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「前世の記憶」  作者: 泉 恋華
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「お使い」

泉先生がお座敷に来てくれ、次会うのはいつなのだろう明日にでもまたお会いしたい。そう願いながら夜は眠りにつきました。


 そんな願いを神様が叶えてくださったのでしょうか、彼と再会したのはあの日の翌日。銀座でお姐さん方に頼まれていた買い物をしていた時でした。



「えぇと、これで全部かな。」帰ろうとして店をでて歩き出した時、前方から肩をがくりと落とし見るからに悩んだ様子の泉先生があるいて来ました。どうやら私には気づいていないようでため息をしながら私の横を通り過ぎていきました。もちろん私があんな様子の彼をほおっておけるはずはなくて、


「泉先生どうなさいましたか?」と彼の横を歩きながら言いました。

「あぁ、あんたか、、、。!?」彼は急にいつもの感じを戻し

「あ、あんた!なんだよ急に僕に何の用?」まったく、驚かせやがってといった雰囲気で私はひとまずいつもどおりになった泉先生を見て安堵しました。


「泉先生があまりにも悩まれているように見えたので私にできることはないかなとおもいまして、」と語尾の方はごにょごにょと声が小さくなってちじこまってるのをみた彼は大きなため息をしてから話はじめられました

「あんたに心配されるなんてね、まぁいいんだけどさ。」


 そして泉先生の話を聞いた私の第一声は

「はい?」と少し呆れたものでした。そうなるのもしかたがないのです。

泉先生の話というのは・・・



「泉君。ちょっと石橋忍月先生のところにこの手紙を渡しに行ってくれないか?」そう恩師である尾崎紅葉先生に使いを頼まれた彼は使命感を感じ確実に石橋先生に手紙を渡し粗相のないよう細心の注意をはらいながら行ったそうです。すると石橋先生は使いにきた彼に柿を渡したそうです。

その柿があまりにも美味しそうだったので食べてしまったそうです。尾崎先生宛ての柿とは知らずに、。

 そしてそのことをひどく恐縮して尾崎先生に告げると

「大福餅を買って来い」と言われ焦って飛び出してきたわいいが大福餅がどこに売っているのかわからず、悩んでいた



 というときに私に声をかけられたということでした。

私の知っている泉先生からは全く想像がつかない失敗ですこし呆れてしまったのです。ですがこの悩みは大福餅が買えれば問題ないということでしたので

「泉先生、大福餅ならそこの角を曲がったところに屋台で売ってましたよ」

そう助言すると聞いた瞬間に彼は飛び出しました。小説家とは思えないほどの速さで、

 私はちゃんと泉先生が屋台を見つけられたか心配だったのでゆっくり歩いて向かいました。私が屋台についたときには彼は満足そうに紙袋を持っていました。彼は私の方に歩み寄り

「ありがとう!あんたのおかげで大福餅買えたよ。」

そう満面の笑みでいわれるとこちらも笑顔になりました。

「いえいえ、大福餅あってよかったですね!」

「また今度会ったらお礼するね!!」そういって彼は足取り軽く走っていきました。お礼なんていいのに、彼の笑顔こそが最大のお礼だ、とも思いつつ置屋へ帰りました。


 はじめて見た彼の笑顔はとてもまぶしく、その表情は頭の中から離れませんでした。この思いはいままで泉先生に感じてきた尊敬などという気持ちとは違いました。ですがこれがなんという気持ちなのか、それに気づくのはまだ先の話で、




 その夜の尾崎宅では、、、。

「尾崎先生!頼まれていた大福餅を買ってきました!!!」

一時はどうなるかと思ったお使いも出来たので満足に尾崎先生に大福餅を差し出しました。すると尾崎先生は顔を歪めたかと思うとすぐにかっかっかと笑い出しました。それをなんで笑われているのかわからないといった表情をしている泉に

「これは銀座にある露店の大福餅じゃないかぁ僕が頼んだのは近くの菓子屋に売っている大福餅なのだったのだがな!!」

それをきき泉は恥ずかしくなり手で顔を隠し赤面してしまったそうだ

それもそのはずで、近くの菓子屋に大福餅が売っているのを知らなかったことにも、遠くにある露店の安物の満足そうに恩師に渡したことも

真面目な泉にとっては大きな黒歴史となってしまいました。




今回は泉 鏡花の失敗談をもとに書きました。私のイメージする泉 鏡花は真面目な人だったのでこの失敗談を知ってとても面白く感じました。その話に恋愛的な要素であるすずとの絡みがあるといいなと思いこんな話になりました。今回は実話多めで書いてみました。

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