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とある見習い魔術師の受難  作者: オレオレオ
第2章 入学編のようなもの
10/21

今後の学院生活への不安と保健室での受難

「矢面に立って欲しいって、どういう事ですか?」


「現在、この学院では特待生派と貴族派に分かれ対立が起きているの」


「....詳しく聞かせていただけませんか?」


 カインは面倒ごとの予感を感じつつも、アグリットの真剣な表情を見て、一応これから通う学院の状況を知った方が良いと思い、話を聞くことにする。


「もともと特待生制度はね、魔術師の質を高めるためと、貴族出身の生徒達の意識改革のために導入された制度なの。平民でも素質のある子を入学させる事で、貴族以外にも優れた者がいるという事を理解させて差別意識や選民意識などを無くしていこうっていう具合にね。ただそれが上手くいかず逆効果になってしまって...」


「貴族達が平民出身者を認めなかったんですね」


「そうよ、自分達よりも実力が上なのが気に食わないみたい。あと、自分達が学費を払っているのに平民がタダで通う事が許せないというのもあるわ。貴族といっても、ピンキリまでいるからね。学費を払うのに苦労している生徒も中にはいるのよ。そんな感じで簡単に言うと、特待生に対して劣等感、強いコンプレックスを持つ様になっちゃったの。まあこのくらいの年頃なら分からなくはないけど、貴族同士で固まってあからさまに差別が目立つようになって、それに対抗するように特待生も団結しちゃって。教師達じゃ手に負えないレベルにまでなってしまってね」


「そこで僕に白羽の矢が立ったというわけですか、聞くだけですけど、具体的に何を僕にさせたいんですか?」


 カインは引き受ける気はないと言ったニュアンスで念のために質問する。アグリットはそんなカインの様子に困った顔をしながら返答する。


「私が入学式で散々煽ったおかげで貴族たちの矛先は貴方に向いたわ。学校で貴方を見つけたら決闘を挑む者が殺到するでしょうね。そこでカイン君には貴族達をボコボコにぶちのめして欲しいの!」


 は?とカインは素っ頓狂な声を上げる。急に学院長に、貴族をボコボコにしろと言われたら、そうなってしまうのも無理はない。アグリットはそんなカインの反応を無視して説明を続ける。


「教師達が手を出せないって言ったでしょ? この学院は国の管轄とはいえ、貴族達の寄付などで賄われている部分が大きいの。だから教師達が貴族の子供達に何か言うと、寄付が無くなってしまう可能性があるのよ。特待生制度を導入した事もあって、寄付が無くなる事はかなりの痛手だわ。最悪設備の縮小や特待生制度の廃止なんてことになりかねない」


 一度廃止された制度が復活することはほとんどない。ましてや、貴族たちにとって都合の悪い制度なら尚更だろう。カインも特待生として入学している以上、同じ境遇の後輩となり得る人材が入学出来ない事は避けたいと感じていた。


「つまり教師は口を出せないけど、生徒同士でなら問題ないと?」


「ええ、しかも相手から挑んでくるんだから誰からも文句はでないわ」


「でも、特待生も挑んでくるかもしれないじゃないですか?」


 会場にいる殆どの生徒がカインに襲いかかってきそうな雰囲気を出していた。流石にその生徒たちが全て貴族出身とは考え難かった。しかしアグリットはあっさりとそれを否定した。


「それは無いわね」


「何故ですか? 学院長も見たでしょう、あの胃に穴が開きそうになる光景を...」


 カインはお腹をお腹を抑えながら辛そうな表情をする。


「あれは会場の雰囲気に流されただけよ、冷静になればカイン君との戦いにメリットが無いことは分かるわ」


「僕に勝てたら、権限が増えるじゃないですか」


「あれは特待生にとっては必要ないもの。特待生は魔術を学ぶためにここに来ているのよ。授業免除なんてあってないようなものよ。それに施設の自由化は魅力的だけど、別に戦わなくても同じ特待生の君を仲間に引き入れて、貴方に頼んだ方が楽だし確実だもの」


「それは確かにそうですね、ということは実質決闘を挑んでくるのは貴族派のみになるのか。流石ですね学院長、ここまで考えているなんて」


「じゃなかったら、独断であんな権限追加するわけないでしょ」


 アグリットはそう言って笑う。カインはやはりあれは独断だったのかと一緒に驚いていた教師陣の顔を思い出す。


「そう言えば、教師の方々は僕が師匠の弟子ということ知らなかったみたいですが、なんで黙ってたんんですか?」


 カインは自分をモーリスの弟子だと紹介したときの教師陣の反応を思い出す。あれもあらかじめ知っていたなら、あそこまで取り乱すことはなかったと思う。アグリットは何故かそんなカインの質問に微妙な反応を示す。


「カイン君、私は学院のためとはいえ、君に結構ひどいことした自覚はあるけどね、人のトラウマをわざわざ思い出させるほど悪い性格はしてないわよ。第一、言ったらあなたの入学自体断られた可能性だってあったのよ?」


 アグリットの発言にカインは師匠のやらかした過去に頭を抱える。もしかすると学院にいる間、モーリスが過去に何かやらかした相手と出会うかもしれないのだ。師匠のせいで厄介ごとが増えるかもしれないことにカインは胃がキリキリする思いだった。


