プロローグ
俺は何も、守れなかった…。
家族も友人も。何もかも。この世界はもうすぐ、消える。それは、俺が守れなかったせい。いや、守れなかったんじゃない。逃げて逃げて逃げて。ただ、守ろうとしなかったんだ。その結果がこれだ。この世界に残っているのは、そんな、あらゆるものから逃げた者達。だが、彼らもまた、この世界と供に消える。やり直せるならやり直したいさ。あの日、あの場所であの選択さえしなければ、こうはならなかった。
『そうかな。僕は違うと思うな。君があの時あの選択をしたのは正しかったと思うよ。それに、君は確かに彼女達、いや、あの【世界】を守ったじゃないか。』
まただ。俺が後悔している時に限ってその声がする。何回も、何回も。
『それに、君がどの選択をしたとしても、結果は同じだったよ。誰も運命には逆らえない。たとえ、それが神であろうとも。いや、一人だけいたね。運命神を殺し、その力を奪った彼女。あぁ。そーいえば、君は彼女の事が』
「黙れ。」
そうだよ。俺はあいつの事が好きだった。それは、紛れもない事実だ。そして、彼女にその責任を押し付けたのも俺だ。俺は運命から逃げた。逃げて逃げて逃げて、その結果、彼女に神殺しをさせてしまった。
『そう。君が運命から逃れたから。』
そうだ。俺の。俺のせいで。
『でも、彼女は神殺しをやり遂げた。そして、力を持った。本来なら君が持つはずの力を。君が逃げたから、彼女は勇者と呼ばれるようになった。それも事実だ。さて、もう時間になったね。』
やっと…消える…か…。
『最後に言い残すことはあるかい?』
ねぇよ。いや、あったな。一つだけ。
『【やり直したい。】かな。でも、過去には戻れな
「ふっ。ははははははは。」???急に笑ってどーしたんだい?』
「言わなくても分かってるんだろ?【俺】」
『………。』
「最後にお前の口から【やり直したい】を聞けた。心残りはねぇよ。お前は、俺だ。そして、俺も俺。なら、やり直したい気持ちは同じだったはずだ。だが、お前は反対の事ばかりしか言わねぇ。同じ俺なのに。だが、お前もやり直したいと思ってる。それは、さっきの事でわかった。なら、何も、言わなくたってわかるだろ?」
『あぁ。』
なら、後は任せるさ。この世界の俺達はこの世界と供に消える。後のことは、新しい俺次第だ。
そして、俺は消えた。
そして、新しい俺が生まれる。
それが、俺が受けた呪い。
紛い物の世界から受けた呪い。
次の俺はいつ気付くだろうか。
まぁ、次の俺は失敗はしないか。
この呪いは勇者にしか、与えられない。
そして、勇者となった俺は逃げた。
俺は勇者でわ無くなった。
呪いは彼女に。