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とある見習い魔術師の受難  作者: オレオレオ
第1章 全ての受難の始まりのようなもの
1/21

ことの始まり 起

初投稿です。色々と拙い点が多くあると思いますが、よろしくお願いします

 どうしてこうなったのだろう....。少年が居るのは王都の魔術師養成学校、ルートヴィッヒ魔術学院の高等科の女子寮の一室だった。普段は男子禁制で過去一度として男子生徒は勿論、侵入者を入れたことのないほどのまさに鉄壁の守りを持つ要塞だ。

 少年はそんな要塞の中で()の自分がバレたらどうなってしまうのだろうと身震いをして頭を抱えていた。そんな中、部屋の入り口で立っていると背後から声を掛けられた。


「早くどいてよ、入れないでしょ」


 声の主は少女だった。歳は十五、六歳くらいで薄い水色の髪を後ろで一つにまとめており、非常に整った顔立ちをしていた。しかしながら、切れ目と無愛想な雰囲気から近づきがたい印象を覚える。


「ご、ごめん」


「ふむ、私が下を使うからカイン、あなたは上を使って」


 そう言って少女は二段ベッドの下の方に腰かけた。カインと呼ばれた少年は少女の方を見て恐る恐る言葉を発する。


「レイスさん、本当に僕なんかと一緒でよかったの?いくら学園長からの頼みでも断っても良かったのに」


「あなたが男子寮で普通に生活できると思っているの?確実に襲われるわよ。女子寮に入るにしても、他の女子と一緒の部屋って訳にもいかないでしょう。それにこっちもメリットがあるんだから気にしなくていいわよ」


 そう言われてしまい、カインは口を噤んでしまう。そこからひたすらお互い無言で荷解きをする流れとなった。カインは気まずさを覚えながら内心溜息を吐く。カインは口下手ではないが、レイスが非常に整った顔立ちなのと、とこれからこの部屋で三年間も暮らすかもしれないことを考えるとどうしても気後れしてしまうのだ。そんな状況に頭を抱えつつ、備え付けの机の上に二種類の制服を見つけた。それを見て、カインは大きく溜息を吐くのであった。



 遡ること一ヶ月前.......

 カインは師匠の部屋を掃除していた。部屋の中は怪しい薬品や研究をまとめた紙などが散乱して酷い有様だった。ただの村の子であるカインの魔術の才能を見抜き、弟子にしてくれたことにカインは感謝しているが、せっかく綺麗にした部屋をたった数日で元どおりにしてしまうことに呆れていた。カインが部屋をあらかた掃除し終えるとチリンとベルが鳴り、部屋を荒らした張本人が帰ってきた。その者は勢いよくドアを開けカインに声を掛ける。


「ただいまカイン!だいぶ綺麗になったな!!」


「またこんなに荒らして、僕はあと一ヶ月で王都に行っちゃうんですよ?僕が居なくなった後どうするんですか?」


「いやぁつい集中してしまってな、しかしそうか、もうそろそろか、初めて出会った時はこんなに小さかったのに早いもんだなぁ」


「そういう師匠は全然変わりませんね」


 カインの師匠、モーリス=リトルニアの見た目は十二、三歳の少女だった。紅髪をサイドテールにして白衣を常に着ている。ただカインの師匠ということだけあって見た目通りの年齢ではない。実際は三百歳を超える老練な魔術師である。しかし、そんな見た目とフレンドリーさからあまり威厳が感じられず、それが逆に村の人達から受け入れられていた。


「ふふん!そのおかげで今日も少しおまけしてもらったぞ!」


「またですか、毎度申し訳ないですね」


 モーリス曰く、色々と都合がいいからこの姿にしているらしいが、正直こういう時くらいしか役に立っていないとカインは思う。

 五年前にこの村に移り住んできたモーリスのことを実はカインはよく知らない。齢三百歳の魔術師が移り住んできたのだから何か理由があるのは当然だろう。初めは誰もが怪しみ、警戒していたが、今ではそんな者は一人もいない。四年前に流行り病に侵された村に無償で薬を提供してくれた事があったのだ。それから直ぐにモーリスは村の人達から受け入れられていった。そんなこともあって村民はモーリスに非常に甘い。たまに頂く分にはいいが、毎度貰っているのでカインは本人の代わりに申し訳なく感じるのだった。


「話を戻しますが僕がいなくなった後どうするんです?師匠、絶対また散らかすでしょ」


「ははは、その時はリースにでも頼むさ」


「リースでは危険です!何かあったら大変じゃないですか!!」


「お前も大概過保護だな、メルトと一緒なら大丈夫だろ」


「まぁそれなら」


 メルトとリースはカインの双子の弟と妹である。メルトは黒髪短髪で顔立ちはカインを幼くした感じで、リースは母親譲りの茶色い癖っ毛でボブカットの明るい少女だ。リース一人では危険で心配だが、メルトは十一歳ながら落ち着いていて、大人びた性格だ、二人一緒ならおそらく大丈夫であろうとカインが考えているとモーリスが棚の薬品に手をかけながら追い打ちをかけるように言う。


「だいたい、お前が儂の弟子になったのは十歳の頃じゃろ。あの頃のお前よりも今の2人は年上じゃ。安心せい、リースも同年代と比べたら大人びている方じゃよ」


「二人の前で危険な実験しないでくださいね、メルトは来年から騎士育成学校に通うんですから、怪我でもしたら大変なんです」


「分かっとる、危険なものは儂が片付けるようにするよ」


「お願いしますよ、この前も毒ガスが発生して大変だったんですから」


「いやぁすまんすまん!でも対処の速さは中々だったぞ腕を上げたな!」


「僕としては魔術の腕をもっと上げたかったですけどね...」


 カインが弟子になって五年、そういうトラブルは日常茶飯事だったのですっかりそういった対処にも慣れてしまっていた。それから暫くたわいもない会話を続けていると空から膨大な魔力反応を感じた。


「この魔力量、ドラゴンか!」


「ドラゴン!!なんでそんなものがこの村に!!!」


 ドラゴンといえば魔物の中でも最上位のモンスターだ。普通なら騎士や魔術師が数十人集まっても敵わない。稀に たった数人で倒してしまう英雄と呼ばれる者達もいるのだが普通の村にそのような人物はいるはずもない。


「師匠、どうしましょう!」


「落ち着け、この魔力の波長は覚えがある。おそらく知り合いじゃろう」


「は?知り合い!?ドラゴンの?」


「うむ、そうじゃ。村の者が騒ぐ前に話をつけてくる。お前はここで待っておれ」


 モーリスはそう言って、専用の杖とローブを身につけ外へ出て行く。

 付いて行こうとカインは思ったがすぐに考えを改める。知り合いとは言っていたが相手はドラゴンだ。戦いになったら、今の自分の実力では邪魔になると分かっているからである。

 とは言え、カインはモーリスへの心配と一生に一度も見ることのないような希少な魔物が近付いていることに好奇心からやはり師匠の後を追おうとする。

 しかしその瞬間、上空から激しい衝撃が襲ってきた。ドラゴンがモーリスが村の警備のために展開していた魔物除けの結界に衝突したせいだった。棚から薬品などが落ちてきて、掃除したばかりの部屋が荒らされてゆく、カインはそのことを憂鬱に感じながら、体験した事のない衝撃波によろめいてしまう。

 その時カインの頭上に薬品の一部が落ちてきた。

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