が学院長の弟子、それは驚きですね」
アグリットのさらに背後から聞こえる声に今度は誰だとアインは見る。
そこには、光り輝く様な金髪と学院長と同じような雰囲気を纏わせる美少女、学院第一杖、メルフィー=エルドリエの姿があった。
「また会ったわね、アインさん」
メルフィーはアインに向けて輝かしい笑顔を向けるのだった。




