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とある見習い魔術師の受難  作者: オレオレオ
第3章 入学後によくあるテンプレのようなもの
12/21

入学初日の受難 前

「起きて下さいアインさん」


 アインはレイスの声で目を覚ます。目をこすりながらアインは部屋の時計を見つめる。


「今日も少し早くない?」

 アインはそう言ってレイスを見る。レイスは寝間着のアインと違ってしっかりと制服に着替えていた。


「何言ってるんですか、女子は身嗜みを整えるのに時間がかかるんですよ。このくらいが普通です、昨日は忙しかったから見逃してましたが、今日はちゃんとしてもらいますから」


「うわー、というか何故アイン何ですか?」


「カインとアインで普段から使い分けないとボロが出るかもしれませんので、だから女の姿の時はアインさんと呼びます。貴方も一人称に気をつけないと大変なことになりますよ」


「前向きに善処します」


 アインはメンドくさそうな表情でベットから降り、着替え始める。そんなアインをレイスは何かメモをしながら観察していた。


「....何してるんですか」


「お構いなく」


「構いますよ!」


「嫌よ」


 レイスは頑なにアインの体を観察するのをやめない。アインは仕方ないといったた様子でレイスに向かって真剣な表情をする。



「レイス、取引をしよう。僕の条件は今後着替え中に僕の身体を観察しないこと」


「...私のメリットは?


「性転換ポーションの材料を教える」


「のった!」


 アインはふぅと息を吐き安心する。これで毎朝着替えのたびに観察されずに済むのだ、アインは念のために持ってきたモーリスの手紙に書かれた材料の内部分を切って手渡す。レイスはそれを見終えると、アインを怪訝な表情で睨む。切れ目のレイスが睨むとやっぱり怖いなとアインは思いながら、どうしたの?とレイスに尋ねる。


「これ本当? 嘘ついてませんか?」


「本当だよ、ってなんでそんなに睨むの!怖いよ!!」


「だっておかしいじゃないですか!この材料の殆どは貴重な素材だし、幻の素材まであるし。挙げ句の果てに風龍の鱗ってなんですか! 流石にモーリス様と言えどこれはおかしいでしょ!」


「あ、そう言えばそうだった。でも学院長に僕の事情は教えてるって。あれ?でも昨日竜の群れとどうたらこうたらって.....」


 アインは一人でブツブツと呟きながら首をかしげる。レイスは急にブツブツと呟くアインを見て、どうしたといった様子で頭にクエスチョンマークを浮かべる。

 

「よく分かりませんが、私は事故で性転換ポーションを被ってしまい、女として生活しなくならなければならなくなった、と聞いているんですが違うんですか?」


 アインはレイスが正確に内容を理解してないことを理解した。アインは少しその場で悩んだが、レイスに一から事情を話すことにした。これから一緒に生活する上で隠し事は極力減らしたいと思ったからである。


「レイス実はね......」



 *



 アインが一から説明し終えると、レイスは難しい顔をしながらしばしの間俯く。


「はぁ、本当なんですね」


「信じてくれた?」


「嘘をつく理由がないですし、話に矛盾がありませんでしたから」


 アインはほっと息を吐く、自分の口から話していると段々とこんな話信じてもらえないのでは?という疑念が湧いていたのだ。アインはレイスが物分かりが良くてよかったと安心する。

 それからアインは昨日と同じ様に身だしなみを整えた後、椅子に座って何かを考えているレイスに声をかける。


「準備出来たよ、今日は朝食は食堂で摂るの?」


「そうですね、今日はアインさんも登校しますし、ここのご飯って結構美味しいらしいですよ」


  「へえ、楽しみだね」



 アインはレイスの言葉に期待しながらドアに手をかけ出ようとする。が、後ろから肩に手を置かれ振り向くと、ニッコリと笑っているレイスがいた。


「さっきの話でごまかそうとしてませんか? 身嗜み、私がやってあげますからちゃんと整えてから行きましょうね」


 笑顔のはずのレイスがアインには何故かとても怖く見えた。



 *



 アインはレイスに身嗜みを整えられやっと部屋を出ようとする。アインは昨日よりも綺麗に髪が整えられ、少し艶が出ている。前髪はレイスから渡されたヘアピンで前髪を分け、明るい印象を受ける様になっていた。カインがセットした時よりも格段と良くなっていることから、料理の件もそうだがレイスの女子力の高さがうかがえた。


