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「前世の記憶」  作者: 泉 恋華
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「会いにきてくれた」

最後に泉先生と会った日からもう一月が過ぎようとしていました。私はいつものように料亭へでむきお座敷の準備をしていました。もちろん泉先生に貰った簪をつけて


忙しく働いているとお姐さんがこちらへきて

「桃太郎、ご指名だよ。」そう言われたので指名されたお座敷へ向かいました。私を指名してくださるなんてとても珍しいので、どんな方なのだろうと胸をたかならせて行き、お座敷のふすまを開け

「桃太郎でございます。よろしくお願いいたします。」

そして頭を上げるとそこにいたのは

「はやくこっちに来て僕にお酌しなよね。」


泉先生でした。


言われるがままにそばへ行き座ると彼は御猪口を差出してきました。私は慎重に泉燗をお酌すると、彼はぐいっとすぐに飲んでしまい、耳が痛くなるほどの沈黙が続きました。何か話さなくては、でも何を話せばいいのか、と一人焦っている時沈黙は彼によって破られました。

「あんた、僕のあげた簪つけてくれてるんだね。」

私はその言葉で言うべきことを思い出し、慌てて口を開きました

「あ、はい!この簪とても可愛くて、あ、ありがとうございました!」

慌てすぎて言葉がもつれてしまうと

「何焦ってんのさ、」と余裕そうに話す彼を見て私だけ慌てていて恥ずかしくなって赤面してしまいました。その様子を見ていた彼にもうつってしまったのでしょうか。彼も少し頬を赤く染めて

「ま、まぁ似合ってると思うよ!僕が選んだんだから当たり前だけどね、あと僕があんたを指名したのは別にあんたを気に入ったとかじゃなくて名前を知っていたのがあんたしかいなかったから、仕方なくだからね!!」と弾丸のように次々と言葉がとんできました。きっと簪が似合っているということ、私のことを気に入ってくださっているということを伝えたかったのでしょう。彼は文才にあふれているのにそれを言葉として口に出すとなかなか素直になれない、そんな感じがありました。



 泉先生との会話はとても楽しく、いつもは長く感じるお座敷もその日はあっという間に過ぎてしまいました。

「じゃあまた来るよ。」

その言葉がひどく寂しく感じられました。次会えるのはいつなのだろう、そんなことを考えている時、ふと彼の行動に目がつきました。

「あの~、その御箸の袋はこちらで処分しますよ?」

なぜか御箸の袋を大切そうに懐へいれる彼に思わず声をかけてしまいました。

「はぁ?なんで処分するのさ」彼は意味が解らないといった表情で私を見てきました。

「あんたこの字が読めないの?」と畳に指で御箸と書き私に教えてきました。もちろん漢字は読めるのですが、私が分らないのはそれを大切そうに持ち帰ろうとする彼の行動であって、字が読めないのではないのです。

「漢字は読めるのですが、」と申し訳なさそうに言うと、彼は畳に書いた御箸という字を丁寧に手で消し私の方を見て

「じゃあなに?」と苛立ちまじりに問いかけてきました。

「なぜ御箸の袋を大切そうに持ち帰りなさるのですか?」

「この袋には 御箸 とかいてあるんだよ?文字を大切にしないといけないだろ!?」少し意味が解らなかったけれど、きっと小説家ならでわなのだろうと思うと納得しました。



 この日のお座敷で私は泉 鏡花という人物をたくさん知ることができました。なによりこうして私に会いに来てくださったこと嬉しくて、次はいつ会えるのだろうと楽しみにして夜も眠れない日が続きました。

この話では泉 鏡花の文字を大切にするという事実をいれてみました。私は畳に空で書いた字を必ず手で消したり、御箸袋さえも粗末にしないという事実を知りとても印象が残りました。

次話少しおもしろい実話を使って話を書きたいと思っています。

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