  「それで話は戻すけど、引き受けてくれるかしら? まあ君が断っても、もうどうしようもないのだけれどね」


 カインはほぼ諦めた様子で一応の抵抗を見せる様に反論する。


「昨日も言いましたが、僕は属性魔術が中級までしか使えません。普通に負けるかもしれませんよ」


「あら、モーリスから教わった奥の手があるんじゃなくて? 実は私モーリスから少し聞いてるのよ、たとえ、属性魔術が中級までしか使えなくてもあれを使えばこの学院でも貴方に勝てるのはそうはいないわよ」


「...はぁ、分かりました。なるべく頑張ってみます」


 カインは完全に諦めた様子で答える。それを見たアグリットはホッと息を漏らす。


「良かったわ、半分強制とはいえ直接口から承諾を得れて」


「半分ですか、殆どの間違いでは?」


「あら、言うようになったわねカイン君。もしかして猫を被っていたのかしら?」


「それはこちらのセリフですよ、こんなに腹黒だとは思いませんでした。流石<傾国の魔女>、人を誑かすのはお手の物ですね」


「まあ!失礼しちゃうわ」


 アグリットは拗ねた表情になるが、カインはそれも計算の内かと考える。カインの中でアグリットは油断ならない人物だという認識になっていた。そんな疑う様な視線にアグリットはやれやれといた様子で立ち上がる。

「ずいぶんと警戒されたものね、まあ半分は自業自得なのだけれど。それじゃ、話は終わった事だし保健室に向かいましょう。彼女待ちくたびれてそうだし」


 カインは半分以上だろと思いつつも、アグリットの言葉に頷く。保健室に行くということはこの身体を調べられるという事だ。元に戻る手がかりが見つかるかもしれないと思うと、カインは期待に胸を膨らませた。



 *



 カインはアグリット案内され保健室に着くいた。アグリットはノックもせずに扉を開けて中にいるものに声をかける。


「ロミネス、来たわよ」


 カインはアグリットの後ろに続いて保健室に入ると、カルテを見ながら椅子に座る、白衣姿の女性がいた。

 茶色でウェーブのかかった長い髪に、黒縁の眼鏡をかけている女性はカインの姿を見つけるとニヤリとし眼鏡を光らせ一瞬でカインの目の前に現れる。

 カインは急に女性が目の前に現れたことから思わずのけぞってしまう。しかし女性はカイン様子に気にする事もなく更に詰め寄る。


「君がカイン君かい!? モーリスの弟子っていう!!!」


「ロミネス、落ち着きなさい」


 アグリットはロミネスと呼ばれる女性の頭にチョップをかましながら言う。


「あいたっ! ごめんって酷いなぁ、すぐ暴力だなんて」


「軽くやっただけじゃない、痛くもなんともないでしょ」


「はいはい、ごめんねカイン君。 私はロミネス、この学院で保健医をしているものだよ!」


「師匠が言ってた僕の身体を診てくれる専門家ですよね? よろしくお願いします」


 カインはそう言って頭を下げる。そんなカインの態度を見て、ロミネスはうんうんと頷く。


「昔馴染みの頼みだ。任せてくれ!」


 カインは胸を張って答えるロミネスに笑みをこぼすと同時に、この人も見た目通りの年齢ではではないのかと思う。ロミネスの見た目はアグリットと同じ様に二十代後半だ、昔なじみといっていることから見た目通りの年齢でないことは明らかだった。


「じゃあ早速で悪いんだけど、服全部脱いで!」


「え?」


「診察するんだから当然だろう?」


「ああ、そうですよね」


 カインは少し顔を赤くしながら上半身の服を脱ぐ。下着を脱いで胸を手で隠し半裸になる。診察の為とはいえ、美人の女性二人の前で一人だけ半裸になる事に少し恥ずかしくなる。

 

「出来ました、診察お願いします」


  カインは恥じらいながらロミネスに言う。キョトンとした顔でロミネスはカインを見る。


「何言ってるの? 下も早く脱いで?」


「はい? 診察だから下は必要ないんじゃ...」


「いやいや、それは普通の診察でしょ? 貴方の場合は原因がよく分からないんだから、身体の隅々まで女体化しているのか確認しないと」


 顔をひきつらせるカインに笑顔でロミネスは答える。だがカインは気づく。ロミネスがカインを見る目に、何か診察とは別の意思を潜ませている事に。


「大丈夫よ、安心して変な事はしないから! あそこにいるオカマが嫌なら出て行かせるし、私は正真正銘女だし何にも問題ないわ!さあ!!!!」

 

「いやいやいや!絶対私的な理由含んでるでしょ!嫌ですよ絶対!!!」

 

 ふふふと嫌な笑みを浮かべながらジリジリと近づいてくるロミネスにカインはただならぬ危機を感じ後ずさる。そんな二人を見てアグリットは溜息を漏らす。


「誰がオカマよ! だから言ったでしょうカイン君、彼女変人だって」


「なんで師匠の知り合いは変な人しかいないんですか!」


「それ私も含まれてるわよね、まあいいわ、ロミネスは変人だけど腕は確かだから諦めなさい。元に戻りたかったら」


「ちょっと助けてくださいよ!」


「ロミネス、程々にしてあげてね」


 アグリットはそう言って部屋を出る。これから起こることを見ないために。


「安心して、私、実験動物(モルモット)は大事に扱う人だから!!!」


「今完全に実験動物(モルモット)って言った! きゃあああーーーー!!!」


 カインは抵抗虚しく服を脱がされ、ベットに担ぎ込まれる。

 その日、保健室から謎の悲鳴と喘ぎ声が聞こえるのだったが、その真相を知る者は誰もいなかった。







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