 そうしてやっと、部屋から出ると、ちょうど目の前の部屋からオリビアとカローナも出てきた。


「おはようアイン!それとレイスも」


「おはよう二人とも、2人も朝食?」


「そうですわ、よろしかったら一緒にどうですか?」


「そうですね、その方がアインさんにとっても良さそうですし」


 アインはどういうことかと首をかしげると、カローナは苦笑いをしながら説明してくる。


「昨日言ったでしょ、派閥の件、中立派はどちらにも属してないから一人だと色々大変なんだよ、そして派閥争いは学院の中だけじゃない」



 *



 アインが食堂を訪れるとおかしな光景が広がっていた。右側にはおそらく平民出身の生徒が和気あいあいとして食事を取っている中、左側はおそらく貴族であろう生徒達が優雅に朝食を楽しんでいた。

 アインは明らかに分けられているグループの間に見えない絶対零度の氷壁を感じる。正直、アインは女子寮に淡い憧れを抱いていた。都会の、田舎とは異なった華やかな女子生徒達の花園、そんなイメージが崩れる音がした。目の前に移る光景は一見、別々のグループで楽しそうに食事を摂っている様に見えるが、その実、常に互いを牽制し合いながら火花を散らすアインの幻想が打ち砕かれる光景が広がっている。右側にいる生徒で怯えているのはおそらくアインと同じ高等科からの特待生だろう。


「期待してたのと違ってガッカリしました?」


「うん、がっかr.. 驚いたよ」


「今がっかりって言おうとしませんでした?」


「イエ、マッタク」


 じっとアインを見つめるレイスだが直ぐにそれをやめ、アインに忠告する。


「夢を見るのは自由ですけど、後で後悔しても知りませんよ」


「....了解しました」


「二人とも何をやっているんですの? こっちですわよ」


 オリビアの呼びかけで慌てて二人はトレーを持って食事を選ぶ、学食はバイキング形式だった。

 好きなメニューを選び、オリビアたちが座っているところに向かうと、両側から鋭い視線が集まってくるのを感じた。


「なんでここなんですか?」


「中立派だから場所も中立なんだよ」


 カローナの言う通り、四人は両者の間、即ち絶対零度の中心にいた。両者からの視線が飛び交う中、アインを除いて三人は淡々と食事を始める。


「どうしたのアイン?早く食べないと遅刻するよ?」


「よくこの状況で食べられますね....」


「慣れですわ、慣れ。一週間もしない内に何も気にしなくなりますわ。ところでアインは昨日よりもなんだか、可愛らしいですわね」

 

 平然と会話を始めるオリビアにつられ、アインも未だ周囲の状況に気後れしながら返答する。


「えっと、レイスさんがやってくれて」


「さすがレイス!昨日よりも格段に可愛くなってるね」


 レイスは少し照れながら、カローナに返答する。


「素材が良かったからです、このくらいは普通」


「確かに、アインは凄く可愛いらしいですわ、このきめ細やかな肌、一体何をしたらこうなることやら」


 オリビアはアインの顔を覗き込む。アインは急に目の前に女子の顔がきたことに恥ずかしくなり、顔を赤らめる。


「特に何もしてないですよ」


「嘘つかないでくださいまし! 何もしないでそんな肌をキープ出来るはずがありませんもの!」


「...もしやあの中に肌に関係する材料が」


「朝から賑やかだねー! あははは!」


 アインは朝からオリビアの追求と両側からの視線に耐えながら騒がしい食事をするのだった。なお、期待していた食事の味はよく分からなかった。



 *



 アインは学院に来て、時刻はお昼を回っていた。三人が常に一緒にいたおかげで慣れない事もあったが、不自由なく午前中を過ごせた。そして昼休みになった時、教室に上級生数人が入って来て、真ん中最前列にいるアインを見つけると近づいてくる。


