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「前世の記憶」  作者: 泉 恋華
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「赤い簪」

次の日のお昼頃、私はお座敷のある夜までに神楽坂で買い物をしていました。まだ若い私の花代はそれほど高いものではありませんでしたが、お金に困るほどのものではありませんでした。そして行きつけの兎の小物屋さんで品定めをしていまして、どれも可愛くて迷っていると、

「あんたも兎が好きなの?」そう言われて後ろを振り向くとそこにいたのは泉先生でした。こんな可愛らしい女性向けな店に何の用があるのだろうと不思議に思いました。

「何?男の僕が兎の小物を見てるのがおかしいって言いたいの?」

見透かされた。泉先生の前ではどんな嘘も見抜かれてしまうのです。あっけにとられている私をほっといて泉先生は話を続けていきました。

「僕が兎を好きなのは可愛いでけでなく向かい干支だから大切にしないといけないからだよ!決して可愛いだけじゃないんだからね!!」

そう焦った様子で力説するところを見ているときっと可愛いからという理由も大きいのでしょう。

「私も兎が好きですよ。」そう言うと彼は嬉しそうな顔をしました。

「あ、あの。昨日は粗相をしてしまい、申し訳ありませんでした。それでは今夜もお座敷があるので失礼します。」

と、昨日の事をお詫びして置屋に帰ろうとすると、

「ちょっと!あんた。待ちなよ」と着物の袖を引っ張られました。

「あの時あんたにもかかったでしょ、悪かったと思ってる。」

あんなに気の強い方が悲しそうにするのを見て私は少し罪悪感を感じました。そんな私の気持ちを察してくださったのでしょうか。

 彼はまたいつものように戻って

「こんなところであったのも何かの縁だと思うんだ。昨日のお詫びといって、何かあんたに兎の小物を買ってあげるよ!!」

そう言ってなんでもいいからといったように私に背を向けてしまいました。


 なんでもと言われても出会って間もない人に堂々とねだることなんて私には出来なくて迷っていると

「あんたはやくしなよ。それとも自分で決められないの?」と苛立った様子で私に問いかけてこられました。

「は、はい」図星でした。

彼は私の顔をまじまじと見つめると一本の簪を手に取り買ってきて私に手渡してくれました。

「これ、僕があんたのために選んだんだ。きっと似合うはずだよ」

それだけ言って彼は帰っていきました。

「ありがとうございました」そう叫ぶと彼は走って行ってしまいました。貰った簪は赤色で可愛らしい兎がついていて私のこのみでした。私は泉 鏡花という人物に興味がわき、近くの貸本屋で泉 鏡花について調べました。


 私は恥ずかしくなりました。こんなにも素晴らしい作品を世に出してきた方なのに、私はなんて世間知らずだったのだろうと思いました。次お会いする機会があったらこの簪のお礼をちゃんと伝えよう、そう決心しました。

今回は泉 鏡花が兎好きであることを使って話を書きました。理由は向かい干支だからなのですが、私はとても可愛らしい趣味だなと思いました。兎のマフラーも持っていた。という話はまたお話を書きたいと思っています。

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