回想
主人公たちがタイムスリップしてから開戦前までをまとめています。
間違いがあれば、ご指摘をお願いします。
俺の名前は矢野達哉。
突然だが俺は未来からタイムスリップしてきた人間だ。
俺と双子の弟の矢野和哉は中学を卒業して関東に旅行をしていたあの日。戦艦三笠を見に行った時、青い光の粒が俺たちに降って来たかと思ったら今度は黒い霧に包まれて気がついたら病院のベッドの上。
しかもただの病院じゃなかった。周りはほとんどが木製の古い病院だ。
窓の外を見ると港町が見えたが日本の古い町並みであり金剛型よりも古い戦艦河内が湾内に停泊していた。
タイムスリップでもしたのかと俺たちは混乱した。そんな時、一人の黒い軍服を着た男性が病室に入ってきた。
彼の名は大石源蔵。
帝国自衛軍海上将補と名乗った。自衛軍と聞いてますますわからなくなった俺たちだったが、大石将補の説明でなんとか理解はできた。
どうやら俺たちは1916年にタイムスリップはしてきたようだがただのタイムスリップではなく転移までもしてしまったようだ。
転移とは確定できないが説明によればこれまでにも黒い霧に飲み込まれ人は存在して漂流者と呼ばれている。
そのためか多少俺が知る歴史と異なる。
まず自衛軍。
これは日清戦争後に本土防衛を主眼に創設られた漂流者たちによる陸海軍に続く第三軍だった。
細かく分けると自衛隊と同じで陸海空と三つに別れて階級も自衛隊のものを使っている。
次に国土が史実よりも大きくなっていること。
日清戦争で台湾以外にも海南島など中国南部沿岸の五つの省を手に入れている。さらに日露戦争では樺太の他に、ハバロフスクやウラジオストクといった沿海州を手に入れている。
など、これらすべて漂流者が関係しているらしい。
もう日本が変わっていることを理解しつつ、なんとかこの世界で生きるために大石将補の案で俺たちは大石将補の家のお世話になることとなった。
そしていつまでもお世話になりっぱなしではダメなので俺たちも自衛軍に入隊。
訓練生時に鉄鬼事件が起こったが修正者たちにより終息した。その後俺と和哉は無事自衛軍人となり、俺は特務参謀として軍縮条約に参加した。
史実のように経済力を理由に日本が不利な条約を結ばせないために。
この世界ではそれなりに経済力はあり、修正者たちの置き土産によって予算にも余裕があったからだ。
この他にも他国に戦艦を建造させて浪費させて空母建造を遅らせようと考えたからだ。
この時すでに日本では八八艦隊建造を始めており長門、陸奥は完成。戦艦紀伊、尾張の建造を始めていた。
結果だけで言うと戦艦加賀、土佐、紀伊、尾張が認められず、天城、赤城も同じく。
だか、海上自衛軍戦艦越前、越中、越後が認められた。
そして日本は欧米の戦艦大量建造を認める代わりに日本の空母保有排水量を大幅に妥協してもらい、加賀、土佐、天城、赤城を空母に改造。蒼龍、飛龍を建造。紀伊、尾張は標的艦となり史実の土佐の代わりにとなった。
空母の運用データを集めて自衛軍は隼鷹型空母を建造。
アングルドデッキや蒸気カタパルトを取り付けた。
海軍も翔鶴型からアングルドデッキと蒸気カタパルトを取り付けた。
日本の軍備は強化され、日清、日露、第一次大戦で手に入れた土地により史実より経済発展していたが世界恐慌により不況に陥っていた。
さらに共産党の勢力圏が広がり中国全土にまで広がろうとしていた。
こんな中、満州事変が起こり世界から孤立への第一歩となってしまった。
政府は直ちに軍の撤退を命令したが、国民党軍がこれを宣戦布告と見なして攻撃してきた。これにより日中戦争が始まってしまった。海軍と自衛軍は陸軍の横暴として参戦を拒否。陸軍の独断としたが世界から経済制裁を受けることとなる。
石炭から作る人工石油技術によりまだ石油枯渇にまでならないがこのままでは史実と同様になってしまう。
頼みの綱のオランダとの交渉は米国の干渉で途絶え、もはや開戦しかないと軍部のみならず世論も開戦ムードになってしまっている。外務省は開戦を回避すべく米国との和平交渉を進めることになったが、ハルノートを突きつけられて開戦しかなくなってしまった。その証拠がニイタカヤマノボレ1208の暗号電文だ。
今現在、開戦のため北太平洋を行くのは帝国海軍の天城、赤城、加賀、土佐、蒼龍、飛龍の空母六隻の第一航空艦隊と海上自衛軍の隼鷹、飛鷹の正規空母二隻と護衛の戦艦改造空母扶桑、山城を含む第一機動部隊が奇襲作戦に向かっていた。俺もこの奇襲作戦に参加するため乗り込んでいる。
「特務参謀、やはり開戦しかなくなってしまったな」
小沢長官が悔しいのか暗号文が書かれた紙を握りながら言う。
「まだ諦めないでください長官。和哉が最後まで交渉を続けてくれています。攻撃開始時刻までに中止が下されるかもしれません」
交渉は決裂したが、まだ決まった訳ではない。
戦争回避のため俺の弟である和哉が交渉をしてくれている。
まだ諦めるべきではない。
次回は米政府と交渉する和哉の話にする予定です。