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ペットボトル

作者: 汗本柿麻呂

自分以外の人間はうまく自分のためになるように利用してやると思っている「僕」は、表向きは文武両道、品行方正で通しているが、その内面は…

「はぁ…はぁ…はぁ…」

部屋でこっそり好きな女の子の名前を呟きながら独りの行為を済ませた。


ふと見ると、ゴキブリの幼生が1匹壁に制止していた。


見られた!


僕は瞬間的に激昂した。学校では優等生で通っていて、文武両道、品行方正、爽やかが服を着ているように振る舞っている僕の裏を見たゴキブリに対して、抑えられない怒りを覚えた。


生徒会長にして、学年1位の成績。剣道部の主将にして、インターハイ個人で全国2位の実力者。先生や保護者からも信任も厚く、人当たりの良さで生徒の中でも最も慕われている僕の一番恥ずかしいところを見られた!


殺虫剤でただ殺すだけでは飽き足らない。腹の虫が収まらない!


僕は、飲み終わって捨てたペットボトルをゴミ箱から拾うと、蓋を開けて、剣道の突きの要領で壁のゴキブリを突いた。


ゴキブリは見事にペットボトル内に入り、蓋を閉めて幽閉してやった。


じわじわとなぶり殺してやる…


本来の僕は、優しくないし、品行方正でもない。狡猾で残忍で自分の最大の利益を考えて、先生も友達も、親も妹さえも利用している。


前に流行った名前を書いた人間が死ぬというノートを持った主人公のマンガに憧れたが、無様な最後に呆れてしまった。僕ならばもっと上手くやる。出し抜かれはしない。


しかし、ゴキブリに自分の恥ずかしい行為を見られた。僕の無防備な姿をゴキブリごとき虫けらに見られた。絶対に許せない。


どうやって怒りを鎮めようか…このままペットボトル内で死ぬまで閉じ込めてやろうか?クククク…


食べさせないで餓死させようか。飲ませないで渇死させようか。ククククク…


水を注ぎ入れて溺死させる方法もあるが、すぐに死んでしまうだろう。それではつまらない。


やはり、閉じ込めておいて、観察しながらじわりじわりと…ククククク…


「さて、ご飯を食べて、風呂に入るか」


と僕は、ゴキブリを閉じ込めたペットボトルを無造作に机の引き出しに放り込むと、部屋を出ようとした。


ガチャガチャ…


「あれ?」


なぜか部屋の扉が開かない?


ガチャガチャ、ガチャガチャ…


あれ?動かない?


焦る僕の耳に、廊下から両親の声がかすかに聞こえた。


「あなた…また失敗作ね。完璧な息子を作るって難しい」

「そうだなあ。途中までは良かったんだけれど、あんな小悪党じゃ、役立たずだ」

「どうしましょうか?」

「ん?部屋から出てこなくて餓死した…でいいんじゃないか?」

「そうね」


自分の部屋に窓が無い理由が今わかった。


最後のラストの1文がホラーなわけです。利用していると思っていたら、実は利用されていた。ゴキブリを閉じ込めたと思っていたら、実は自分が閉じ込められていた。というような構造にしてみました。1000文字でまとめるためには、ざっと書いて行って、あとでちょこちょこと言葉を削ったり足したりする方法が妥当だと思っています。その表現の吟味とでも言いましょうか、その工程はちょうど短歌や俳句を作るときに通じるものがあると思わざるをえません。よく三英傑の性格の差を「ホトトギス」の五七五で比べるアレがありますが、自分が誰寄りなのかは置いておいて、自分だったら「ホトトギス」をどうするのかを考えてみました。あれこれ考えたのですが、やはり自分なら「鳴かぬなら それもよかろう ホトトギス」になるのではないかと思いました。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異様な空気は漂っていた? [気になる点] もうちょっと伏線を忍ばせるよう、展開に納得感が欲しかったかなと。これだと色々と唐突過ぎて。 [一言] 思いついた素材をつぎはぎにして作った感。
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