「貴方がアインさんよね、今年から特待生枠で入った」


「はいそうですけど、先輩たちは一体」


「私は特待生派の女子リーダーをしているリーラよ、貴方を勧誘しにきたの!」


 茶髪でショートヘアの長身の上級生は笑顔でそう言う。アインはついにきたか!と思うが、逆にチャンスだと考え派閥に加わる意思が無いことを伝える」


「私は派閥には入りません。彼女達と同じ中立派です」


「確かに彼女達と行動すれば貴族連中には狙われないかもしれないけど、常に一緒というわけにはいかないでしょ?常に誰かの目がある後ろ盾が必要なんじゃなくて?」


「そうなっても自分で対処するから問題ありません」


「相当腕に自信があるようね、でも貴方、身体が弱くて高等科から入ったと聞いたわよ。貴族連中は魔術では私たちに敵わないからって卑怯な手ばかり使うの、本当に平気かしら?」


 アインは問題ありませんと答えようとするが、その前にオリビアが横から口を出す。


「貴方良い加減にしたらどう? アインはどう考えても入る意思は無いじゃないですの」


「それは貴方達がそういう風に誘導したからでしょ、中立派にいるなら別に構わないけど、内の貴重な戦力増強の邪魔しないでくれるかな? 第一、私は貴方じゃなくてアインさんと話をしているの」


 リーラはオリビアに笑顔で答えつつ、目が笑っていなかった。オリビアも笑みを浮かべてはいるが両者の間では火花が散っていた。


「あら、じゃあ貴方の言う特待生には敵わない貴族のわたしの力見せてあげましょうか?」


「貴族の割に腕は立つ様だけど上級生に勝てると本気で思っているの?」


「やってみなきゃわかりませんわよ」


 なんかヤバイことになったとアインは冷や汗を流す。どうにかしないとと焦るアインだが、オロオロとしているだけで、二人の険悪さはどんどん増していく。レイスはそれを見て、仕方なしと二人に声をかける。


「アインさんの関係ないところで二人が争ってどうなるんですか。オリビアさんも落ち着いてください、それとリーラさんも安い挑発に乗らないでください、下の者に示しがつかないのでは?」


「わたくしは安くありませんわ!」


「オリビア落ち着いて!どうどう〜」


 カローナは流石ルームメイトか、熱くなるオリビアを宥める。リーラも今日が削がれたかのように冷静さを取り戻す。


「話を戻しますが、先ほどの話、リーラさんとアインさんが決闘すればいいのでは?」


 へ?とアインは急に話を振られ、変な声を出す。


「だから、要はアインさんが貴族に遅れを取らないと証明すれば良いんですよね?だったら、リーラさんとアインさんで戦えば良いじゃないですか」


「なるほど、一理あるね。なら私が勝ったらアインさんは特待生派閥に入ってもらうよ」


「そんなの無茶苦茶ですわ!」


「ちゃんと手加減はするさ、それに手加減しても負ける様ならやっぱり後ろ盾は必要なわけだしね」


「分かりました、その勝負受けます」


「アイン! なんでですの!? そんな勝負受けなくてもよろしくてよ!」


「でも、これからもしつこい勧誘を受けるんだったらここですっぱりさせたいし、別に負けても私達は友達・・・・でしょ」


「アイン....分かりましたわ、精一杯応援いたしますわ!」


「決まりのようね、それじゃ放課後に第二訓練所に来てね、手続きはこちらで済ませておくから」


 そう言ってリーラは仲間たちと教室を出て行った。








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